AI投資への懸念がBTC相場を圧迫 ハイテク株の売り一巡が反発の鍵か【bitbank月次レポート】

10月のビットコイン(BTC)対ドル相場は、月初に87,000ドル台まで上昇するも、その後は上値を重くし、月末にかけて下値を探る展開となった。7日から8日にかけては81,000ドル台まで下落し、その後も80,000ドル台前半を中心に方向感を欠く推移が続いた。21日には84,000ドル台を回復したが、翌22日には再び81,000ドル台まで反落。28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を通過しても相場は上値を伸ばせず、29日には米ハイテク株の下落とともに売りが加速し、78,000ドル近辺まで下落した。

AI投資の収益性に対する懸念がBTC相場にも波及

足元のBTC相場の下落要因として注目されるのは、米国のAI関連投資の持続可能性を巡る懸念であると言えよう。

29日の米株式市場では、アルファベットの株価が前日比12.6%下落し、ナスダック総合指数も1.4%安となった。同社はAI関連インフラへの巨額の設備投資を続けているが、足元では投資負担の増加に対して収益の拡大が追い付くのかという疑念が強まっている。

さらに、29日の米株式市場引け後に発表されたアマゾンの決算でも、AI関連投資の負担が浮き彫りとなった。同社の直近12カ月のフリーキャッシュフローは前年の148億ドルの黒字から424億ドルの赤字へと悪化したほか、2026年の設備投資額は約2,200億ドルに達する見通しが示された。クラウド事業のAWSは堅調な成長を維持したものの、巨額の投資負担や業績見通しが嫌気され、同社株は時間外取引で約7%下落した。

これまでAI関連投資は米ハイテク株の上昇を支える主要な材料となってきたが、投資規模の拡大そのものが好感される局面から、投資に見合う収益を確保できるかが問われる局面へと、市場の評価軸が変化しつつあると言えよう。

こうした懸念は29日に突如浮上したものではない。22日にもAI関連株を中心に売りが強まり、ナスダックは2.6%下落した。BTCも同日に84,000ドル台から81,000ドル台へと反落しており、米ハイテク株の調整が暗号資産市場にも波及する構図が鮮明となっている。

尤も、29日の米国市場では小型株のラッセル2000指数が上昇し、米国債利回りも低下した。したがって、金融市場全体で一様にリスク回避が強まっているというよりも、AI関連銘柄に集中していた資金やポジションの巻き戻しが進んでいると捉える方が適切だろう。また、主要ハイテク企業の決算発表が一巡すれば、目先の売り圧力が後退する可能性も残されている。

問題は、こうした動きが一時的な利益確定にとどまるか、それともAI投資への期待を背景とした米株式市場の上昇基調そのものを揺るがすかという点にある。後者となれば、投資家のリスク許容度が低下する中、BTCも一段の下押し圧力に晒される可能性がある。

デリバティブ市場のポジション解消とETF需給

また、BTCの下落幅が拡大している背景には、暗号資産デリバティブ市場におけるポジション解消の影響もあるとみられる。

29日には暗号資産市場全体で24時間当たり約3.4億ドルの強制清算が発生したほか、BTC先物の建玉残高も減少した。米株安を受けてBTCが売られる中、レバレッジを掛けた買いポジションの解消が相場の下落を増幅した可能性があるだろう。

一方、米国の現物ビットコインETFには、26日から28日までの3営業日で合計約4.2億ドルの純流入が見られた。22日には約6.4億ドルの大幅な純流出を記録しており、ETF需給は不安定ながらも、押し目買いの需要が完全に失われたわけではないことがうかがえる。

ただし、ETFへの資金流入が続く中でもBTCが下落している点には注意が必要だ。機関投資家による現物需要が相場を支える一方、デリバティブ市場のポジション調整やリスク資産全般への売り圧力がこれを上回っている可能性がある。目先はETFへの資金流入が継続するかに加え、先物建玉の減少を通じて投機的な買いポジションの整理がどこまで進むかが、相場の下値を見極める上で重要となろう。

グラフ: ETFネットフローの日次バブルを青色の上昇、赤色の下落で表示。左軸は金額、右軸はBTC/USD、 grayラインは総合値の推移。期間は2026-07から2026-11。
〈BTC対ドルと現物ビットコインETFネットフロー 日次 出所:Glassnodeより作成〉

金融政策は織り込み済み、焦点はリスク資産への影響

他方、米金融政策については、市場が既に織り込んでいる政策見通しと、今後新たに生じ得る変化を区別する必要がある。

FRBは28日のFOMCで政策金利を3.75〜4.00%に据え置いた。声明ではインフレの高止まりが指摘され、2名の委員が25bpの利上げを支持したものの、会合前から10月の据え置きと12月の利上げは相応に織り込まれていた。FOMC通過後も政策見通しに大きな変化は見られず、会合の結果自体がBTCの下落を主導したとは考えにくい。

むしろ今後の焦点は、金融引き締めが続く環境下で、米ハイテク企業の設備投資負担や市場のリスク許容度にどのような変化が生じるかという点にあろう。物価指標が上振れれば追加利上げ観測が一段と強まる可能性がある一方、景気指標の悪化によって米長期金利が低下したとしても、それが企業収益への懸念を伴うものであれば、必ずしもBTCの買い材料とはならない。

今後の見通し

目先のBTC相場は、AI関連株の調整が一巡するかどうかを軸に、ETF需給と米金融政策見通しの変化を睨みながら、神経質な値動きが続くと予想する。

メインシナリオでは、主要ハイテク企業の決算発表が一巡することでAI関連株への売り圧力が徐々に後退する一方、ETF経由の現物需要やデリバティブ市場のポジション整理が下値を支え、75,000〜85,000ドルを中心とした推移を想定する。まずは80,000ドルの大台を回復し、同水準を維持できるかが焦点となろう。

一方、AI関連投資の収益性を巡る懸念が払拭されず、米ハイテク株の調整が長期化する場合には、BTCも下値を模索する展開が続く可能性がある。特に、インフレ指標の上振れなどを背景にFRBの追加利上げ観測が強まり、金融政策面でのリスクも高まれば、75,000ドルを割り込み、70,000ドル台前半まで下値を広げる展開も視野に入ろう。

総じて、足元のBTC相場は、金融政策の先行きそのものよりも、米株式市場を支えてきたAI投資への期待がどこまで維持されるかに左右されやすい局面にあると言えよう。尤も、ハイテク株の調整が市場全体に波及していないことや、決算シーズンの通過によって売りが一巡する可能性を踏まえれば、現時点で過度に弱気になる必要もないだろう。ETFを通じた現物需要が維持されれば、米ハイテク株の落ち着きとともにBTCも反発の足掛かりを得る可能性がある。

|文:長谷川友哉/bitbankマーケット・アナリスト
|編集:NADA NEWS編集部
|トップ画像:Shutterstock

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