東証スタンダード上場のメタプラネットが10月5日、ビットコイン(BTC)の保有量が4万4000BTCに達したと発表しました。
発表時点の価格で約6000億円分(1BTC=約1355万円、NADAビットコイン指数参照)。
上場企業では、米Strategy(ストラテジー)に次いで世界で2番目に多い量です。
数年前までホテル事業を専業にしていた会社が、なぜここまでビットコインを買い集めたのか。
同社がビットコインを買い始めた2024年から動向を追ってきた筆者が、メタプラネットとはどんな会社なのかを解説します。
◆ホテル専業からビットコインへ
前身は、ホテル事業を専業としていたレッド・プラネット・ジャパンです。
新型コロナの影響で宿泊客が減り、グループで運営していたホテルは順次閉鎖されました。
2022年3月に社長に就いたのが、米ゴールドマン・サックス出身のサイモン・ゲロヴィッチ氏です。翌2023年2月、社名をメタプラネットに改めました。
手元に残ったホテルは、東京・五反田の1棟だけ。2024年1〜9月期の売上高2億5000万円は、すべてこのホテルが稼いだものでした。
このホテルは「Bitcoin Hotel」として再開発する計画が進行中です。
▶NADA NEWSによるゲロヴィッチ社長インタビュー(2025年1月):メタプラネット、2025年にビットコイン保有10,000枚超を目指す──元ゴールドマン・トレーダーが経営指揮する日本企業の正体
◆決算短信に「ビットコイン」の文字はなかった
同社の2023年の決算短信(決算の要点をまとめた資料)には、「ビットコイン」という言葉が一度も出てきません。
それが2024年4月、ビットコインの購入を発表します。翌5月には、会社の資産を円ではなく、主にビットコインで持つ方針を打ち出しました。
同社が理由に挙げたのは、日本政府の借金の多さ、物価の上昇に金利が追いつかない状態が長く続いていること、そして円安でした。
円のまま持っていては、会社のお金の価値が目減りしていく。それなら借入れや株の発行でお金を集め、ビットコインに替えていこうという考え方です。
保有量は2024年末に1762BTCまで増えました。
2025年の年明けにゲロヴィッチ氏が掲げた目標は「世界トップ10入り」で、当時の順位は20位。それが今は世界2位です。
国内で2番目に多いネクソンの保有量は1717BTCなので、その25倍以上を持っていることになります。
◆お手本は米ストラテジー、違いは資金の集め方
お手本になったのは、2020年にビットコインを買い始めた米ストラテジーです。
2026年10月時点の保有量は約84万8000BTC。投資家からお金を集め、そのお金でビットコインを買い続ける。このやり方は「ビットコイン・トレジャリー(財務)戦略」と呼ばれています。
両社の違いは、お金の集め方にあります。
ストラテジーは普通の株に加えて、「優先株」でもお金を集めてきました。
普通の株より先に配当を受け取れる株で、米国の株式市場に複数の種類を上場させ、利回りを求める投資家に買ってもらっています。
メタプラネットも優先株を発行していますが、まだ上場はしていません。
メタプラネット証券の小村CEOによると、日本の株式市場ではそもそも、優先株を上場させる企業がほとんどありません。
日本では社債(会社が発行する借用証書のようなもの)を出すほうが取り組みやすい、というのが同氏の見方です。
メタプラネットは2026年6月に証券会社を買収しました。8月からは、自社が発行した社債を、グループの証券会社が投資家に販売しています。
◆経営の物差しは「1株あたりBTC」
株を新しく発行すると、株の数が増える分、既存の株主が持つ1株の価値は薄まります。これを「希薄化」と呼びます。
それでもメタプラネットが株を発行してきたのには理由があります。
株の数が増えても、それ以上にビットコインが増えれば、1株あたりのビットコインは増える。同社はそう考えています。
この1株あたりのビットコインの伸びを示すのが、同社が2024年10月から経営の指標にしている「BTCイールド」です。

名前に「イールド(利回り)」と付いていますが、預金の利息のように株主がお金を受け取れるわけではありません。
この計算に使う株の数には、役員や社員があらかじめ決めた価格で株を買える権利(ストック・オプション)の分も含まれます。
同社は2026年9月、この権利の対象になる株の数を41%減らしました。
◆資金調達を左右する「mNAV」
株を発行してビットコインを買い増すやり方が、うまく回っているのか。
それを見るときによく使われるのが「mNAV(Multiple of Net Asset Value)」という数字です。
会社全体の値段(株式の時価総額に借入金などを足し、手元の現金を引いたもの)が、持っているビットコインの価値の何倍にあたるかを表します。
mNAV = (株式時価総額+総負債) ÷ ビットコイン保有評価額
1倍を超えていれば、市場が会社を保有ビットコイン以上に評価している「プレミアム」の状態。1倍を下回れば、その逆の「ディスカウント」です。
2026年は、mNAVが1倍を下回る時期が長く続いています。

同社は4〜6月期、特定の投資家に新しい株を引き受けてもらう形での資金調達を見送っています。
その後は、普通の株を増やさない方法でお金を集めるようになりました。
社債「BitBonds(ビットボンズ)」や優先株の発行、ビットコインを担保にした借入れがその例です。
◆営業黒字でも最終赤字になる理由
本業の稼ぎ頭は「ビットコイン・インカム事業」です。
ビットコインを将来決まった価格で売り買いする権利を売り、その対価を受け取る「オプション取引」で収益を上げています。
もっとも、この事業の売上高は2026年7〜9月期まで3四半期続けて減少しています。
決算を読むときに押さえておきたいのが、持っているビットコインの扱いです。
決算のたびに、その時点の価格で評価し直します。値下がりしていれば、売っていなくても損失として計上されます。
2026年1〜6月期は、営業利益が33億3100万円の黒字でした。ところが、ビットコインの評価損が1842億9700万円にのぼり、最終的な損益は赤字になりました。
本業が黒字でも、ビットコインの値動きしだいで最終損益は大きく振れるわけです。
◆株で持つか、ビットコインで持つか
2025年には、メタプラネット株は東証でも指折りの、売買が活発な銘柄になりました。
ロイターは同年7月、東証の公表データをもとに、6月の売買代金が1兆8695億円に上ったと報じています。
単純比較では、プライム市場のトヨタ自動車(1兆6445億円)やソニーグループ(1兆3153億円)を上回る規模でした。
スタンダード市場では、2024年11月から8カ月続けて売買代金の1位だったと伝えています。
日本ではまだ、ビットコインに投資するETF(上場投資信託)を作ることが認められていません。
その中で、証券口座で売買でき、株価がビットコインの値動きに大きく左右されるのがメタプラネット株です。
では、ビットコインを直接買うのと、メタプラネット株を買うのとでは何が違うのか。大きいのは税金です。
いまの制度では、ビットコインを売って儲けた分は「雑所得」として給与などと合算され、税率は住民税と合わせて最大55%になります。
株の売却益にかかる税率は約20%で一定です。NISA(少額投資非課税制度)の成長投資枠で買えば、上限の範囲内で税金はかかりません。
ただ、この差は縮まっていく見込みです。
法律の改正で、2028年1月以降の取引からは、暗号資産にも株と同じ約20%の税率が適用される見込みです。
|文:栃山直樹
|画像:Adobe Stock


