米国の中間選挙後、ビットコイン(BTC)が急反発している。11月4日、BTCは一時75,600ドル付近まで下落した後、80,000ドルを突破。一部の市場報道では81,100ドル超まで上昇した。
注目されるのは、今回の急騰が大規模なショートスクイーズを伴っている点だ。暗号資産市場全体でわずか1時間に約3億7,809万ドル(約378億円ではなく、1ドル155円換算で約586億円)のショートポジションが強制清算された。
一方、米国のビットコイン現物ETFでは資金流出が続いており、現物市場の需要回復が十分に確認されたわけではない。今回の上昇は本格的な強気相場への転換なのか。それとも、選挙後の買い戻しによる一時的な反発なのか。
75,600ドルから8万ドル超へ、ショートスクイーズが発生
11月3日の米中間選挙では民主党が上下両院で多数派を獲得。トランプ政権と議会の「ねじれ」が生じる見通しとなった。
選挙結果を受けて、暗号資産規制緩和の停滞を懸念した売りが先行。BTCは一時75,618ドルまで下落した。
しかし、その後は急速に買い戻しが進み、78,000ドル台を回復。さらに日本時間11月5日未明には80,000ドルを突破した。
今回の上昇を加速させたのが、ショートスクイーズである。
ショートスクイーズとは、価格下落を予想して売りポジションを保有していた投資家が、予想に反して価格が上昇することで買い戻しを迫られ、その買いがさらなる価格上昇につながる現象だ。暗号資産市場全体で1時間に約4億6,633万ドルのポジションが清算され、その約81%をショートが占めた。
こうした清算の集中は、今回の上昇においてデリバティブ市場の影響が大きかったことを示している。
なぜ民主党勝利でビットコインが上昇したのか
今回の反発には、大きく3つの背景が考えられる。
第一に、政治的不透明感の後退だ。民主党の勝利は事前にある程度予想されていたものの、結果が確定したことで投資家の警戒感が和らいだ可能性がある。
第二に、米国株式市場の回復である。ロイター通信は、ビットコインが選挙後の株式市場の反発に追随したと報じている。市場全体のリスク許容度が改善したことが、BTCにもプラスに作用したとみられる。
第三に、過度な弱気ポジションの解消だ。
10月下旬の大規模ハッキング事件やETFからの資金流出、金融政策への警戒から、暗号資産市場では売り圧力が強まっていた。そのため、選挙結果の確定をきっかけとした買い戻しが、ショートポジションの清算を巻き込み、大きな反発につながったと考えられる。
ETF資金流出は継続、本格回復には課題
価格が8万ドルを回復した一方で、現物市場の需要には依然として弱さが残る。米国のビットコイン現物ETFでは、11月2日に約3億9,860万ドル、3日にも約1億1,560万ドルの純流出が発生した。
オンチェーン分析では、相場の過熱感が大きく後退していることが示されている。
例えば、CryptoQuantの「True Market Mean Price + AVIV Ratio」チャートを見ると、BTC価格はTrue Market Mean付近まで低下しており、過度な加熱が一巡したことがうかがえる。

一方、短期保有者のうち含み益を抱える割合が約38%に低下したとされ、市場参加者の慎重姿勢が続いていることが言われている。また、重要なオンチェーン価格帯として、77,700ドル付近のTrue Market Mean、75,700ドル付近の短期保有者の平均取得価格を挙げている。今回の反発は、こうした価格帯から始まった。
ただし、ショートの強制清算による上昇と、現物需要の継続的な拡大は区別して考える必要がある。
暗号資産規制、AI、イラン情勢にも新たなリスク
中長期的には米国の政策動向も重要になる。
ブロックチェーンセキュリティ企業CertiKの米政府渉外責任者Stefan Muehlbauer氏は、民主党による議会支配を受け、暗号資産市場構造法案「CLARITY Act」の現行案での成立は難しくなったとの見方を示した。
一方、米国ではAIデータセンターへの規制強化も注目されている。電力消費や環境負荷への懸念から建設制限が広がれば、AI関連株の調整がBTCに波及する可能性がある。
さらに、米国とイランの軍事的緊張が再び強まれば、原油価格の上昇やインフレ懸念を通じて金融市場に影響を与えかねない。
選挙後の安心感だけではなく、こうした新たなリスクにも注意が必要だ。
荒澤の見解|8万ドル突破は重要、次は現物需要の回復が焦点
筆者は、今回の8万ドル突破を短期的には前向きな変化と評価している。
特に、75,600ドル付近で下落が止まり、大規模なショート清算を伴って急反発したことは、市場に蓄積していた弱気ポジションが急速に解消されたことを示している。
ただし、ショートスクイーズによる上昇は、清算が一巡すると勢いを失う場合がある。
今後、最も注視したいのは次の3点である。
1. 80,000ドル台を維持し、82,000ドルを明確に突破できるか。
2. 米国現物ETFの資金フローが純流入へ転じるか。
3. 現物取引量やオンチェーン需要が実際に回復するか。
強気シナリオでは、ETF資金の流入回復を伴って82,000ドルを突破し、84,000〜85,500ドルの上値抵抗帯を試す展開が考えられる。
一方、ショートスクイーズが一巡し、現物需要が回復しなければ、再び80,000ドルを下回り、77,700ドル付近を試す可能性もある。
さらに75,700ドル付近を明確に割り込む場合には、下落リスクが再び高まると考える。
今回の急反発は、米中間選挙による政治的不透明感の後退と、デリバティブ市場のポジション調整が重なった結果とみている。
ただし、価格上昇の持続性を決めるのは、最終的には新しい資金がどれだけ流入するかである。
8万ドルの回復は重要な第一歩となった。しかし、本格的な強気相場への転換を判断するには、ETFとオンチェーンデータによる裏付けが必要だ。
筆者は、引き続き現物需要、機関投資家の資金フロー、デリバティブ市場の動向を分析していく。
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