北朝鮮系グループは面接官にも応募者にもなりすます──チェイナリシスがバイナンス流出を分析

暗号資産(仮想通貨)分析企業のChainalysis(チェイナリシス)は11月3日、取引所Binance(バイナンス)で起きた約1兆円規模の資金流出について、北朝鮮系グループが採用活動を悪用して仕掛けた一連の攻撃の一つと位置づけた。

バイナンスの初期調査によると、9月に同社のエンジニアが求人サイトで転職の誘いを受けた。エンジニアは架空の会社との2回目の面接の終盤に、業務用端末へプログラミング課題をダウンロードするよう指示された。課題に仕込まれた不正なコードが、攻撃者の侵入の足がかりになったという。

この攻撃で、バイナンスから約1兆円相当の暗号資産が流出した。米連邦捜査局(FBI)は10月31日、北朝鮮系グループによる犯行だと発表した。北朝鮮側は11月2日、事件への関与を否定する声明を出した。

チェイナリシスによると、偽の採用面接は、個人の暗号資産保有者を狙う攻撃にも使われていた。

過去18カ月に把握した偽面接などによる被害額は、1430万ドル(22億5940万円、1ドル=158円)を超えるという。同社は、北朝鮮系グループが攻撃を重ねて手口を磨き、より大きな標的を狙えるようになった可能性があるとみている。

一方、応募者を装う手口では、企業に採用されて給与を得ることが狙いだ。

チェイナリシスによると、北朝鮮のIT労働者は、盗んだ身元情報などを使って海外企業に就職していたという。採用されれば、社内の機密情報にアクセスできる場合もあるとしている。米財務省の外国資産管理局(OFAC)は10月28日、北朝鮮の偽装IT就労に関与した10人と1団体を制裁対象に指定した。

チェイナリシスは、偽装就労で得た報酬の行方も追跡した。ある事例では、複数のIT労働者が受け取った暗号資産が一つの会社に集められ、ロシアの仲介者を経由して取引所に送られた。

Flowchart showing funds moving from a victim company through DPRK IT workers to a front company, Russian facilitator, and finally to an exchange (illustrates illicit funds routing).
<偽装就労で得た報酬が、資金を集約する会社やロシアの仲介者を経て換金される経路の一例|Chainalysis>

別の事例では、同じ受取先に毎月初めごろ、ほぼ同額の入金があった。同社は、入金の時期と金額がそろっていることから、給与の支払いだった可能性があるとみている。

Transaction history list with dates and amounts (green rows highlighted) showing deposits and withdrawals.
<偽装就労の調査でチェイナリシスが確認した、給与とみられる定期入金。オレンジ枠が入金を示す|Chainalysis>

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|文:平木 昌宏
|画像:Adobe Stock

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