2026年9月15日、一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)で、税制部会のキックオフイベントが開催された。
税制部会長の八木橋泰仁税理士、税制副部会長の村上裕一税理士、副代表理事の岡部典孝氏が登壇し、筆者がファシリテーションを担当。暗号資産税制の現在地から、DeFi、ステーブルコイン、企業の実務上の課題まで、徹底的に議論した。
暗号資産の税制改正といえば、「20%分離課税」に関心が集まりやすい。しかし、税率だけでは、利用者や企業にとって何が変わるのかは見えてこない。対象となる取引、損失の扱い、決済や送金に伴う計算負担まで整理する必要がある。

今回の議論と登壇者用資料を踏まえ、改めて主要な論点を確認したい。
まず、分離課税は「すべての暗号資産取引が一律20%になる」という制度ではない。
財務省の令和8年度税制改正大綱では、金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等を「特定暗号資産」とし、暗号資産取引業を行う者に対して譲渡等をした場合に、所得税15%、個人住民税5%の分離課税を適用する枠組みが示されている。付加税を含めた負担は、一般に約20%と理解される。
つまり、銘柄に加えて、取引相手や経路も重要になる。国内登録業者を通じた対象取引と、海外取引所やDEX(分散型取引所)での取引を、同じ税務上の扱いと考えることはできない。
適用時期にも注意が必要だ。大綱では、改正金融商品取引法が施行される年の翌年1月1日以後の譲渡等から適用するとされている。仮に2027年に施行されれば、適用開始は2028年になる。多くが2028年開始を有力な見込みとしているが、施行日と適用開始日を混同してはいけない。
損失の扱いにも変化がある。対象となる現物取引では、一定の要件の下、控除しきれない損失を翌年以後3年間繰り越す枠組みが示されている。ただし、給与や株式の利益など、何とでも相殺できるわけではない。また、現物、デリバティブ、ETFの損益がすべて一つの枠で通算できると理解するのも早計だ。それぞれの課税区分と要件を確認する必要がある。
こうした改正は、価格変動の大きい暗号資産を保有する個人にとって、大きな前進となる。一方で、ブロックチェーン上の経済活動全体をカバーするものではない。
その代表が、ステーキングやレンディング、DeFiだ。
国税庁は、マイニング、ステーキング、レンディングによって取得した暗号資産について、取得時点の時価を収入に算入する考え方を示している。個人の所得は原則として雑所得となり、活動実態によっては事業所得等に区分される。
したがって、報酬を受け取った時点の所得と、その暗号資産を後日売却した際の損益は、分けて考える必要がある。売却時に分離課税の要件を満たす可能性があっても、報酬の受け取りまで自動的に分離課税になるわけではない。
DeFiでは、流動性提供、報酬の受け取り、トークン交換などが連続して発生する。取引の法的・経済的な性質を確認し、課税時点や取得価額を把握する負担が大きい。筆者がDeFi事業に関わる立場からも、税率とともに、利用者が履行できる計算・申告ルールの整備が必要だと考える。
ステーブルコインについては、さらに別の整理が求められる。
JPYCなど、資金決済法上の「電子決済手段」に該当するステーブルコインは、法律上、暗号資産とは区別される。金融庁の説明資料でも、暗号資産を金商法へ移管する枠組みと、資金決済法で扱うステーブルコインが分けて示されている。
また、電子決済手段の譲渡は消費税非課税とされている。しかし、これを「ステーブルコインに関する利益はすべて非課税」と読み替えることはできない。消費税と、所得税・法人税は別の問題だからだ。
円建てと外貨建ても分ける必要がある。円と価値が連動するJPYCと、ドルに連動するUSDCでは、円換算した際の為替差損益という論点が異なる。企業が安心して採用するには、保有、送金、交換、償還の各場面で、税務上の扱いを予測できることが重要になる。
そこで、当面考えていきたいことは、三つのテーマだ。
第一は、法定通貨担保型ステーブルコインの税務上の扱いの明確化である。円建ては円に、外貨建ては外国通貨に準じた扱いをどう整理するか。企業の経理処理や利用者の申告に、不確実性を残さないことが狙いとなる。
金融庁も令和9年度税制改正要望で、信託型ステーブルコインについて、受益者別調書や信託の計算書の提出を不要とするなどの措置を求めている。不特定多数の利用者間を頻繁に流通する決済手段としての性質を踏まえ、既存制度との調整を進めようとしている。
第二は、送金手数料である「ガス代」の損益計算の簡素化だ。
ステーブルコインを送金する際、ETHなどの暗号資産で手数料を支払うことがある。暗号資産の使用に伴う損益認識という考え方を当てはめれば、少額の手数料でも、使用時の時価と取得価額を把握する問題が生じる。
数円の手数料に対して、その何倍もの事務負担がかかるようでは、日常利用は広がりにくい。金額上限や年間上限などを設け、課税の公平性を確保しながら計算を簡素化する余地を検討したい。
第三は、暗号資産から一定の要件を満たす円建てステーブルコインへ交換する際の、課税繰延べや一定額の所得控除の検討である。
これは、現行制度で認められた措置ではなく、今後の提言案だ。特定商品への優遇にならないよう、中立的な要件が求められる。繰延べを採用する場合も、取得価額の引継ぎや、最終的な課税時点、報告の仕組みを明確にする必要がある。
法人にも課題は残る。個人向けの分離課税が、そのまま法人に適用されるわけではない。法人では、活発な市場が存在する暗号資産の期末時価評価が重要となる。一定の自己発行暗号資産や譲渡制限付き暗号資産には例外が設けられているが、適用要件や手続の確認が欠かせない。
今回、進行を担当しながら筆者が改めて感じたのは、税制改正を評価する視点を、投資家の売却益から、利用者と企業の実際の活動へ広げる必要があるということだ。
分離課税は重要な前進である。その先には、送金する、支払う、報酬を受け取る、事業で保有するといった場面で、誰もが税務上の扱いを理解し、無理なく対応できる制度が必要になる。
BCCC税制部会の活動では、こうした具体的な負担や疑問を整理し、政策提言につなげていくことが期待される。筆者もDeFi部会長として、利用者と事業者の実態を伝え、ブロックチェーンを安心して活用できる環境づくりに関わっていきたい。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務助言ではありません。改正制度の適用時期・対象・手続については、最新の法令や当局の公表資料をご確認ください
ショート動画
暗号資産「20%分離課税」で何が変わる?BCCCで徹底議論
https://youtube.com/shorts/dYCKGi4gsvc
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