トークン化預金を中核に、デジタル金融の発展を進める一般社団法人デジタル通貨イノベーション機構(DCIO、ディシオ)は9月25日、都内で記者会見を開き、10月1日から本格的な活動を始めると発表した。代表理事には元財務事務次官で弁護士の勝栄二郎氏、エグゼクティブアドバイザーには前日本銀行総裁の黒田東彦氏が就いた。2020年に発足した「デジタル通貨フォーラム」を発展的に改組し、今年7月に法人として設立した。
トークン化預金を中核に、金融機関や企業、自治体など幅広い主体が参加するデジタル通貨・決済インフラの整備や標準化、政策提言に取り組むとしている。銀行ごとにばらばらになりがちな仕組みに共通のルールを敷き、企業間の送金や決済での利用を広げる狙いがあるとした。
副代表理事には、前身のデジタル通貨フォーラム座長で、元日銀決済機構局長の山岡浩巳氏が就いた。
勝氏は設立の背景として3つの課題意識を挙げた。デジタル通貨が実証実験の段階を超えて社会実装フェーズに移行してきたこと、産業界と行政の認識をすり合わせる統合的な窓口が必要なこと、欧州を中心に民間銀行や中央銀行、産業界が連携する「コンソーシアム型」の標準化が進んでいることだ。また、自民党内でもプロジェクトチームが立ち上がり、「オンチェーン金融の推進」が高市政権の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に盛り込まれるなど、政策面での動きも加速しているとした。
山岡氏は、デジタル通貨フォーラムの座長を務めてきた立場から「今回の社団法人化は大変感慨深く、意義深い」と述べた。機構は当面、複数の銀行をまたいだ決済の実現を検討する「銀行部会」、プラットフォーム間の技術標準化を担う「技術部会」、商流・物流と決済を連動させるユースケースを開拓する「ユーザー部会」の3部会を設置して活動するとした。

専務理事は、事務局を務めるDCP執行役員の葉山揚介氏が務める。同社は7月、ディーカレットホールディングスが子会社のディーカレットDCPを吸収合併して商号を変更した会社で、トークン化預金のプラットフォーム「DCJPY」を展開している。
理事には、SBI新生銀行やGMOあおぞらネット銀行、三菱UFJ銀行といった大手金融機関の執行役員らが名を連ねる。
DCIOは①商流・行政・金融の協調領域における共通ガイド・標準化の策定②官民やプラットフォーム相互間の連携・相互運用の協調形成③グローバルな標準化への参画と日本代表としての役割の3点に取り組むとしている。
個人・企業・行政が幅広く利用でき、企業間など大口決済の円滑化と不正利用の防止を両立させる決済インフラの構築を目指す。今後、地方銀行や金融インフラを提供するIT系企業などからも理事メンバーを迎える方針を示した。
NADA NEWSは会見で、トークン化預金とステーブルコインの違いについて質問。山岡氏は、両者はいずれもブロックチェーンを活用する点で共通するとしつつ、デジタル通貨を使う上で重要となるマネーロンダリング対策や本人確認(KYC)は銀行にノウハウが蓄積されていると指摘。銀行が担う貸し出しや証券投資といった資金仲介機能を維持できることや企業間の大口決済でも上限なく対応できる点を挙げ、トークン化預金の利便性の高さを強調した。
DCJPYを巡っては、ゆうちょ銀行が2026年度中の発行予定を維持しているほか、北陸銀行が決済事業での商用化を進める予定など、地方銀行を含めて採用の動きが広がっている。デジタル通貨フォーラムには、2026年3月末で約130の企業・団体が参加していた。
本機構にはフォーラムからの継続参加も含め、現時点で40社以上が入会を決定、または検討を進めているという。
【次に読む】
» ゆうちょ、DCJPYの2026年度発行予定を維持──具体時期は示さず
» 日立ら9社、トークン化預金「DCJPY」で企業間取引を自動化する実証に成功
» ディーカレットDCPの「DCJPY」、全国ドラッグストアで利用検討へ──JACDSと連携開始
|取材・文:橋本祐樹
|トップ画像:デジタル通貨イノベーション機構代表理事の勝栄二郎氏(左)と副代表理事の山岡浩巳氏