ビットコイン市場で、8万ドルが重要な分岐点となっている。
10月のビットコインは、米国の長期金利上昇や原油高、金融政策を巡る不透明感などから、上値の重い展開が続いている。10月15日には一時8万ドルを下回る場面もあり、この価格帯が市場参加者に強く意識されていることがわかる。
しかし、エックスウィンが注目しているのは、8万ドルを割るかどうかという単純な価格の問題ではない。8万ドルを割った場合、さらに下落するのか。それとも、売り圧力が一巡し、反発に転じるのか。
その判断には、価格チャートだけでなく、オンチェーンデータから実際の資金の動きを確認する必要がある。
今回はCryptoQuantの最新分析をもとに、8万ドルを巡る3つのシナリオを考察する。
8万ドルは、単なる心理的節目ではない
CryptoQuantが10月13日に公表したレポートでは、ビットコインの365日移動平均線は約8万ドル、200日移動平均線は約7万1,000ドルに位置していた。365日移動平均線は、長期的な市場トレンドを判断するうえで重要な指標の一つである。つまり8万ドルは、単なる心理的な節目ではなく、市場が回復基調を維持できるかを判断するうえでも重要な価格帯だ。
一方、同レポートではCryptoQuantのBull Score Indexが9月26日に90まで上昇し、10月13日時点でも80と強気圏にあった。大口投資家の保有量増加やETF需要の回復が、その背景にある。
ここで重要なのは、短期的に8万ドルを割ることと、中長期的な強気構造が崩れることは同じではないという点である。
シナリオ① 8万ドル割れは一時的な調整となる

第一のシナリオは、8万ドルを一時的に下回ったとしても、現物の買い需要によって反発する展開である。
CryptoQuantのデータでは、取引所のビットコイン残高は10月初旬に約267万〜268万BTCと、歴史的に低い水準で推移していた。取引所残高の減少は、すぐに売却できるBTCが減っている可能性を示す。
さらに、CryptoQuantの10月14日付分析では、取引所やマイニングプールを除いたクジラのBTC保有量が、8月下旬の約294万BTCから約300万BTCへ増加していた。
これは、大口投資家が価格回復局面でBTCの保有量を増やしてきたことを示している。8万ドル割れに伴って先物のロングポジションが整理されても、こうした現物保有需要が維持されていれば、下落は一時的な調整にとどまる可能性がある。
この場合、8万ドルの回復とともに、8万3,000〜8万5,000ドル付近を再び試す展開が考えられる。
シナリオ② 7万7,000ドル台まで調整が広がる

第二のシナリオは、8万ドルを明確に割り込み、次の重要な価格帯を試す展開である。
ここで注目したいのが、CryptoQuantの新規クジラの平均取得価格だ。10月中旬の分析では、新規クジラのRealized Price(実現価格)は約7万7,000ドルとなっていた。これは、新しく大口保有者となった投資家の平均的な取得コストを推定する指標である。
ビットコインが8万ドルを割り、その後も現物需要が回復しない場合、この7万7,000ドル付近が次の重要な判断水準となる。なぜならば、新規クジラの平均取得価格を下回ると、この投資家層が全体として含み損に転じ、心理的な売り圧力が強まる可能性があるからだ。
ただし、平均取得価格は売却が集中する価格を確定的に示すものではない。むしろ大口保有者が買い増す水準になる可能性もある。重要なのは、その価格に到達したときに、クジラが取引所へBTCを送金するのか、それとも保有を続けるのかという行動だ。
シナリオ③ 8万ドルを維持しても、上昇は保証されない
第三のシナリオは、8万ドルを維持しながらも、しばらく方向感の乏しい展開が続くケースだ。
実は、この可能性も軽視できない。エックスウィンがCryptoQuantのデータを用いて行った直近の分析では、取引所残高は10月初旬の約267万BTCから約268万BTCへ小幅に増加していた。
また、30日ベースの現物需要は一時ゼロ付近まで回復したものの、再びマイナス方向へ転じている。
クジラの動きも一様ではない。
100〜1,000BTCを保有する層では蓄積傾向が続く一方、1,000〜1万BTC層では保有減少幅が縮小し、1万BTC超の層ではマイナス方向の変化が確認されている。
つまり、すべての大口投資家が一斉に買い増しているわけではない。市場の回復を確認するためには、保有量だけでなく、新たな現物需要が継続的に生まれているかを見る必要がある。

特にCryptoQuantのApparent Demand(推定需要)とCoinbase Premiumが重要だ。Apparent Demandがプラスへ転換し、米国投資家の現物需要を示すCoinbase Premiumも改善すれば、反発の持続性を判断する材料となる。
反対に、価格だけが上昇しても、現物需要が回復しなければ再び売りに押される可能性がある。
10月末は金融政策にも注意
オンチェーンデータとともに、10月末に向けた米国の金融政策にも注意したい。
10月27〜28日には米連邦公開市場委員会(FOMC)、29日には米国のGDP速報値とPCE関連統計の発表が予定されている。インフレ懸念が強まれば、米国長期金利やドルの上昇を通じて、ビットコインにも売り圧力が及ぶ可能性がある。
さらに、マクロ経済のショックと先物市場のレバレッジが重なると、短時間で下落が加速することもある。したがって、価格が8万ドルを割った際には、Open Interest(未決済建玉)とFunding Rate(資金調達率)の変化を同時に確認することが重要だ。
荒澤の視点──8万ドル割れよりも重要なのは「誰が買うか」
筆者は、10月相場について、上昇期待が高まる「アップトーバー」であっても、一定の価格調整が必要になる可能性を指摘してきた。実際に米国金利の上昇、原油高、ETF資金流入の鈍化などが、ビットコインの上値を抑えている。
しかし、CryptoQuantのオンチェーンデータを見る限り、売り一色の市場とも言い切れない。大口保有者による蓄積や低水準の取引所残高は、中長期的な支援材料として評価できる。
一方で、現物需要の回復は十分とは言えず、クジラの保有行動にもばらつきが見られる。
このため、エックスウィンでは、今後の展開を次のように考えている。8万ドルを割っても、現物需要が回復し、クジラの保有が維持されるなら、一時的な調整にとどまる可能性がある。
反対に、ETF資金流出、クジラから取引所への送金増加、現物需要の悪化が重なるなら、7万7,000ドル付近への調整を警戒する必要がある。
さらにその水準も維持できない場合は、長期移動平均線が位置していた7万1,000ドル付近まで視野を広げる必要が出てくる。ただし、移動平均線や実現価格は日々変動するため、固定的な下値目標ではない。
私が今、最も重視している問いは、「8万ドルを守れるか」ではない。
「8万ドルで、誰がビットコインを買うのか」である。
価格は結果であり、その背景にある資金の流れこそが市場の本質だ。
短期的な価格変動に一喜一憂するのではなく、CryptoQuantのオンチェーンデータを通じて、現物需要、機関投資家、クジラ、そしてレバレッジ市場の変化を冷静に見極めていきたい。
ショート動画
ビットコイン8万ドル割れで何が起きる?CryptoQuantが示す3つのシナリオ


