ビットコイン市場は今、上値を抑える要因と下値を支える要因がぶつかり合っている。長期金利の高止まりや米中間選挙を前にした不確実性が重荷となる一方、現物ETFを通じた資金流入が売りを吸収している。
ただし、上下の壁が同じ厚さとは限らない。オンチェーンデータから見えるのは、新たな資本が入る一方で、利益確定売りも増えている姿だ。現在の焦点は「好材料があるか」ではなく、「買いが売りをどこまで吸収できるか」にある。
上の壁の中心は、追加利上げより長期金利
上値を抑える最も直接的な要因は、米長期金利の高止まりだ。
CoinSharesの10月2日付レポートは、追加利上げへの期待が後退する一方、米10年債利回りが一時約5.3%まで上昇したと指摘した。政策金利の見通しが改善しても、財政への懸念や大量の国債発行などが長期金利を押し上げる構図が残っている。
金利を生まないビットコインにとって、国債の高い利回りは投資先としての競争相手になる。資金調達コストの上昇も、リスク資産への投資を慎重にさせる。「FRBが追加利上げを見送れば、ビットコインは上がる」と単純化できない理由だ。
中間選挙とAIブームは、買いをためらわせる要因
11月3日の米中間選挙も、投資家の判断を難しくする。議会構成によって政策の実現可能性が変わるため、結果を見極めるまで買い増しを控える動きが生じやすい。ただし、選挙そのものが必ず下落要因になるわけではなく、結果の確定が不確実性を減らす可能性もある。
AIブームも影響が一方向ではない。AI関連株への投資意欲は市場全体のリスク選好を支える一方、資金が一部の成長分野へ集中すれば、ビットコインへの配分と競合し得る。大型設備投資に伴う資金調達が金利に及ぼす影響にも目を向けたい。
もっとも、「ビットコインからAI株へ資金が流出している」と直接確認できたわけではない。注目すべきは、AIブーム自体の善し悪しではなく、資金配分と金利を通じた波及だ。地政学的緊張や原油高も、インフレ懸念を再燃させれば上値の重しになる。
オンチェーンが示す、利益確定売りの壁
暗号資産市場の内部にも、上昇を抑える要因がある。

CryptoQuantの「Realized Cap-UTXO Age Bands USD」を見ると、各BTCを最終移動時の価格で評価した総額は、2026年に入ってからの減少が直近では一服し、緩やかに持ち直している。価格の回復とともに、取得価格ベースで見た資本の蓄積にも改善の兆しがある。ただし、年齢帯ごとの増減には、コインが動かないまま時間が経過し、別の帯へ移る影響も含まれる。このグラフだけで、新規資金の大量流入や長期保有者の買い増しを断定することはできない。

一方、全取引所のFunding Ratesを見ると、直近はおおむね小幅なプラス圏で推移し、右端ではゼロ近辺まで低下している。価格が回復するなかでも、2024年の急騰局面に見られたような資金調達率の突出は確認できず、この指標からはロングの極端な過熱は読み取りにくい。過熱が限定的であることは相場の安定に寄与し得るが、現物主導の上昇や清算リスクの低さを保証するものではなく、建玉や現物の売買動向と併せて判断する必要がある。
下の壁を支えるETF。ただし、流入は減速
下値を支える中心は、米国の現物ビットコインETFだ。
Farside Investorsの日次データを集計すると、9月21〜25日の純流入は約23.86億ドルだった。一方、9月28日〜10月1日の4営業日は合計約5,120万ドルにとどまる。9月30日の約1.49億ドルの純流出後、10月1日は約1.03億ドルの純流入に戻った。
ETFを通じた買いは続いているが、勢いは弱まっている。10月2日分は確認時点で一部未反映のため、確定値としては扱わない。
過去に多くの資金が入ったことと、今後も同じ勢いで買われることは別だ。ETFは有力な支えである一方、流入が止まった際の市場の耐久力も問われる。
ETF以外の支えは、資本流入の改善と過熱の緩和
オンチェーンには、下値を支える材料も見える。
Glassnodeによると、9月27日までのデータでRealized Capの月間変化率はプラス1.1%だった。これは各BTCを最終移動時の価格で評価した総額であり、その増加は、より高い取得価格でコインを受け取る買い手の存在を示唆する。ただし、現金の純入金を直接測る指標ではない。
また、ロング側の資金調達負担も低下している。買いポジションの過熱が和らぐことは、連鎖的な清算リスクを抑える方向に働く。ただし、建玉の水準も併せて見る必要があり、これだけで下値の安全性を判断することはできない。
さらに、追加利上げ懸念の後退も支えとなる。下値を支える要因には、実際の買い需要だけでなく、金融環境の悪化や過熱に対する警戒の緩和も含まれている。
次の方向を決めるのは、買い手の広がり
上抜けの持続性を判断するには、ETF流入に加え、現物市場全体の買いが広がるかを確認したい。Spot CVDや、米国の現物需給を読む手掛かりとなるCoinbase Premiumの改善、利益確定売りを吸収した後の価格の粘りが重要になる。
逆に、ETFが継続的な流出へ転じ、現物需要が弱いまま売りが増えれば、下の壁は薄くなる。
今は、上値の重さだけで全面的に弱気になるのも、ETF流入だけで強気になるのも早い。上の壁を構成する金利と売り圧力、下の壁を支える買いの継続性を、それぞれ点検する局面だ。方向を決め打ちするよりも、どちらに動いても対応できる余力と心構えを持っておきたい。
ショート動画
https://youtube.com/shorts/MlJeFYdZP7E
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