農林中央金庫など6社は11月5日、同金庫の100%子会社である農中信託銀行、ケネディクス(KDX)、KDX STパートナーズ(KST)、SBI証券、Progmatの5社が、デジタルアセット発行・管理基盤「Progmat」を活用した不動産デジタル証券(セキュリティ・トークン、ST)の案件化に向けて協業すると発表した。
農林中央金庫グループがST事業に参入するのは初めて。まずはグループ初となる不動産STの組成を目指す。対象物件や発行額、募集時期などは明らかにしていない。
農中信託銀行が受託者、SBI証券が販売
KDXはスポンサー兼アレンジャーとして、対象不動産の供給とスキームの組成を担当する。KSTはアセットマネージャーとして、ST組成後の期中運用や投資家への情報開示を担う。
農中信託銀行は、不動産STを発行するための仕組みである受益証券発行信託の受託者として、信託財産とProgmat上の受益権原簿を管理する。同社にとって、STファンドに関する信託業務への新規参入となる。
SBI証券はSTの引受・販売を担当し、幅広い個人投資家への提供を目指す。
Progmatは、農中信託銀行とSBI証券に「Progmat SaaS」を提供する。金融機関が自社サーバー上にブロックチェーンのノードを構築しなくても、デジタルアセットの原簿管理やカストディなどの業務を始められる仕組みだ。
証券会社は、投資家の秘密鍵管理などを外部のカストディアンに委託せず、自社で完結させることもできる。農中信託銀行は、SBI証券以外の証券会社との連携も見据える。
Progmatへの出資から、案件受託を目指す段階へ
農中信託銀行は2025年4月にProgmatに出資し、制度設計を含むデジタルアセット発行市場の発展や、新たなデジタルアセットの開拓に取り組んできた。今回の協業では、農中信託銀行が出資にとどまらず、実際のST案件の受託を目指す。
KDXとKSTは、2021年7月に当時Progmatを運営していた三菱UFJ信託銀行と、Progmat基盤を活用した国内初の公募型不動産STで協業した。SBI証券もこの案件に参加している。
KDXとKSTは2026年7月、Progmat、Datachainと、KSTがアセットマネージャーを務める仮想ファンドを用いたクロスチェーンDvPの実証を行った。仮想ファンドのSTと、信託型ステーブルコイン(SC)の規格に基づくトークンを異なるブロックチェーン上で発行し、同時に決済できることを検証した。
今回の協業では、各社がこれまで蓄積してきた組成、運用、信託、販売のノウハウを持ち寄る。
将来は農林水産業関連資産も視野
農林中央金庫と農中信託銀行は、今回の不動産STを契機に、ブロックチェーンを活用した金融ソリューションの研究をグループ一体で進める。
農中信託銀行は、従来は大型の機関投資家向けにしか提供できなかった多様な金融商品や、農林水産業に由来する非金融資産のデジタルアセット化などを通じ、中長期的には系統団体や組合員を含む投資家に新たな投資機会を提供することを目指している。
今回の発表は、具体的な不動産STの発行計画ではなく、案件組成に向けた協業の開始だ。一方、農中信託銀行による受託が実現すれば、STの発行・管理を担う金融機関の裾野がさらに広がる。
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|文:NADA NEWS編集部
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