米ブロックチェーン企業Eigen Labsは9月10日、ビットコインやイーサリアムが使う暗号方式ECDSA(デジタル署名アルゴリズム)を量子コンピュータで解読するのに必要な計算量が、従来の想定より少なくて済むとする研究成果を、論文投稿サイトarXivで公開した。
ECDSAは、十分な性能を持つ量子コンピュータが登場すれば理論上は解読され得るとされる暗号方式だ。今回の研究は、その解読に必要な計算の重さを、実際に検証できる回路を使って見積もり直したものである。
対象としたのは、暗号解読の計算の中でも避けて通れない「点加算」という処理だ。研究チームはこの処理を、量子コンピュータの作業メモリに近い基本単位である「論理量子ビット」1151個で実行できるまで最適化した。あわせて、計算の中でも特に負荷の大きい「トフォリゲート」という演算の回数も、約130万回に抑えたという。
研究チームは、量子ビット数と演算回数を掛け合わせた資源の指標も算出した。
この指標は、Googleの量子コンピューティング部門Google Quantum AIが2026年3月に示した回路の値より50%以上低い水準になったという。
ただし両者は算出方法や条件が異なり、論文は「優劣を証明するものではなく、数値上の比較にとどまる」としている。
この研究には、2026年5月から100人以上の人間とAIエージェントが参加した。6月には検証の仕組みと成績表(リーダーボード)を一般公開し、誰でも改良案を提出できるようにした。
ビットコインを巡る量子リスクについては、Googleが3月31日に暗号解読に必要な資源が従来推定より少なく済むとの見解を示していた。StarkWareは8月26日、量子耐性を持たせたビットコイン取引を初めて成立させたと発表している。
もっとも今回の回路を実際に動かせる量子コンピュータは存在せず、IBMが2029年までに目標とする論理量子ビット数も200個にとどまるとされている。
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|文:栃山直樹
|画像:Adobe Stock
