Coinbase、個別株の永久先物でSECに通知登録──残るCFTCの承認と、米国参入を協議するHyperliquid【MCB FinTechカタログ通信】

米国の大手暗号資産取引所であるCoinbaseは2026年9月3日、個別株を対象とする永久先物(パーペチュアル)を米国で提供するため、傘下のデリバティブ取引所と先物取次業者について、米証券取引委員会(SEC)に通知登録を提出したと発表しました。実際に提供を始めるには、このあと米商品先物取引委員会(CFTC)の承認を得る必要があります。

今回は、永久先物取引とは何かを確認したうえで、株式の永久先物が米国外でどこまで広がっているのかをHyperliquidの取引データから見ていきます。続いて、Coinbaseの届け出の内容と残る手続き、Hyperliquid自身の米国参入構想、既存の取引所の反応を解説します。そのうえで、米国で登録を持つ取引所と、規制の外で規模を作ってきた取引所が同じ市場に向かっている状況について考察します。

※本記事の内容は、マネックスクリプトバンクが週次で配信している、FinTech・Web3の注目トピックスを解説するニュースレター「MCB FinTechカタログ通信」の抜粋です。マネックスクリプトバンクが運営する資料請求サイト「MCB FinTechカタログ」にて、過去の注目ニュース解説記事を公開していますので、ぜひご覧ください。

永久先物取引とは何か、株式への広がり

まずは永久先物取引とは何かについて解説します。永久先物取引は、決済期限(満期日)が設定されていないデリバティブ取引の一種です。通常の先物取引と異なり、期限が来るたびに次の限月へ乗り換える必要がなく、代わりに資金調達率(ファンディングレート)と呼ばれる仕組みで価格を現物に連動させるといった特徴があります。先物価格が現物より高ければ買い建てている側が売り建てている側に、低ければその逆に一定額を定期的に支払うことで、価格が現物に引き戻されます。Hyperliquidなどの分散型取引所(DEX)や海外の暗号資産取引所で、レバレッジ取引の主力商品として用いられてきましたが、2026年5月にCFTCが政策声明で定義を示し、Kalshiのビットコイン永久先物を先物として承認するなど、伝統的な金融市場においても扱われるようになっています。

その永久先物の対象が、暗号資産から株式へと広がりつつあります。Binanceは2026年1月にTeslaを皮切りに株式の永久先物を開始し、同社の発表によると、8月の取引高は株式に連動するものだけで約3,429億ドルに達しています。株式に連動する永久先物の取引高は1月時点で4.1億ドルであったため、半年ほどで800倍以上に成長した形になります。Coinbaseも2026年3月から米国外の顧客向けに株式の永久先物を提供しており、AppleやNVIDIAなど米国の大型株7銘柄を対象に、週末を含む24時間365日、最大10倍のレバレッジで取引できます。ただし、いずれも米国のユーザーは対象外です。

Hyperliquidで取引される株式の規模と、週末の価格の決め方

株式の永久先物が最も活発に取引されているのが、DEXの最大手であるHyperliquidです。Hyperliquidは2025年10月にHIP-3という仕組みを導入し、50万HYPE(同取引所のトークン)を預け入れれば誰でも自分の永久先物市場を立ち上げられるようにしました。この仕組みを使って株式や株価指数、商品(コモディティ)の市場を運営しているのがtrade.xyzで、契約はステーブルコインUSDC建てです。S&P500やNVIDIA、SKハイニックスなどの契約が並び、最大レバレッジはS&P500で50倍に達します。

Hyperliquidの公開APIから9月4日時点のデータを集計すると、trade.xyzの建玉(決済されずに残っている契約の総額)は約37.6億ドルで、同じHyperliquid上のビットコインの建玉約29億ドルを上回っていました。取引高に占める比率は日によって動きますが、調査会社Coin Metricsの集計では8月の月間で55%に達しており、暗号資産の取引所であるHyperliquidの取引の半分以上が、すでに株式や株価指数、商品によるものとなっています。

ここで注意しておきたいのは、株式の永久先物には暗号資産にはない問題があるという点です。株式市場が閉まっている間の値付けです。trade.xyzの説明によると、米国株の価格は週5日分しか市場から得られない一方、契約自体は週末も取引できます。そのため市場が閉まっている間は、直前の価格と実際の取引価格との差を少しずつ埋める計算式で参照価格を動かし、市場が開けばそちらに切り替える設計になっています。取引のない時間の価格を誰がどう決めるかが、株式の永久先物が成り立つ条件であり、同時に弱点にもなっています。

Coinbaseの届け出の内容と、残る手続き

Coinbaseは何をどこまで済ませたのか、届け出の中身から見ていきましょう。米国では、個別株を対象とする先物は「個別株先物」としてSECとCFTCが共同で管轄しており、CFTCに登録した取引所と先物取次業者は、SECに通知登録を行うことでこの商品を扱えるようになります。Coinbaseが公開した書類によると、9月1日にSECへの通知登録を行ったのは、取引所のCoinbase Derivativesと先物取次業者のCoinbase Financial Marketsの2社です。通知登録は審査を伴わない届け出であるため、これで登録自体は済んだことになります。ただしCFTCは、ビットコイン以外の資産を参照する永久先物については個別に審査と承認を受けるよう求めており、Coinbaseも次の段階をCFTCによる契約の承認と説明しています。承認されれば、米国のユーザーが個別株の永久先物を取引できるようになる見込みです。

ただし、この承認には時間がかかる可能性があります。CFTCは2026年5月の政策声明で、株式を参照する永久先物についてはSECと併せて審査することが望ましいとしています。Kalshiのビットコイン永久先物を承認した命令でも、この命令の判断はビットコインなどデジタル商品を参照する契約に限られ、それ以外の資産には及ばないと明記しました。この命令が承認の理由として挙げているのは、ビットコインの現物市場が24時間365日動いているため参照価格を常に観測でき、裁定取引で価格のずれをその場で埋められるという点です。株式の現物市場は週末には閉まるため、前述の週末の値付けをどう設計するかが、審査の論点になると考えられます。Coinbaseが8月17日に米国で始めた株価指数を対象にした永久先物型の「US500」は、取引時間を日曜午後8時(米東部時間)から金曜午後5時までとし、週末は取引できない設計です。個別株でも同じ設計になるのか、trade.xyzのように計算式で価格を動かし続けるのか、その中身が審査の焦点になります。

Hyperliquidの米国参入構想と、既存の取引所の反応

Coinbaseの発表の直前には、Hyperliquid自身の米国参入についても動きがありました。8月31日、Hyperliquid Labsが取引所Krakenを運営するPaywardと協議していることが、Bloombergの報道として伝えられています。協議されているのは、Paywardが5月に買収したCFTC登録の取引所Bitnomialを通じて、米国のユーザーにHyperliquidの市場に連動する暗号資産の永久先物を提供する形です。概要はすでにCFTCに示されていますが、承認はまだ得られていません。8月19日にはトランプ大統領も、CFTCのセリグ委員長がHyperliquidを法令に沿う形で米国内に迎え入れようとしていると述べたと伝えられており、政権の後押しもうかがえます。まずは暗号資産からという報道ですが、Hyperliquidの取引の半分以上が株式や株価指数、商品によるものになっている以上、米国で株式の永久先物を提供することも視野に入っていると考えるのが自然でしょう。

一方で、既存のデリバティブ取引所であるCMEは反発しています。CMEは6月、永久先物は法律上は先物ではなく、適用される規則が異なるスワップであるとして、Kalshiの承認をめぐりCFTCを提訴しました。ただし、そのCMEも7月には米国の主要個別株を対象とする満期のある先物を上場しており、永久先物という形式には反対しつつ、個別株のデリバティブ市場そのものには自ら商品を投入しています。

考察

今回の2つの動きは、米国で登録を持つCoinbaseと、規制の外で規模を作ってきたHyperliquidが、それぞれ足りないものを補いながら同じ「米国における株式の永久先物」に向かっている点で共通しています。Coinbaseにとっては、Hyperliquidの取引データや自社の米国外向けサービスから、株式の永久先物に需要があることはすでに見えています。足りないのは米国の規制下で提供する許可であり、取引所と先物取次業者の登録をすでに持つ強みを生かして、その許可の取得を先に進めた形です。一方のHyperliquidは、取り扱う契約と流動性はすでに持っている代わりに、米国で提供する許可を持ちません。そこで、CFTCへの登録を済ませているBitnomialを買収したPaywardと組むことで、米国で規制下の永久先物を提供する資格を得ようとしています。

どちらがより投資家ユーザーに受け入れられるかは、承認の順番だけでなく、承認される内容によっても左右されると考えられます。Coinbaseが先に承認を得ても、週末に取引を止める、レバレッジを抑えるといった条件が付けば、HyperliquidなどのDEXでオンチェーン上で取引されているものと同じ体験にはなりません。逆に、Hyperliquidの市場に連動する契約が規制下で提供できるようになれば、流動性の面で先行するHyperliquid側が有利になると考えられます。CFTCは暗号資産の永久先物については米国に呼び込む姿勢を示しており、株式についても、どちらがどの条件で先に始めるかが焦点になりそうです。

より大きく見れば、暗号資産取引所が株式のデリバティブを扱い、既存の取引所が満期のある個別株先物を上場し、DEXが規制下の市場に入ろうとしています。暗号資産と伝統的な金融の間にあった取引所の境界は、こうして薄れつつあるといえます。競争の軸も、どの資産を扱うかから移りつつあります。24時間365日の取引、高いレバレッジ、ステーブルコインによる担保といった取引の条件を、どこまで規制下で提供できるかが問われる段階に入ったといえそうです。日本では、暗号資産交換業者が扱えるのは暗号資産に限られ、個人向けの暗号資産デリバティブも内閣府令で証拠金率50%(レバレッジ2倍)に抑えられているため、同じ競争はまだ起きていません。2026年7月に成立した改正金融商品取引法によって暗号資産の規制が金融商品取引法に移るなかで、暗号資産以外の資産を含むデリバティブをどこまで認めるのかは、米国での結論とあわせて見ていきたい論点です。

【次に読む】
» HyperliquidのHYPE、過去最高値更新──80ドル突破
» Hyperliquid系の政策団体、SEC・CFTCに永久契約ルールの統一を要求
» Coinbase、米国で株式パーペチュアルの提供目指す

|画像:Adobe Stock

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