暗号資産(仮想通貨)取引所bitbankを運営するビットバンクが公開した「LN Trends」最新号を転載してお届けします(LN:Lightning Network)。
LN市場の概況

概要:
●2026年8月30日時点で、公開ノード数は約13,803であり、7月末(約14,869)から約1,066減少した(約7.2%減)。
●キャパシティは約3,704 BTCであり、7月末(約4,496 BTC)から約792 BTC減少した(約17.6%減)。
●チャネル数は約36,829であり、7月末(約43,658)から約6,829減少した(約15.6%減)。
●公開ネットワーク上のノード数、キャパシティ、チャネル数はいずれも7月比で二桁前後の減少となり、直近1年の月次比較でも大きな縮小となった。
一方、本レポートで取り上げるとおり、Boltzのスワップ停止とBlockstream Swapsの後継発表、Core Lightningの緊急パッチといった運用側の動きに加え、Lightspark × LithicのUSDC決済カード、BreezのGlow公開など、利用接点側の発表も並行して進んだ月であった。
| 日付 | ノード数 | キャパシティ数(BTC) | チャネル数 |
| 8/30 | 13,803 | 3,704 | 36,829 |
| 7/30 | 14,869 | 4,496 | 43,658 |
| 6/30 | 14,995 | 4,679 | 44,921 |
| 5/28 | 15,033 | 4,905 | 45,528 |
| 4/20 | 15,016 | 4,916 | 45,500 |
| 2/28 | 15,008 | 4,944 | 45,317 |
| 01/31 | 14,923 | 5,387 | 45,447 |
| 12/31 | 14,924 | 5,798 | 46,061 |
| 11/30 | 15,104 | 5,428 | 46,775 |
| 10/31 | 15,042 | 4,165 | 46,398 |
| 09/30 | 14,847 | 3,985 | 46,034 |
| 08/15 | 14,476 | 3,827 | 45,555 |
| 07/15 | 13,978 | 3,839 | 45,295 |
用語説明
ノードとは
ライトニングネットワークに参加するソフトウェア単位です。中継やチャネル開設の基点となり、ネットワークの広がりの目安になります。
キャパシティとは
ネットワーク上で送金に使えるビットコインの合計です。流動性や経済規模の目安になります。
チャネルとは
2ノード間のオフチェーン決済路です。即時・低コスト送金の経路として機能し、接続の密度を表します。
Boltzがスワップサービスを無期限停止、Blockstreamが後継スワップを発表
概要:
ノンカストディアルなビットコインのスワップサービスを提供するBoltzは、2026年8月3日にライトニング、ビットコイン、リキッド間のスワップ全般を「無期限」で停止すると発表しました。同社は数か月にわたりAIによる脆弱性探索と複数の攻撃を受けていたと説明し、5人規模の企業では攻撃者の反復サイクルに追随できないと結論づけました。8月13日には創業者3名が退任し、名前を伏せた「ビットコイン業界のベテラン」による新チームが資金とエンジニアリング体制を引き継ぐ形になりました。ユーザー資金はノンカストディアル設計により保全されており、未完了スワップの返金対応は継続しています。
Blockstreamは8月10日、内製の「Blockstream Swaps」を発表しました。もともと開発中だったスワップ機能を、Boltz停止を受けて前倒しでベータ提供する形です。同社は既存プロバイダーの置き換えではなく、冗長性を高める補完的なポジションだと明言しています。
説明:
●少人数OSSが、AI攻撃の速度に追いつけないというリスク
Boltzは、Aqua WalletやBull Bitcoinなど複数のウォレットがスワップ経路として頼っていた重要インフラでした。今回の停止は、少人数で運用されるOSSプロジェクトが、AIによる自動攻撃の反復速度に追いつけないという新しいリスクが浮き彫りになりました。
●代替インフラの登場と選択肢の広がり
Blockstreamのように資金力とブランドを持つ運営元がベータ提供に踏み切ったことで、単一プロバイダーへの集中を避けつつスワップ機能を維持できる環境が整いつつあります。
日本国内でも、ライトニング、ビットコイン、リキッド、ステーブルコインの相互運用を扱うサービスを構想する場合、複数プロバイダーへ切り替えできる設計や、稼働停止時に取引を安全に巻き戻す手順を最初から用意しておくことが重要性だと言えそうです。
Lightspark、Lithicと提携しUSDC決済のグローバルカードプログラムを立ち上げ
概要:
2026年8月5日、Lightsparkはカード発行プラットフォームのLithicと提携し、Visaネットワーク上のグローバルカードプログラムをUSDC建てで発行・決済すると発表しました。カードの発行元はLead Bankで、Lightspark上の口座残高はUSDCなどのステーブルコインのまま保有し、決済時に現地通貨へ自動変換されます。このカードは、同社のGrid Global Accounts(世界65か国以上に対応する多通貨口座基盤)と同じ決済レールを共有します。
Lightsparkはこれに先立ち、SoFiのUMA連携などを通じてビットコインを介した国際送金インフラを商用領域へ広げてきました。今回のカードは、その送金レールがそのまま小売店での日常決済までつながった事例となります。
説明:
●ステーブルコイン建て残高+Visa加盟店へのカード決済という組み合わせ
ユーザーは残高をUSDCのまま保有し、店舗では通常のVisaカードと同じ感覚で支払いができます。店舗側も現地通貨で代金を受け取れるため、カードを使う人や加盟店の体験は既存のVisa決済とほぼ変わりません。両者の間にある「資金の移動と精算」の部分だけを、Lightsparkがビットコインとライトニング上に置き換えている、という構造です。
●事業者はノードを持たず、Lightsparkに任せる流れ
2026年6月号でも扱ったように、事業者は自前でライトニングノードやSparkと接続する仕組みを持たず、Lightsparkのような専門事業者に運用を任せて、自社はユーザー向けのアプリや金融サービスに集中する、という役割分担が広がっています。今回のLithicとのカード提携も、その流れに沿った動きです。
日本国内でも、ステーブルコイン規制の整備が進めば、ドル建てなどの残高を保持したままカード決済に接続するプロダクト設計は現実的な選択肢になります。今回のLightspark × Lithicは、その先行事例の1つとして参考になります。
Breezが「Glow」を公開:ライトニング×ステーブルコインをまとめて扱えるオープンソースのモバイルアプリ
概要:
2026年8月6日、Breezはモバイル向けビットコインアプリ「Glow」を公開しました。GlowはBreez SDKの機能を一通り実装したオープンソースのリファレンスアプリで、iOS/Android/PWAとして配布され、ホワイトラベル利用も認められています。主な機能は、パスキーによるログインとバックアップ、Cash Appなどからのライトニング入金、USD建て残高の保有、そしてビットコイン残高からUSDT/USDCを30以上のブロックチェーン宛に送る外部送金です。ステーブルコインの受取は2026年第3四半期に対応予定とされています。
同社は先月、鍵管理基盤のTurnkeyと提携し、サーバー側の鍵管理まで含むスタックを整備しました。今回のGlowは、そのSDK基盤の上で動く消費者向けアプリの完成形にあたります。
説明:
●開発チーム向けの参照実装としての価値
これまでライトニング対応の消費者向けアプリを自社で作るには、ウォレット構築、鍵管理、UX設計、ステーブルコイン連携をゼロから組む必要がありました。GlowはMITライセンスのProgressive Web Apps(ウェブサイトをアプリのように使えるようにする技術)として公開されており、コードを直接参照して自社プロダクトへ組み込みやすくなっています。
●パスキーとステーブルコインが標準機能として並ぶ
シードフレーズを不要とする設計と、ビットコイン残高からステーブルコインを送れる機能を同じアプリに載せたことで、暗号資産に不慣れなユーザーでも既存アプリと近い感覚で扱えるようになりました。
国内でも、ライトニングやステーブルコインを組み込んだアプリを検討する事業者にとって、Glowはプロトタイプ段階で参照できる実装例として活用しやすい存在です。
Core Lightning、AI起点の脆弱性報告を受けて緊急パッチ26.06.7を公開
概要:
Blockstreamが保守するライトニング実装のCore Lightning(CLN)は、2026年8月28日に緊急セキュリティリリース「26.06.7」を公開しました。7月22日の前バージョン26.06.6以降、外部からAIを使って作成された脆弱性レポートが集中的に届き、そのうち複数が実際に影響のある問題として確認されたことを受けた対応です。開発チームは、詳細な技術情報とソースコードの公開を14日間(2026年9月11日まで)延期する方針を取り、その間にノード運用者が署名済みバイナリでアップグレードを完了させるよう求めています。26.04以前のバージョンはサポート対象外となり、次期リリース26.09は9月下旬を予定しているとしています。
説明:詳細情報を14日間伏せる方針は、パッチ適用完了までのリスクを抑える効果がある一方、ノード運用者には迅速なアップグレード判断を迫ります。運用ドキュメントの整備、緊急アップグレード時の連絡フロー、–offline オプションの利用可否など、平時から準備しておくべき項目が増えています。
●AIによる脆弱性発見が常態化する兆し
Blockstreamの発表によれば、10日ほどの短い期間に多数のAI由来のCVE(共通脆弱性識別子)風レポートが寄せられ、その中に本物の脆弱性が混じっていたとされています。少人数のOSSチームが、AIによる高速な脆弱性スキャンに晒され続けるという構図は、ライトニング実装に限らずビットコインエコシステム全体で意識しておく必要があります。
●情報公開の遅延と、ノード運用側の負担
詳細情報を14日間伏せる方針は、パッチ適用完了までのリスクを抑える効果がある一方、ノード運用者には迅速なアップグレード判断を迫ります。運用ドキュメントの整備、緊急アップグレード時の連絡フロー、–offline オプションの利用可否など、平時から準備しておくべき項目が増えています。


