AIエージェントが銀行APIを操作し、残高確認や振込まで行う──そんな仕組みが現実になり始めるなか、AIにどこまで資金移動を任せるべきなのか。
金インゴットなどのトークン化に取り組むアウラムは8月17日、GMOあおぞらネット銀行が提供するサンドボックス環境「sunabar」のMCPサーバーを利用して、AIエージェントによる銀行API操作の検証を行ったと発表した。
15のテストケースを実施し、同社は「AIエージェントに実行の可否を決めさせない」という設計原則を示した。
AI、ルール、人間の「3層」で管理
GMOあおぞらネット銀行は7月、サンドボックス環境「sunabar 2.0」に、AIエージェントが自然言語による指示を受けて残高照会、入出金明細の取得、振込などを実行できるMCP(Model Context Protocol)サーバーを実装した。
アウラムは今回、この環境を自社が開発するオンチェーン金融プラットフォームの決済業務に当てはめた。
検証では、金(ゴールド)のインゴットの購入代金を受け取り、入金確認後に所有権を移転するという同社の業務を題材にした。
4体のAIエージェントに、金額の上限や操作の種類、実行可能な日時などを自然言語で設定。一方、アウラム側にも注文や在庫、所有権移転の状態などを確認する「決定論的な判定ゲート」を設け、15ケースで両者の判定を比較した。
その結果、アウラムが示したのが、AI、決定論的なルール、人間による3層の役割分担だ。
AIには入出金明細の照会や注文情報との突合、異常の検知、対応案の提示などを任せる。一方、実際に処理してよいかどうかは、あらかじめ設定したルールで判定する。さらに、精算や返金など資金を払い出す操作については、人間が最終承認する。
銀行には分からない「業務の文脈」
検証では、銀行側の仕組みだけでは判断できないケースも確認された。
例えば、注文金額とは異なる金額が振り込まれた場合や、注文者とは異なる名義から入金された場合、同じ注文に二重入金された場合などだ。
銀行から見れば、いずれも正当な口座への正常な入金であり、異常とは判断できない。一方、アウラム側では注文情報などと照合することで処理を停止した。
引き当て可能な在庫がないケースや、所有権移転が完了していない分まで精算しようとするケースについても同様だったという。
アウラムは、金額や操作種別、日時など「リクエストの内容だけで判定できる制約」と、注文や在庫など「業務の文脈」を必要とする判定を分け、後者は事業者側で担保する必要があるとしている。
「AIがお金を使う」時代の統制
アウラムは、金インゴットなどの所有権をブロックチェーン上で記録・管理する「動産デジタル台帳」を開発している。
6月には金インゴットを物理的に動かさずに所有権を移転する実証、7月には金を担保としたオンチェーン・レンディングを実施。今回は、その先にある決済の仕組みを検証した位置づけだ。
今後は今回の知見を、購入代金の着金確認と所有権移転を連動させる決済機能に適用し、将来的には資産移転と資金決済を同時に成立させるDvP(Delivery versus Payment)の実現を目指すという。
なお、今回の検証はGMOあおぞらネット銀行の本番環境ではなく、サンドボックス環境をアウラムが利用して実施したものだ。
AIエージェントが銀行APIにアクセスできるようになれば、「AIがお金を動かせるか」だけでなく、「誰が実行を許可し、どこで止めるのか」が重要になる。今回の検証は、その役割分担を具体的な銀行業務に当てはめた事例といえそうだ。
|文:増田隆幸
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