世界でRWA(現実資産)のトークン化が加速するなか、日本はこの市場で存在感を示せるのか──。
Securitize Japanの小林英一氏は7月14日、「WebX 2026」のパネルセッション「兆円市場への道──RWA・MMF・トークン化証券の本格化シナリオ」に登壇し、「2033年に世界のRWA市場が3000兆円規模になるなら、日本にも300兆円規模の市場がなければ負けだ」と危機感を示した。
セッションには、ブラックロックの田中勇毅氏、フランクリン・テンプルトン・ジャパンの湯浅光則氏も登壇し、トークン化MMF(マネー・マーケット・ファンド)の活用や、日本市場の課題について議論した。
モデレーターは、大阪デジタルエクスチェンジの朏仁雄氏が務めた。
トークン化MMFの用途広がる

田中氏は、トークン化MMFの用途として、
①ステーブルコインの待機資金の運用先
②ステーブルコインの裏付け資産
③DeFiでの担保利用
の3つを挙げた。
従来のMMFは証券口座のなかで保有する金融商品だった。一方、トークン化MMFはオンチェーンで保有・移転できるため、ステーブルコインやDeFiと組み合わせて利用できる点が大きな違いだという。
「伝統的な金融機関のお客さまも徐々にこの領域に興味を示し始めている」と田中氏。トークン化MMFの活用範囲は、暗号資産ネイティブの投資家だけでなく、機関投資家にも広がりつつあるとの認識を示した。
企業買収の決済に使用

フランクリン・テンプルトンは、2021年に世界初のトークン化MMF「BENJI」を立ち上げた先駆者だ。
湯浅氏は、「中身は従来のMMFと変わらない」としながらも、ブロックチェーン上で保有・移転できることで、24時間365日の移転や秒単位での権利管理が可能になると説明した。
さらに、企業グループ内の資金移動にも利用できるとし、「設定・解約を伴わず保有者同士で移転できるため、企業財務の観点でも利便性が高い」と述べた。
また、同社が最近買収した暗号資産アクティブ運用会社の買収代金をトークン化MMFで決済した事例を紹介。「企業のM&Aでも活用できることを示したかった」と語った。
DeFiは今後の成長ドライバー
小林氏は、ブラックロックのトークン化MMF「BUIDL」などの登場を受け、トークン化MMF市場は大きく拡大したと説明した。
また、トークン化MMFならではの用途として、DeFi(分散型金融)で担保資産として利用できる点を挙げ、「DeFiは非常に重要な市場成長のドライバーになっている」との認識を示した。
一方で、機関投資家が安心して利用するためには、本人確認(KYC)や資産の透明性、セキュリティなど、規制に準拠した環境整備が不可欠だと指摘した。
「日本は300兆円市場を築けるのか」

一方、日本市場については慎重な見方も示された。
湯浅氏は、海外で展開するトークン化MMFを日本へ持ち込む構想を進めているものの、「需要がまだ見えない」と説明。販売を担う国内大手証券会社からも「トークン化MMFに投資する法人顧客を想定しづらい」という声があると紹介し、現時点では暗号資産関連企業など一部の需要に限られているとの認識を示した。
最後に小林氏は、あるコンサルティング会社の予測として、2033年に世界のRWA市場が約3000兆円規模になるとの見通しを紹介。「日本が世界市場で現在と同程度、約10%の存在感を維持するなら、300兆円規模の市場が必要になる」との考えを示した。
「今、パブリックチェーン上での日本市場は実質ゼロ。今後7年ほどで300兆円規模まで持っていけるかどうかが課題だ。それができなければ、日本はこの分野で負けてしまう」
パブリックチェーンを前提としたRWA市場が世界で拡大する一方、日本では制度整備に加え、実際に利用されるユースケースをどこまで生み出せるかが問われている。
|文・撮影:増田隆幸


