● 暗号資産取引所で急拡大するTradFi Equity Perpetualの中でも、特に注目を集めたのがSpaceX関連のパーペチュアル先物である。
● SpaceX人気の本質は、単なる話題性ではなく、これまで一部の機関投資家や富裕層に限られていた未上場企業への投資需要が、暗号資産市場に流れ込んでいる点にある。
● エックスウィンでは、この動きはRWAやトークン化証券の普及に向けた重要な前兆であり、「誰が成長企業へアクセスできるのか」という資本市場の構造変化を示していると考えている。
TradFi Equity Perpetual編・第2回
第1回では、暗号資産取引所が株式パーペチュアル先物を通じて、従来の株式市場へ近づき始めていることを解説した。

図1を見ると、2026年6月時点ではBinanceが約80%という圧倒的なシェアを占めており、Bitgetが約13%で続いている。TradFi Equity Perpetual市場は、まだ黎明期ではあるものの、現時点ではBinanceが市場形成を主導していることが分かる。
その中で最も象徴的な存在となったのが、SpaceXである。
SpaceXは、イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業であり、ロケット打ち上げ、衛星通信、宇宙インフラなど、複数の巨大テーマを抱える世界有数の成長企業である。しかし、長らく未上場企業であったため、一般投資家が直接株式を購入することはほぼ不可能だった。
通常、未上場企業への投資機会は、ベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ、機関投資家、富裕層などに限られている。つまり、世界中の投資家が「投資したい」と考える企業であっても、実際にアクセスできる人はごく一部に限られてきた。
ここに暗号資産取引所が入り込んだ。
重要なのは、暗号資産取引所で提供されているSpaceX関連の商品は、通常の株式そのものではないという点である。多くの場合、それはSpaceXの株式や企業価値に連動するデリバティブ商品であり、投資家は株主としての議決権や配当を得るわけではない。
しかし、価格へのエクスポージャーは得られる。
この違いは非常に重要だ。株式を保有することと、株価や企業価値に連動する金融商品を取引することは法的にも経済的にも異なる。しかし投資家心理の面では、「これまでアクセスできなかった成長企業の値動きに参加できる」という点で、大きな魅力を持つ。
SpaceXが圧倒的な人気を集めた理由は、単に有名企業だからではない。

図2からも分かるように、BinanceにおけるTradFi株式パーペチュアル先物の取引高は2026年6月に急拡大した。CryptoQuantによると、この急増の最大の要因はSpaceX(SPCX)のパーペチュアル先物であり、MicroStrategy(MSTR)、Circle(CRCL)、Intel(INTC)などの取引高も増加したものの、SpaceXの人気が市場全体を押し上げる結果となった。
第一に、同社は宇宙開発という巨大な成長テーマを背負っている。第二に、イーロン・マスク氏という強いブランド性がある。第三に、上場前企業でありながら、世界中の個人投資家から極めて高い関心を集めていた。第四に、暗号資産投資家はもともと高成長テーマや未来型企業への投資に強い関心を持つ層と重なっている。
つまり、SpaceXは暗号資産市場の投資家心理と非常に相性が良かったのである。
この流れは、OpenAI、Anthropic、Stripeなど、他の未上場企業にも広がる可能性がある。AI、宇宙、フィンテック、エネルギー、半導体といった成長領域では、上場前から世界的な注目を集める企業が増えている。これらの企業に対する投資需要は存在しているが、従来の資本市場ではその需要を十分に吸収できていなかった。
暗号資産取引所が提供する未上場株連動型の商品は、この需給ギャップを埋める存在になりつつある。
ただし、ここには大きなリスクもある。
未上場企業は、上場企業に比べて情報開示が限られている。企業価値の算定も難しく、実際の株式流通価格とデリバティブ市場の価格が大きく乖離する可能性もある。また、上場前後で株式数、評価額、流動性、ロックアップ条件などが変化するため、価格形成は非常に複雑になる。
さらに、投資家が誤解しやすい点として、「SpaceXに投資している」と感じていても、実際には株式そのものを保有していないケースが多い。これはRWAやトークン化証券と混同してはいけない。
RWAとは、現実世界の資産をブロックチェーン上で表現し、所有権や収益権と結びつける考え方である。一方、株式パーペチュアル先物は、あくまで価格に連動するデリバティブである。両者は似ているように見えて、法的な権利関係は大きく異なる。
それでも、今回のSpaceX人気が示した意味は大きい。
市場が求めているのは、単なる暗号資産の売買ではない。投資家は、世界中の成長企業、伝統資産、未上場株、ETF、債券、不動産といった幅広い資産へ、より自由に、より早く、より少額からアクセスしたいと考えている。
暗号資産取引所は、そのニーズに対して、24時間取引、ステーブルコイン決済、レバレッジ、グローバルアクセスという形で応えようとしている。
エックスウィンでは、この動きは資本市場の民主化に向けた重要な変化だと考えている。これまで成長企業へのアクセスは、一部の投資家に集中していた。しかし、デリバティブやトークン化、RWAの発展によって、将来的にはより多くの投資家が多様な資産へアクセスできるようになる可能性がある。
もちろん、投資家保護や規制整備は不可欠である。特に未上場企業に連動する商品では、価格の透明性、情報開示、リスク説明が極めて重要になる。
しかし、今回のSpaceX人気は、金融市場の未来を考える上で非常に示唆的である。
投資家はもはや、取引所が開いている時間だけを待つ存在ではない。世界中の資産に、24時間アクセスしたいと考えている。そして暗号資産取引所は、その欲求を最も早く商品化している。
SpaceXは単なる人気銘柄ではない。
それは、未上場企業、RWA、トークン化証券、そして24時間金融市場が交差する、未来の資本市場を映す象徴的な存在なのである。
(第3回では、TradFi Perpetual、RWA、オンチェーン証券が2030年までに金融市場をどのように変えるのかについて解説する。)
◆用語解説
TradFi Equity Perpetual(伝統的株式パーペチュアル先物)とは、株式そのものを保有するのではなく、株価の値動きに連動するデリバティブ商品を暗号資産取引所で24時間365日取引できる金融商品です。通常の株式市場では、証券取引所が開いている時間しか売買できませんが、TradFi Equity Perpetualではビットコインやステーブルコインを証拠金として、株価の上昇・下落をいつでも取引できます。また、レバレッジを利用した取引も可能であり、暗号資産市場で培われた高い流動性や24時間取引の利便性を、伝統的な金融資産にも広げた新しい仕組みとして注目されています。
ただし、TradFi Equity Perpetualは株式そのものを保有する商品ではありません。そのため、議決権や配当など株主としての権利は得られず、あくまで株価の変動による損益を取引するデリバティブ商品です。それでも、これまで一般投資家がアクセスしにくかった未上場企業や海外株式などへ、世界中から24時間取引できる点は大きな魅力となっています。近年ではSpaceX関連商品の人気をきっかけに取引が急拡大しており、暗号資産市場と伝統的金融市場(TradFi)の融合を象徴する新たな市場として注目されています。
■ショート動画
【第2回】暗号資産取引所で一番人気はビットコインじゃない? SpaceXが示す資本市場の未来
https://youtube.com/shorts/9QXIMwsmVBc?si=vK-d0yX7qawgmTL2


