・上場ビットコインマイニング企業は2026年に入ってから2万8000BTC(約18億ドル)を売却した。各社がAIインフラへの資本配分を強めるなか、BTC保有量は年初の12万7000BTCから9万9000BTCまで減少している。
・上場マイナーがマイニング事業への比重を縮小するなか、ビットコインネットワークのハッシュレートは1月の高値から約15%低下した。
・2026年はビットコインマイニング企業の株価がBTCをアウトパフォームしており、AIやHPC(高性能コンピューティング)事業がマイニング利益率の低下を補うとの投資家の期待を反映している。
FRBの利上げ観測後退も売り圧力強まる、ビットコインマイナーは2万8000BTCを売却
ビットコイン(BTC)は8月13日(木)、6万5000ドルを下回って取引された。7月の米消費者物価指数(CPI)がおおむね市場予想通りとなり、前週に発表された予想を下回る米労働市場の指標と相まって、9月の米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ観測が後退した。
マクロ経済環境では金融引き締めへの警戒感が和らいでいるものの、ビットコインマイナーによる売り圧力は、2026年のBTC相場にとって依然として大きな逆風となっている。

Blockware Intelligence(ブロックウェア・インテリジェンス)によると、上場ビットコインマイニング企業は年初時点で合計約12万7000BTCを保有していた。
現在、その保有量は約9万9000BTCまで減少しており、年初来の純売却量は約2万8000BTCに達する。BTC価格を現在の約6万5000ドルとして換算すると、累計売却額は約18億ドル相当となり、それだけのBTCが市場に放出されたことになる。

CryptoQuant(クリプトクアント)のオンチェーンデータによると、マイナーはBTCが6万ドルを上回って価格を回復するたびに、売却を加速させていることが示唆されている。
5月31日から7月4日にかけては、マイナー全体の保有量は119万1000BTCから約119万4630BTCへ増加した。この期間、BTC価格が約7万3600ドルから6月末の年初来安値となる約5万8534ドルまで下落するなか、マイナーはBTCを積み増していた。
しかし、価格が回復すると、この動きはすぐに反転した。BTCが7月上旬に6万ドル台を回復して以降、マイナーの保有量は約119万2630BTCまで減少しており、過去1カ月で約2000BTCが売却されたことを示している。

一方、マイニング難易度は2025年11月のピークから約18%低下した。
ブロックウェアは、これをビットコインネットワーク史上最も長期間続いているハッシュレートの低下局面だとしている。難易度が低下したことで、現在も稼働を続けるマイナーは、同じ計算量でも以前より多くのBTCを獲得できる状況となっている。

Ziven.ioによると、ビットコインの推定グローバルハッシュレートは、2026年初めの約1043EH/sから、8月12日時点で約884.3EH/sまで低下した。
同じ期間に、上場マイナー全体の稼働ハッシュレートも約427EH/sから403EH/sへ減少しており、業界が徐々にAIや高性能コンピューティング(HPC)向けインフラへ軸足を移していることを反映している。
独立系研究者「AIシフトはビットコインの安全性を弱める一方、マイニング業界の財務健全性を維持」
Reflexivity Research(リフレクシビティ・リサーチ)共同創業者兼アドバイザーのWill Clemente(ウィル・クレメンテ)氏は、ハッシュレートの低下はビットコインマイニングの採算性が崩壊したことを意味するのではなく、業界の構造変化を反映したものだと指摘している。
クレメンテ氏は8月8日にXへ投稿した記事で、競争激化や電力コストの上昇、2022年以降のマイニング利益率の縮小によって、マイナーの収益性は数年間にわたり圧迫されてきたと説明した。
しかし、最大の要因は、マイナーが資本をAIや高性能コンピューティングへ振り向けていることだとみている。現在、これらの事業は従来のビットコインマイニングより高いリターンをもたらしているという。
クレメンテ氏はまた、過去1年間でBTCがAI関連資産を大幅にアンダーパフォームしたことも、多くの上場マイニング企業がマイニング設備の増強よりコンピューティングインフラを優先する要因になったと指摘した。

Ziven.ioのデータによると、上場ビットコインマイニング企業の時価総額合計は、年初の約632億ドルから8月12日時点で約785億ドルへ増加し、約25%の伸びとなった。
この乖離は、投資家がマイナーを単なるBTCの代理的な投資対象ではなく、複数の事業を手掛けるインフラ企業として評価する傾向を強めているとのクレメンテ氏の見方を裏付けている。
既存の電力資産をAIデータセンターや高性能コンピューティングに活用して収益化できる企業には、マイニング収益への圧力が続くなかでも、より強い投資需要が集まっている。
クレメンテ氏は、ハッシュレートの低下によってビットコインネットワークの安全性を支えるエネルギーの総量が必然的に減少し、新たに採掘される1BTCあたりの生産コストも低下すると指摘した。
一方で、ビットコインの難易度調整メカニズムがあるため、これが直ちにネットワークの存続を脅かすリスクになるわけではないとも強調している。
ハッシュレートが低下すると、マイニング難易度は約2週間ごとに自動的に調整される。これにより、残ったマイナーは同じハッシュレートでもブロックを獲得できる確率が相対的に高まり、安価な電力を利用できる新たな参加者にとって参入するインセンティブが生まれる。
クレメンテ氏はさらに、ハッシュレート低下という目立つ数字の裏側には前向きな傾向もあると指摘した。
主要な上場マイニング企業のほぼすべてがAIインフラへ積極的に事業を拡大しているにもかかわらず、ネットワーク全体のハッシュレートは急激に崩壊したわけではなく、2025年半ばごろの水準まで低下したにとどまっている。
地理的に分散したビットコインのノードネットワークと合わせて考えると、上場マイニング企業が事業を多角化する一方で、低コストのエネルギーを利用できる独立系マイナーが引き続きプロトコルを支えていることを示しているという。
ビットコインマイニング株、BTCをアウトパフォーム──AIインフラ戦略を投資家が評価
2026年のBTC相場が低迷する一方、上場マイニング企業の株価は相対的に堅調なパフォーマンスを示している。
Ziven.ioのデータによると、上場ビットコインマイニング企業の時価総額合計は、年初の約632億ドルから8月12日時点で約785億ドルへ増加し、約25%の伸びとなった。
同じ期間に、BTCは年初来で約27%下落している。
この乖離は、投資家がマイナーを単なるBTCの代理的な投資対象ではなく、複数の事業を手掛けるインフラ企業として評価する傾向を強めているとのクレメンテ氏の見方を改めて裏付けている。
既存の電力資産をAIデータセンターや高性能コンピューティングに活用して収益化できる企業には、マイニング収益への圧力が続くなかでも、より強い投資需要が集まっている。
BTCは過去40日間にわたり6万2000ドルを上回る水準でもみ合いを続けているものの、予測市場では年末までの相場見通しに対して慎重な姿勢が続いている。
Polymarket(ポリマーケット)の最新データによると、トレーダーは急激な上昇ブレイクアウトよりも資金の保全を強く重視し、防御的なポジションへ積極的にシフトしている。

BTCが7万ドルに到達する確率は12ポイント低下し、68%となった。一方、7万5000ドルに到達する確率は17ポイント低下し、51%とほぼ五分五分の水準となっている。
より投機的な8万ドル、8万5000ドルという価格目標については、到達確率がそれぞれ32%、20%と低い水準にとどまっており、市場では年末までBTCが6万ドルから7万3000ドルのレンジでもみ合う展開が長期化するとの見方に傾いている。


