エックスウィン アメリカマーケットリサーチアナリストのデリア・ロホです。
サンフランシスコから、今回は「アメリカ人は今、暗号資産をどう見ているのか」についてお伝えします。
最新のChainalysis「2026 Global Crypto Adoption Index」で、アメリカは世界2位となりました。1位はブラジル、3位はナイジェリア、日本は4位です。さらにアメリカは、暗号資産サービスへの資金流入とオンチェーン残高では世界1位となっています。
この数字だけを見ると、「アメリカでは、Cryptoが完全に一般化した」と思うかもしれません。しかし、アメリカ人として実際に生活している私の感覚と、最近の世論調査を重ねてみると、もう少し複雑な姿が見えてきます。
私は現在のアメリカを、「Cryptoはもう無視できない。しかし、まだ完全には信じられない」という段階にいると感じています。
世界2位でも、実際に持っている人は約1割
まず興味深いのが保有率です。2026年のGallupとUrban Instituteという2つの全国調査では、現在暗号資産を保有している米国成人は、いずれも9%でした。
一方、Pew Research Centerでは、これまでに暗号資産へ投資、取引、利用した経験のある人は19%です。
つまり、大まかに言えば、アメリカ人の約5人に1人が一度はCryptoに触れた経験を持つ一方、現在も保有している人は約10人に1人ということになります。
ここが重要だと思います。
アメリカではBitcoinという言葉を知らない人を探すほうが難しくなりました。ETF、ステーブルコイン、政府のBitcoin Reserve、そして暗号資産規制まで、ニュースでCryptoを見る機会も増えています。
しかし、「知っている」ことと「自分のお金を入れる」ことには、まだ大きな距離があります。
アメリカ人は「怖い。でも無視できない」
その理由の一つが、リスクへの強い警戒です。
Gallupの2026年調査では、米国の投資家の63%が暗号資産を「非常にリスクが高い」と評価しています。さらに興味深いことに、現在Cryptoを持っている人でさえ47%が「非常にリスクが高い」と答えています。
つまり、Cryptoを持っている=Cryptoを安全だと思っている
わけではありません。
私の周囲でも、「Bitcoinは面白い」「将来性はあると思う」と話しながら、同時に「でも大きなお金を入れるのは怖い」と話す人は珍しくありません。
FTXの破綻、ハッキング、詐欺、価格の大きな変動。こうした記憶は、まだアメリカ人の心理に残っています。Pewの調査でも、暗号資産の現在の投資・取引・利用方法について、63%が安全性や信頼性に十分な自信を持っていません。 (2)
私は現在のアメリカ人のCryptoに対する心理を、「怖いが、無視できない」と表現するのが近いと思っています。
Cryptoは「銀行を倒すもの」ではなくなってきた
もう一つ、サンフランシスコにいて感じる変化があります。
数年前までCryptoには、「銀行はいらなくなる」「既存金融をBitcoinが置き換える」という少し反体制的なイメージがありました。
しかし、今は変わってきています。
実際、暗号資産保有者の87%がchecking account、67%がretirement accountも利用しています。そして45%は、Cryptoを保有する主な目的としてポートフォリオの分散を挙げています。
つまり、多くのアメリカ人は、「銀行かCryptoか」ではなく、「銀行も株も退職口座も使い、その中にCryptoも加える」という使い方を始めています。私はこれこそ、Cryptoが本当にメインストリームへ入っていく過程だと思います。
価格が下がっても、利用は消えなかった
今回のChainalysisのデータでもう一つ驚いたことがあります。2025年7月から2026年6月にかけて、暗号資産市場全体の時価総額は約50%縮小しました。
ところが世界のオンチェーン経済活動は、9.5兆ドルから9.4兆ドルへ、わずか1.6%の減少にとどまりました。
さらに100ドル未満の小口送金は78.4%増加し、100~1,000ドルの送金も58.6%増えています。 これは非常に重要です。
もしCryptoが完全に「値上がりを期待して買うだけの商品」であれば、価格が半分になったとき、利用ももっと大きく減っていたはずです。
しかし、そうならなかった。Cryptoが投資だけではなく、送金、決済、貯蓄、ステーブルコインなど、実際に使う金融インフラへ少しずつ変わっている可能性があります。
アメリカで次に必要なのは「認知」ではなく「信頼」
私はここが、これからのアメリカ市場を見るうえで最も重要だと思っています。Cryptoを知らないから普及しない時代は、終わりつつあります。
問題は「Trust」です。
調査を総合すると、2026年のアメリカは、約2割が一度はCryptoに触れ、約1割が現在保有する一方、大多数は依然として高リスクだと考えています。これは「Mass Adoption」というより、「Selective Normalization(選択的な一般化)」と呼ぶほうが近い状態です。 (2)
だからこそ、最近アメリカで進んでいる規制整備が重要になります。
ステーブルコインの制度整備、SECやCFTCの新しい取り組み、そしてCLARITY Actを巡る議論。これらは単にCrypto企業を規制する話ではありません。「普通のアメリカ人が安心してCryptoを使える環境を作れるのか」という問題でもあります。
世界2位から、本当の大衆化へ
今回、アメリカは世界2位の暗号資産市場として評価されました。しかし、私は順位以上に、その中身に注目しています。アメリカ人はCryptoを以前より身近に感じています。
一方で、まだ怖い。興味はある。でも、完全には信じていない。私は、この少し矛盾した心理こそ、今のアメリカを最もよく表していると思います。
そして次のCrypto市場を決めるのは、Bitcoinが10万ドルになるのか、15万ドルになるのかだけではないのかもしれません。「ハイリスクな投機資産」というイメージから、「安心して使える金融インフラ」へ移れるのか。
世界2位となったアメリカにとって、本当の意味でのMass Adoptionは、そこから始まるのだと思います。
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