予測市場Polymarket、日本市場参入へ向けて代表者を起用──2030年の規制認可を目標に【MCB FinTechカタログ通信】

2026年5月22日、世界最大級の予測市場プラットフォームを運営するPolymarketが、日本市場への参入に向けて代表者を起用し、2030年までの規制認可取得を目指していることが報じられました。日本事業を率いるのは、Solanaベースの分散型取引所アグリゲーターJupiterで日本責任者を務めてきたMike Eidlin氏です。

今回は、Polymarketが日本でどのような枠組みで参入を進めようとしているのか、そして日本の賭博規制と予測市場の位置づけについて解説します。

※本記事の内容は、マネックスクリプトバンクが週次で配信している、FinTech・Web3の注目トピックスを解説するニュースレター「MCB FinTechカタログ通信」の抜粋です。マネックスクリプトバンクが運営する資料請求サイト「MCB FinTechカタログ」にて、過去の注目ニュース解説記事を公開していますので、ぜひご覧ください。

Polymarketと予測市場の現在地

予測市場(Prediction Market)とは、選挙の結果や経済指標、スポーツの試合結果といった将来の事象が起きるかどうかをトークン化し、参加者が売買することで市場に「確率」を織り込ませる仕組みです。Polymarketは2020年に米国で設立された分散型予測市場で、Polygon上で動作するスマートコントラクトを通じて、ステーブルコインのUSDCを取引通貨として用いています。

Polymarketは2026年3月に約100億ドルの月間取引高を記録し、予測市場として世界最大の規模に達しました。世界全体の予測市場の取引高についても、2026年通年では2,400億ドルに達するとの予測がBernsteinから示されています

こうした規模拡大の背景には、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の親会社であるIntercontinental Exchange(ICE)からの大型出資があります。ICEは2025年10月に最大20億ドルの戦略出資を発表し、2026年3月に同枠内で追加の6億ドルを投資する形で同合意を完了しました。

この出資に伴い、ICEはPolymarketの機関投資家向けイベント連動データの独占プロバイダーとなっており、2026年2月にはこれを基にしたデータツール「Polymarket Signals & Sentiment」の提供を開始しています。

事業面では、Polymarketは2026年3月に最大1.80%の手数料体系を導入し、収益化に踏み込みました。米国市場については、2025年7月にCFTC登録の取引所・清算機関QCEXを1.12億ドルで買収しました。さらに同年11月にはCFTCから改定指定命令(Amended Order of Designation)を受け、仲介事業者経由での米国市場アクセスを開始しています。

RobinhoodやCoinbaseも予測市場に参入しており、業界はネット証券・暗号資産取引所・専業プラットフォームによる構造に再編されつつあります。

日本市場参入の枠組みと2030年承認目標

Polymarketの日本事業を率いるMike Eidlin氏は、これまでSolanaベースの分散型取引所アグリゲーターJupiterで日本責任者を務めてきました。日本のWeb3コミュニティとの接点と、暗号資産に関する規制実務の両方を持つ立場での起用です。

Bloombergの報道によれば、Eidlin氏の役割は日本の弁護士、業界団体、規制当局者・政策担当者と連携し、予測市場の合法化に向けた制度設計を進めることに置かれています。Polymarketは2030年までの日本市場における認可取得を目標として掲げており、短期のライセンス取得やユーザー獲得ではなく、長期の働きかけを前提とする参入戦略を取っていることが分かります。

現状、Polymarketは日本を含む33カ国を利用制限の対象としています。ただしIPアドレスでのアクセス自体は遮断されておらず、日本からは取引画面のみが制限される閲覧専用モードとなっています。

Polymarket自身はEidlin氏の起用について公式発表を行っておらず、CoinDeskの取材にも個別コメントを控えています。今回の動きは、Bloombergが関係者への取材を通じて報じたものであり、日本市場の制度設計に対する関与をすでに進めている段階にあると見られます。

日本の予測市場規制と海外プレイヤーの動向

日本では刑法第185条が金銭を伴う賭博を原則として禁止しており、違反には50万円以下の罰金または科料が科されます。例外として認められているのは、競馬・競輪・競艇・オートレースの公営競技、宝くじ、スポーツくじ(toto・BIG)、IR整備法に基づく特定複合観光施設に限られます。

これらはいずれも個別法による特例として位置づけられており、新しい賭けの仕組みを合法化するには立法措置を伴うのが原則です。

米国では、予測市場の規制対応は事業者によって異なります。Kalshiは設立当初からCFTC登録のイベント契約事業者として連邦法のもとで運営してきましたが、テネシー州・ネバダ州・ウィスコンシン州など複数州との間で差止命令や訴訟を巡る係争状態にあります。Polymarketは2022年に無認可運営として米CFTCから140万ドルの制裁を受けた後、2025年にCFTC登録の取引所QCEXを買収する形で米国市場に復帰しました。日本での参入にあたっては、金融商品取引法の枠組みに乗せるのか、それとも個別法による特例化を目指すのかが論点となります。

考察

2030年という4年以上先の認可目標は、Polymarketが制度設計の段階から関与する、長期的な働きかけを前提とする参入を志向していることを示しています。日本の予測市場合法化に向けた論点は、新たな金融商品カテゴリの創設か、公営競技に類する個別法による特例化のいずれかに集約されると考えられます。Eidlin氏という暗号資産業界経由の人材を起用したことから、Polymarket側は金融商品取引法寄りの議論を志向している可能性があります。

日本では公営競技がすでに数兆円規模の成熟市場として存在しており、予測市場が参入する場合は既存事業者との競合・補完関係をどう設計するかが課題となります。参考になるのは、2010年代のIR(特定複合観光施設)関連法の立法プロセスです。当時、海外事業者の日本市場参入に向けた制度設計議論が、ギャンブル等依存症対策基本法とセットで数年がかりで進められました。

社会的合意形成の観点では、依存症対策・未成年保護・市場操作対策といった公営競技で確立された運用ルールを、暗号資産ベースの分散型プラットフォームにどう適用するかという技術的・制度的な接続問題が残ります。

Polymarketの参入計画は、日本市場における長期的な働きかけから始まる可能性が高いと推測されます。今後の進展は、日本のWeb3規制全体の方向性、特に「分散型プラットフォームに対する責任主体の明確化」という以前から議論されている論点にも影響を与える可能性があります。

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