暗号資産(仮想通貨)専業11年目の墨汁うまい(@bokujyuumai)です。イーサリアム(ETH)やビットコイン(BTC)などの暗号資産にはパーペチュアルコントラクトという独特なデリバティブ商品があり、10年前から人気を博しています。
一方で老舗のビットメックス(BitMEX)がサービス終了を発表するなど、時代の変化が著しいことがわかります。本稿ではビットメックス閉鎖から見る暗号資産業界の変化についてわかりやすく解説を行います。
老舗暗号資産デリバティブ「ビットメックス」が閉鎖
2014年から暗号資産(仮想通貨)デリバティブ取引所として運営されてきたビットメックス(BitMEX)の公式発表によると、「BitMEX Exchange」は2026年9月23日04:00 UTCをもって閉鎖される。これに伴い新規口座登録は即時停止され、8月26日04:00 UTCからはリスク制限により新規ポジションの作成ができず、既存ポジションの清算のみ可能となるとしているのです。
BitMEXは2017年頃から「最大100倍のレバレッジ」をかけられるパーペチュアルコントラクト(無期限先物)として世界中で人気を博し、暗号資産デリバティブ市場を切り開いた老舗取引所として知られていました。12年以上の運営でハッキングによる顧客資産の損失が一度もなかった一方、事業と暗号資産業界全体の規制見直しなどにおける影響を理由に閉鎖を決定したのです。今回は、かつて市場を代表したBitMEXがなぜ閉鎖に至ったのか、取引所を取り巻く環境の変化とともに見ていきましょう。
2017年のビットメックス全盛期
ビットメックスは元々香港を拠点とした暗号資産デリバティブ取引所として知られており、運営会社はセーシェル共和国で登録されていました。2016年5月13日に暗号資産で高い人気を誇る「パーペチュアルコントラクト(無期限先物)」をローンチし、最大で100倍のレバレッジかつ従来の先物としての満期はない代わりに、ファンディングレートで現物への乖離を防ぐという画期的なモデルで一躍人気となりました。
これが今日のハイパーリキッド(Hyperliquid: $HYPE)やイーサリアム上のL2上などにも展開されるいわゆる「レバレッジDEX」の原型となったわけです。
実際にはビットフライヤー(bitFlyer)が2015年11月24日にローンチした旧Lightning FXも差金決済(CFD)ベースの類似パーペチュアルコントラクトと言えますが、当時は現物価格にペッグさせる仕組みがなかったため、ビットメックスがパーペチュアルコントラクトの元祖といえるでしょう。
2016年に人気を博したパーペチュアルコントラクトですが、2017年から2018年の暗号資産バブルにおいて、需要増加による混雑、レバレッジが当時最大15倍だったことなどもあり、ビットメックスへユーザーが流れたことで世界最大のパーペチュアル取引所となったのです。
パーペチュアルコントラクトはスタンダードへ
その後バイナンス(Binance)などもこのパーペチュアルコントラクトを取り入れたことで、暗号資産全体で先物のように限月管理が不要なパーペチュアルは人気を博し、現在の暗号資産のスタンダードとなったわけです。
2018年、コインチェックやザイフのハッキングが重なって暗号資産バブルの崩壊となった後、イーサリアム上で売買や貸付/借入を行ういわゆる「DeFi(分散金融)」が人気を博すようになりました。
この頃にイーサリアム上にローンチしたのが「dYdX」であり、レバレッジをかけられるDEX(分散取引所)であり、2020年にはパーペチュアルコントラクトをイーサリアム上でローンチ。2021年にイーサリアムL2としてスタークウェアが提供していたStarkExをベースにしたdYdXのL2をローンチし、$DYDXトークンを1アカウント平均500万円~という高額となるケースもあったエアドロップをしたことでDEXへの移行が本格的に始まったという流れです。
そしてイーサリアムエコシステム上でコントラクトを使用するというのがスタンダードとなり、オンチェーン金融という新たな時代としてハイパーリキッドが人気を博しているのが現状です。
これらを考慮するとビットメックスは元祖として立役者となった一方、時代の流れによって廃れてしまったことがわかるでしょう。
クラリティ法から規制回避は通用しない時代へ
7月末現在、米国では暗号資産の規制枠組みとなる「クラリティ法(Clarity Act)」の可決に向けて、ドナルド・トランプ大統領の共和党と与野党・民主党との政治対立となっており、本会議投票が夏季休会となる8月7日がデッドラインとなっています。
このクラリティ法が可決すれば米国は暗号資産推進派のトランプ大統領が求める、まさにブロックチェーンにおける世界のリーダーという立ち位置を示すことができ、暗号資産の地位も明確に法律上で確立されることになるわけです。
ステーブルコインを規制するジーニアス法は既に可決しており、テザー社もそれに合わせてジーニアス法準拠の$USATを2026年1月27日にローンチ。すなわち既にタックスヘイブンにおける規制回避手法は効かない時代へとシフトしていることになります。
既にブラックロックやフィデリティなどによるイーサリアムETFやビットコインETF、トレジャリー企業やさらにはCMEのような規制された先物デリバティブ市場により、機関投資家の需要は既に満たしているわけです。
そうなるとビットメックスは創業者であり、元CEOのアーサー・ヘイズ氏の人気があったとしてもビジネスとしてスケールするほどの需要を満たせない時代となったということになるでしょう。
関連記事:【墨汁うまい氏寄稿】トランプ大統領が暗号資産規制のクラリティ法成立へ動く、米上院との非公開協議で何が変わるのか?
米国の暗号資産推進は日本へも強い影響を与えた
また日本では2017年の資金決済法での暗号資産の規制後、2018年のコインチェックの巨額ハッキングとさらには2024年DMMビットコインのハッキングと廃業から総合課税による最大55%の課税から20.315%となる分離課税への移行が難しくなっていました。
一方で2025年にトランプ政権が誕生し、暗号資産推進派として米国証券取引委員会(SEC)の根本的人員整理、イーサリアムやビットコインを含む暗号資産準備金設立などの改革を次々に進めてきたことで国内でも金融商品取引法、いわゆる金商法での規制繰り上げが現実的となったのです。
2026年7月15日、暗号資産(仮想通貨)の規制を金融商品取引法の対象とする改正法案が参議院本会議で可決され、成立したのはまさにトランプ政権のお陰であるということになります。
これらを考慮すると、今後世界中でクラリティ法をベースにした法的枠組みが作られ、各国からの規制回避プロダクトへのアクセスはできなくなり、結果的にビットメックスのような閉鎖に追い込まれることが予想できるわけです。すなわち暗号資産市場における次のステップであり、これら規制を受け入れ健全な市場を構築していく年となるでしょう。
|画像:Adobe Stock


