CryptoQuant CEO「ビットコインの弱気相場は夏に終わった」──新しいサイクルを示す“買い手”の変化【エックスウィン】

●CryptoQuant CEOのKi Young Ju氏は、ビットコインの弱気相場は今夏に終了し、現在は新しい強気サイクルの初期段階にあるとの見方を示した。
●注目すべきは「3〜5倍」という価格予想だけではない。新規資本の流入、古参クジラの売り圧力低下、ETF、カストディウォレットなど、ビットコインの「買い手」そのものが変化している。

CryptoQuant CEOが語った「新しいサイクル」

筆者はCryptoQuantでオンチェーン分析を発信するアナリストとして活動しており、同社Founder & CEOのKi Young Ju氏とも日頃からコミュニケーションを取り、市場について情報交換している。

そのKi氏が、Bitcoin MagazineのYouTube番組「BMTV」で現在のビットコイン市場について非常に興味深い話をしていた。Ki氏の見方は明確だった。「ベアマーケットはこの夏に終わった。現在は新しいサイクルの初期段階にある」その根拠は、単純な価格上昇ではない。

まずKi氏が挙げたのが「Fresh Capital」、つまり新しい資本の流入だ。Realized Capなどを見ると、新しい資金がビットコイン市場へ入り始めている。

同時に、これまで利益確定を続けてきた古参のクジラ、いわゆるOG Whalesの売りが弱まっている。さらに先物市場では、大口投資家が底値付近で大きなロングポジションを構築した動きも確認されたという。

「新しい資金が入る」「古い保有者が売るのをやめる」「大口が再びポジションを取る」。この組み合わせをKi氏は重要視している。

次のサイクルは『10倍』ではなく3〜5倍

今回、特に注目を集めているのが、Ki氏の「3〜5倍」という発言だ。Ki氏は、今回のサイクルでは過去のような10倍を超える放物線的な上昇ではなく、サイクルの安値から3〜5倍程度の上昇になる可能性を想定している。

理由の一つは、市場が成熟していることだ。

その変化を象徴するのが、MVRV(Market Value to Realized Value)である。MVRVは、ビットコインの時価総額と、各BTCが最後に移動した価格を基に算出するRealized Capを比較し、市場全体がどの程度の含み益・含み損を抱えているかを見る指標だ。

Bitcoin price (black) and MVRV ratio (purple) over time from 2012 to 2026, with price on the left axis and value scale on the right.

長期チャートを見ると、過去のサイクルではMVRVが4〜5を超えるような極端な水準まで上昇し、市場参加者全体が大きな含み益を抱えた後、激しい利益確定が起きることがあった。

しかし、そのピークは徐々に低下している。2013〜14年には5を超え、2017〜18年は4台、2021年は4前後まで上昇した一方、直近のサイクルではピークがおおむね2台半ばにとどまっている。

下落局面でも、過去にはMVRVが1を大きく下回り、市場全体が深い含み損となる局面が繰り返されたが、直近ではそうした極端な動きも限定的だ。つまり、ビットコイン市場は上昇時の過熱も、下落時の悲観も、以前ほど極端ではなくなっている可能性がある。

これはKi氏が今回語った「今回のサイクルでは極端な動きが穏やかになっている」という見方とも一致する。

だからこそKi氏は、過去のような「10倍上昇、その後80%下落」というサイクルではなく、3〜5倍程度の上昇と、より穏やかな調整を想定している。

PnL Indexが示しているのは「転換点」

ここで重要なのが、CryptoQuantのPnL Indexだ。

PnL Indexは、長期・短期保有者のSOPRなど複数のオンチェーン指標を組み合わせ、市場参加者の利益・損失状態を一つの指標として捉えるものだ。Ki氏は今回、このPnL Indexを見ても複数の指標で重要な変曲点が現れており、「ブルランは始まったばかり」との見方を示した。

Bitcoin PnL index signal (365-day moving average, purple) over time plotted against price (gray) from 2012 to 2026, showing cyclic peaks and troughs and MA crossovers.

ここは少し注意して見る必要がある。365日移動平均そのものが、すでに明確な上昇トレンドへ転換したという意味ではない。

筆者の理解では、Ki氏が見ているのは一つの線だけではなく、利益確定、取得価格、クジラ、新規資本など複数のオンチェーン指標で同時に「変化」が起き始めていることだ。

つまり、「長期指標がすべて強気になった」のではなく、「市場内部では、強気相場へ移行するための変化がすでに始まっている」と捉える方が適切だろう。

数十億ドルが入っても価格が動かなかった理由

Ki氏の話の中でも、筆者が特に重要だと思った部分がある。新しい資本が市場に流入する一方、その反対側では古参のクジラが利益確定していた。つまり、新規の買い手と既存の大口保有者の間で、大規模なビットコインの「持ち手の交代」が起きていたということだ。

大量の資金が入っているのに価格が大きく上昇しない局面があったのは、需要が弱かったからとは限らない。

新しい需要が、古い保有者から出てくる大量の供給を吸収していた可能性がある。この「Change of Hands」は非常に重要だ。そしてKi氏は、新しい機関投資家の資金がその供給を吸収し続けている可能性を見ている。

ETFは重要だが、「誰が買っているか」は分からない

ETFについてのKi氏の発言も興味深かった。ETFへの資金流入は改善している。さらにKi氏が注目しているのが、ETF投資家の平均取得価格だ。文字起こしでは8万ドル台付近の取得コストについて言及しており、ビットコイン価格の回復によって、ETF投資家全体が再び含み益の状態に戻ってきたと説明している。

ただしKi氏は、「ETFの買い手がなぜ買っているのかは分からない」とも話している。これが重要だ。ETFへの資金流入だけを見て「機関投資家が強気になった」と断定することはできない。そこで必要になるのが、オンチェーンデータである。

Accumulation Addressesへの流入が増えている

Line chart showing BTC price with daily inflows to accumulation addresses and volume spikes (2024–2026).

そこで注目したいのが、Accumulation AddressesへのBTC流入だ。CryptoQuantの「BTC: Inflows to Accumulation Addresses」を見ると、2025年後半から流入が徐々に増え、2026年に入ってからも高い水準が続いている。特に直近では大きな流入スパイクが確認され、30日移動平均も上向いている。

これは、短期的な売買ではなく、BTCを蓄積する特徴を持つウォレットへの流入が強まっている可能性を示している。もちろん、この指標だけで「誰が買っているのか」を特定することはできない。また、Dynamic Cohortのため、対象となるウォレット群は日々更新される。

それでも、Ki氏が今回強調した「Accumulation Walletを見ることが重要」という考えを確認するうえでは、非常に興味深いデータだ。

これから重要になる「カストディウォレット」

ビットコイン市場は、かつての個人投資家中心の市場から大きく変わっている。個人投資家は暗号資産取引所を利用することが多い。一方で機関投資家は、Primeサービスやカストディサービス、マーケットメーカーなどを経由してビットコインを取得する。その後、購入したBTCがカストディウォレットへ移されることも多い。

だからこそKi氏は、「これからはCustodial Flowsを見ることがより重要になる」と話している。Accumulation Walletへの流入や、ブローカー・取引所からカストディウォレットへの資金移動を見ることで、「誰なのか」を完全に特定できなくても、どのような投資家層が買っているのかを推測することができる。

実際、米国のカストディサービスに関連すると考えられるウォレットの活動も活発になっており、最近の需要には機関投資家タイプの資金が関係している可能性をKi氏は示唆している。

単純な「クジラ対個人」の時代は終わった

この話は、今後のビットコイン分析にとって非常に大きな意味を持つ。

かつては、

古参クジラが売る。
個人投資家が買う。
過熱すると暴落する。

という比較的単純な構図でも市場を説明できた。

しかし現在は違う。

ETF、カストディ、マーケットメーカー、機関投資家、OTCなど、流動性が複数の経路に分散している。Ki氏自身も、以前のような「OG WhalesとRetail」だけで説明できる単純なサイクルは終わりつつあり、マクロ経済や規制など、オンチェーンの外側にある要因も考える必要があると話している。

では、相場の天井はどう見つけるのか

Ki氏が天井判断で重視しているのも、価格そのものではない。「Behavioral」、つまり市場参加者の行動だ。クジラが取引所へBTCを送り始める。個人投資家が再び取引所へ殺到する。MVRVなどの利益指標が極端な水準へ近づく。

こうした行動変化が、過熱を判断する材料になる。ただし今回のサイクルでは、MVRVを含めた上下の極端さそのものが以前より小さくなっているとKi氏は指摘している。市場が伝統金融と接続したことで、「明確なバブルの頂点」を判断すること自体が難しくなっている可能性がある。

4年サイクルはまだ無視できない

ETF時代になり、「ビットコインの4年サイクルは終わった」という議論もある。これについてKi氏は、完全に否定しているわけではない。特にマイナーの収益性や採掘コストという観点では、4年サイクルの考え方にはまだ意味があると話している。

半減期によってマイナーを取り巻く経済条件が変化する以上、供給側から見た4年周期は依然として市場に影響を与える。ただし、その結果が過去と同じ「10倍上昇→80%暴落」になるとは限らない。市場構造そのものが変わっているからだ。

筆者の考察──「3〜5倍」より重要なこと

今回のインタビューで一番目立つ数字は「3〜5倍」だろう。しかし筆者は、そこだけを切り取るべきではないと思っている。重要なのは、その予想に至った市場構造の変化だ。

新しいキャピタルが入っている。古参のクジラが売らなくなっている。先物の大口投資家が再び動いている。ETFへの資金流入が改善している。Accumulation Walletやカストディウォレットに新しい動きが出ている。

つまり、買い手が変わり始めている。

これこそ、今回のKi氏の発言で最も重要な部分ではないだろうか。もちろん、だからといってビットコインがここから一直線に上昇するわけではない。現在の市場は、オンチェーンだけでは説明できないほど複雑になっている。金利、流動性、景気、規制、ETFフローなども同時に確認する必要がある。筆者も今後、単純に「価格が上がった、下がった」ではなく、

誰が買っているのか。
誰が売るのをやめたのか。
新しい資本は入り続けているのか。

この3点を中心に、ビットコイン市場を追っていきたい。今回のKi Young Ju氏の発言は、「ビットコインは3〜5倍になる」という予言ではない。むしろ、ビットコイン市場が、個人と古参クジラ中心の市場から、ETF・機関投資家・カストディを含む新しい市場へ移行しつつある。その構造変化を示した発言として捉えるべきだろう。

ショート動画

ビットコインの弱気相場は終わった? CryptoQuant CEOが語る「新サイクル」
https://youtube.com/shorts/LPjclReGrPc

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