欧州中央銀行(ECB)のChristine Lagarde(クリスティーヌ・ラガルド)総裁が、暗号資産(仮想通貨)取引所Binance(バイナンス)による欧州連合(EU)域内の認可取得を止める方向で個人的に介入した。米紙The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル、WSJ)が9月18日に報じた。
バイナンスは、ギリシャ資本市場委員会(HCMC)を通じて、EUの暗号資産市場規制(MiCA)に基づく認可を申請していた。しかし、同社は6月24日に申請を取り下げ、別のEU加盟国で認可取得を目指す方針を示した。
MiCAの移行期間は7月1日に終了した。未認可事業者は原則として新規顧客の受け入れや勧誘を停止する必要がある。
しかし、9月4日時点でも、バイナンスは未認可のまま一部のEU顧客へのサービスを続けていた。同社は、顧客が自発的に利用を求めた場合に限ってサービスを提供できる「リバース・ソリシテーション」の例外規定を根拠としていた。
その後、9月18日のWSJの報道で、バイナンスがギリシャで申請を取り下げるまでの経緯が伝えられた。ギリシャ当局は5月下旬までに、バイナンスへ申請手続きが完了したと伝えていたとされる。同社も認可を見込み、発表の準備を進めていたという。
ところが、ギリシャの規制当局幹部はその後、バイナンスに対し、ラガルド総裁が認可判断の延期を望んでいると説明した。暗号資産事業者の認可権限を欧州証券市場監督機構(ESMA)へ移す改革が実現するまで、判断を保留する意向だったという。
ギリシャでの認可が重視されたのは、同国だけでなくEU市場全体への参入につながるためだ。MiCA第65条は、「暗号資産サービスの越境提供」(通称:EUパスポート制度)を定めている。事業者は1つの加盟国で認可を得て所定の通知を行えば、別の加盟国に拠点を置かずにEU域内でサービスを提供できる。
認可を判断するのは各加盟国の主管当局であり、欧州中央銀行(ECB)に正式な権限はない。ただ、ラガルド総裁は、バイナンスのEU進出によってドル建てステーブルコインの利用が広がり、デジタルユーロやユーロ建て決済手段の普及を妨げることを懸念していたとされる。
バイナンスの過去のコンプライアンス問題も焦点となった。
バイナンスは2023年、マネーロンダリング対策や制裁規制などを巡る米国の刑事事件で有罪を認めた。創業者のChangpeng Zhao(チャンポン・ジャオ)氏も、有効なマネーロンダリング対策プログラムを維持しなかったとして銀行秘密法(BSA)違反を認めた。
ESMAもこうした問題を懸念し、申請を認めないよう各国当局へ非公開で助言していたとされる。バイナンスは憶測にはコメントしないとした上で、MiCA認可の取得と欧州での事業継続に取り組む方針を示したという。
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|文:平木 昌宏
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