・グレースケールのZcash上場投資信託(ETF)「ZCSH」は8月25日、NYSEアーカで取引を開始した。これにより、投資家は証券口座を通じてジーキャッシュ(ZEC)の現物価格に連動する商品へ投資できるようになった。
・ZECは上場を前に急騰したものの、その後約7%下落し、典型的な「事実売り」の展開となった。
・デリバティブ市場の未決済建玉は13.36%減の16億2000万ドルとなった。清算総額は1119万ドルに達し、その大半をレバレッジのかかったロングポジションが占めた。
グレースケールのZcash ETFが取引開始、ZECに「事実売り」の圧力
ZEC価格は8月25日(火)、グレースケールによるZcash ETFの正式な提供開始を受けてトレーダーが利益確定に動いたことで、7%下落した。
ティッカーシンボル「ZCSH」のZcash ETFはNYSEアーカで取引を開始し、ZECの現物価格への投資機会を提供する世界初の上場取引型商品となった。この商品は、グレースケールが長年運用してきたZcash Trust(ジーキャッシュ・トラスト)を上場商品へ転換したものだ。前身の商品は2017年10月、私募形式で提供が開始された。

ZCSHを利用すれば、投資家は一般的な証券口座を通じてZECに投資できる。そのため、裏付けとなる暗号資産(仮想通貨)を自ら購入し、保管・管理する必要がない。転換前、同ファンドの運用資産は3億1300万ドルを超えていた。公表情報によると、年間スポンサー手数料は2.5%となっている。
グレースケールは、金融監視が2026年も大きなリスクであり続ける状況を踏まえ、ジーキャッシュのプライバシー機能と今後の重要性を、この商品の訴求点としている。
グレースケールのSteve Vanourny(スティーブ・ヴァナーニー)インデックス部門責任者は、「AIによって金融活動の監視方法が変わるなか、真の金融プライバシーに対する需要は今後さらに高まると考えている」と述べた。
ジーキャッシュは2016年に誕生した。ビットコイン(BTC)に似た通貨としての特性を持ちながら、取引のプライバシー機能を任意で利用できる。
発行上限は2100万枚で、コンセンサス方式にはプルーフ・オブ・ワーク(PoW)を採用している。シールド取引を利用すれば、ネットワーク上で取引の正当性を検証できる状態を保ちながら、送信者、受信者、取引額を秘匿できる。
米政府がOperation Economic Outcast(オペレーション・エコノミック・アウトキャスト)のもとでイランとその支援者・取引関係者への制裁を強化したことで、金融上の制限や検閲に注目が集まっている。また、日本人であるTomoko Akane(赤根智子)国際刑事裁判所(ICC)所長に対する米国の制裁も、米国の金融制裁が国外にまで過度に及んでいるとの議論を強めている。
こうした動きを受け、金融プライバシーの重要性や中央集権型の金融インフラへの依存を問題視する市場の議論が、今週さらに強まっている。
ETF上場後にZECが800ドルを割り込み、強気筋に1000万ドル規模の清算
グレースケールのZEC ETFが上場するのを前に、ZECは週間で45%、過去30日間で約70%上昇し、約8年ぶりの高値となる890ドル近辺まで値を伸ばしていた。
しかし、火曜日のZECの値動きは、典型的な「噂で買い、事実で売る」展開となった。ZECは8月26日午後2時(日本時間)までに780ドル近辺へ急落し、24時間で7%安となった。
この調整により、先物市場の強気筋は不意を突かれた。ZECデリバティブの取引高は2.77%増の49億8000万ドルとなった一方、未決済建玉は13.36%減の16億2000万ドルとなった。取引高が増えるなかで未決済建玉が減少したことから、トレーダーが積極的にポジションを手じまっていたと考えられる。

コイングラスのデータも、この見方を裏付けている。過去24時間の清算総額1119万ドルのうち、ロングポジションの強制清算は952万ドルに上り、全体の85%を占めた。ロング・ショート比率も0.9608となり、ロングに対してショートがわずかに優勢だったことを示している。
未決済建玉は、13.36%減の16億2000万ドルという報告値に基づけば、約2億5000万ドル減少したことになる。その減少率は、現物価格の7%下落を上回った。この動きは、弱気なポジションが大量に積み上がったというより、レバレッジをかけたロングポジションが整理された可能性を示唆している。現物需要が戻れば、次の上昇局面に向けて、より健全な地合いが整う余地がある。
ZEC価格予測:シャンデリア・イグジットが示す強気構造は維持
ETFを材料とする反落によってZECは888ドルから788ドルまで下落したものの、米国時間の水曜日の取引を控えた時点でも、テクニカル面の強気構造はおおむね維持されている。
シャンデリア・イグジットは8月20日ごろ、ZEC価格を下回る位置でクロスを形成した。この強気のクロスは、グレースケールのETF上場への期待が高まった時期と重なった。記事では、米財務省が発表した長期国債の買い戻し拡大方針と合わせ、ZECの上昇を支える二つの材料になったとの見方を示している。
シャンデリア・イグジットは、価格変動率に応じて動く下値支持線を示す指標だ。調整局面でもクロスが維持され、価格が同指標を大きく上回って推移している場合、トレーダーは現在の上昇トレンドが維持されているシグナルと判断することがある。
さらに、直近の調整局面では取引高がわずかに減少していた。最初の上昇局面で大幅に増加した取引高と比べると、売りの勢いがそれほど強くない可能性を示している。

上昇の勢いは鈍化したものの、依然として高い水準にある。14日間RSIは72.68で、直近につけた90近辺の極端な水準から低下している。
RSIは、直近の値動きの強さと速さを測る指標だ。RSIがなお高い水準にあることから、直近の下落後もZECは買われすぎの領域にとどまっていることが分かる。
これは、トレーダーが利益を確定する一方、強気姿勢を完全には崩していない可能性を示唆している。
強気派にとっては、800ドルを回復すれば、目先の上昇モメンタムが戻ることになる。
890ドル付近に形成された直近の抵抗帯を上抜ければ、次の心理的な節目である900ドルが視野に入る。特に、現物市場の取引高が高水準を維持した場合、その可能性はさらに高まる。
下値の重要な水準は735ドル付近だ。現在、シャンデリア・イグジットがこの水準で下値支持線として機能している。日足終値が継続して735ドルを下回れば、強気の市場構造は弱まることになる。
それまでは、調整局面での取引高が比較的少ないこと、デリバティブ市場のレバレッジが縮小したこと、そしてZEC価格がシャンデリア・イグジットの水準を大きく上回っていることから、ETF上場後に「事実売り」が起きたとはいえ、上昇トレンドは依然として維持されていると考えられる。


