ビットコインは直近、再び8万ドルの節目を試したものの、上値を維持できずに押し戻された。
米国の現物ビットコインETFへの資金流入や、米長期金利の低下を背景に買い需要は回復している。それでも8万ドル付近では売り圧力が強く、上昇が一度では定着していない。
オンチェーンデータを見ると、今回の上値の重さは単なるテクニカルな抵抗ではない。価格急騰によって長期保有者から直近の新規投資家まで幅広い層が利益圏に入り、利益確定できる投資家が急増したことが関係している。
8万ドル付近で買いと売りが衝突
ビットコインは7月後半から上昇基調を強め、8月には8万ドル付近まで回復した。上昇局面では出来高も増えており、今回の動きが薄商いだけで形成されたものではないことが分かる。
上昇を支えた要因の一つが、米国の現物ビットコインETFへの資金流入だ。8月20日には約6億600万ドルの純流入を記録し、その前後でも数億ドル規模の資金が流入した。
一方、8万ドルは心理的な節目であると同時に、安値圏から保有してきた投資家が利益確定を判断しやすい価格帯でもある。
現在は、新たに市場へ入る機関投資家や短期資金の買いと、既存保有者の利益確定売りが、8万ドル付近でぶつかっている状態だ。
すべての投資家層が利益圏へ浮上

保有期間別の含み損益を見ると、今回の急騰によって市場の状態が大きく改善している。
直近では、6カ月以上保有する長期保有者の含み損益を示す指標が21.1、6カ月未満の短期保有者が13.4、直近1日から1カ月の新規資金が13.9、直近1週間の投資家も5.3まで上昇した。
つまり、長期保有者だけでなく、高値圏で参入した新しい投資家まで含めて、ほぼすべての層が利益圏に入っている。
これは市場の健全性という点では強気材料だ。損失を抱えた投資家による投げ売りが起きにくく、調整時にも一定の保有継続が期待できる。
しかし、含み益の拡大は同時に、利益確定売りの潜在的な余力が増えたことも意味する。特に長期保有者は最も大きな含み益を抱えており、8万ドルのような節目では保有分の一部を売却する動機が強まりやすい。
上昇局面では長期保有者の利益実現も

実際に売却されたビットコインの損益状況にも変化が見られる。
SOPR Ratioは、長期保有者のSOPRを短期保有者のSOPRで割った指標だ。1を上回る場合は、長期保有者が短期保有者より相対的に高い利益率でコインを売却していることを示す。
今回、ビットコインが8万ドルへ接近する過程で、この比率は一時1.4付近まで上昇した。価格上昇によって含み益が拡大した長期保有者の一部が、実際に利益を確定した可能性を示している。
ただし、直近の比率は0.93まで低下した。現在も長期保有者の利益確定が一方的に加速しているというより、足元では短期保有者の実現損益が相対的に上回る状態へ変化している。
なお、SOPR Ratioは売却されたBTCの「量」そのものを示す指標ではない。そのため、大口売りの規模を断定することはできないが、8万ドル接近時に長期保有者の利益実現が強まった可能性を示す補助材料となる。
75,000~76,000ドルが重要な分岐点
テクニカル面では、8万ドルが引き続き強い抵抗帯となっている。
一時的に8万ドルを超えるだけでは、ブレイクアウトとは判断しにくい。ETFへの資金流入と現物買いを伴いながら、日足や週足で8万ドルを維持できるかが重要になる。
明確に定着した場合は、ショートカバーを巻き込みながら、次の抵抗帯となる8万8,000~9万ドルを試す展開が考えられる。
一方、下値では7万5,000~7万6,000ドルが目先の重要なサポートだ。この水準を維持できれば、現在の下落は上昇トレンド内の調整と判断しやすい。
反対に、7万5,000ドルを明確に割り込んだ場合は、短期保有者の含み益が縮小し、利益確定売りが損切りへ変化する可能性がある。オンチェーン上の投資家心理が悪化すれば、7万~7万5,000ドルの出来高集中帯まで調整が広がることにも注意が必要だ。
8万ドル突破に必要な3つの条件
ビットコインが8万ドルを明確に突破するためには、次の3つが必要になる。
第一に、ETFを通じた現物需要が継続し、長期保有者の利益確定売りを吸収すること。
第二に、先物市場のレバレッジだけに依存せず、Coinbase Premiumなどに米国投資家の現物買いが表れること。
第三に、8万ドル到達後も価格が維持され、短期保有者がすぐに利益確定へ動かないことだ。
逆に、ETF流入が鈍化するなかで資金調達率や未決済建玉だけが上昇すれば、先物主導の不安定な上昇となり、清算を伴って反落するリスクが高まる。
今後考えられる3つのシナリオ
最も可能性が高いのは、7万5,000~8万ドルを中心に上下する中立シナリオだ。ETF需要が下値を支える一方、含み益を抱える既存保有者の売りが上値を抑える展開が想定される。
強気シナリオでは、ETF流入の継続や米長期金利の低下を背景に、現物需要が利益確定売りを吸収する。8万ドルを明確に突破・維持できれば、8万8,000~9万ドルが次の上値目標になる。
弱気シナリオでは、ETFからの資金流出や米長期金利の再上昇をきっかけに7万5,000ドルを割り込む。短期保有者の含み益が失われ、利益確定から損切りへ売りの性質が変われば、下落が加速する可能性がある。
重要なのは「8万ドル到達」より売りを吸収できるか
今回のオンチェーンデータは、ビットコイン市場が弱気一辺倒の状態から脱し、幅広い投資家が利益を持てる段階まで回復したことを示している。
一方で、市場全体の含み益が増えたからこそ、8万ドル付近では利益確定売りも出やすくなっている。
今後の焦点は、単に8万ドルへ到達するかではない。長期保有者と短期保有者の売りを、ETFや新規の現物需要が継続的に吸収できるかである。
上値では8万ドル、下値では7万5,000~7万6,000ドル。この間で誰が売り、誰が買っているのかを確認することが、次の方向を判断するうえで重要になる。
ショート動画
ビットコイン、なぜ8万ドルで止められる?オンチェーンが示す売り手の正体
https://youtube.com/shorts/uFKWNyv0rmg


