・イーサリアム(ETH)は米雇用統計(NFP)発表後の上昇分の大半を失い、水曜日に発表される米消費者物価指数(CPI)を控えて1,850〜1,880ドルのレンジで推移している。
・BitMineとSharpLinkによる企業の財務資産としてのETH購入が、ETFへの資金流入の弱まりや、ステーキング報酬を巡る議論による市場心理の悪化を補っている。
・オンチェーン指標ではネットワーク活動の活発化が確認されており、長期保有者による売り圧力の低下も、長期的な強気見通しを支えている。
ETH、NFP後の上昇が失速 市場は重要な米CPIに注目
ETHは先週金曜日、予想を下回る米労働市場統計を受けて1,942ドルまで上昇した。しかし、その後は水曜日に発表される7月の米消費者物価指数(CPI)へ投資家の関心が移り、上昇分を徐々に失った。
ETHは8月7日にCoinbaseで一時1,942ドルまで上昇したものの、その後は反落。1,850〜1,880ドルのレンジでもみ合った後、水曜日の取引を約1,887ドルで開始した。
当初の上昇は、米労働統計局(BLS)が発表した予想外に弱い非農業部門雇用者数(NFP)を受けたものだった。7月の非農業部門雇用者数は前月比2万3000人減少し、8万〜9万5000人程度の増加を見込んでいた市場予想を大きく下回った。

労働市場の弱さを受け、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が追加利上げにより慎重になるとの見方が強まった。
金曜日の統計発表後、CMEのFedWatchツールでは、FRBが政策金利を据え置く確率が55.9%に上昇し、追加利上げを見込む44.1%を上回った。
市場の関心は現在、水曜日の米東部時間午前8時30分に発表されるCPIに移っている。結果は9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を巡る市場予想にも影響を与えるとみられる。
ロイターが実施したエコノミスト調査によると、総合CPIの前年比上昇率は6月の3.5%から3.4%へ鈍化する見通しだ。コアCPIも2.5%へ低下すると予想されており、実現すれば2021年3月以来の低い水準となる可能性がある。
BitMineとSharpLinkのETH購入、ETFの1,460万ドル純流出を補う
インフレ鈍化への期待に加え、金曜日に発表された弱い雇用統計を受け、FRBが年内の今後の会合で政策金利を据え置くとの見方が強まっている。一方、CPI発表を控え、トレーダーは大規模なロングポジションの構築には慎重な姿勢を維持している。
米国の現物イーサリアムETFは8月10日(月)、1460万ドルの純流出を記録し、8月4〜7日の4営業日続いた資金流入が途切れた。この4営業日の純流入額は合計約2億5560万ドルだった。
一方、企業による財務資産としてのETH需要は引き続き相場を支えている。
The Blockによると、企業が財務資産として保有するETHの累計量は8月11日時点で758万ETHに達した。7月初めの747万ETHから11万ETH増加しており、直近の増加はBitMineとSharpLinkによる購入が主な要因となった。

BitMine Immersion Technologiesは8月10日に公表した週間の企業活動報告で、直近1週間に7,391ETHを取得したと明らかにした。取得額は約1400万ドル相当となる。
一方、SharpLinkも、2026年第2四半期に3億9430万ドルの最終赤字を計上したものの、ETHの財務保有を拡大し続けている。
SharpLinkのETH保有量は6月末の88万6881ETHから、8月3日時点で88万8938ETHへ増加した。この期間に保有量は2,057ETH増加した。なお、同社は6月30日時点の暗号資産を米国会計基準(GAAP)ベースで約14億ドルと報告している。
同社が計上した赤字の大部分は、事業不振によるものではなく、3億2100万ドルのETH未実現評価損と、7610万ドルのリキッドステーキングトークンに関する減損によるものだった。
一方、事業面では売上高が前年同期比で1,500%以上増加し、1153万ドルとなった。このうち約1120万ドルがETHのステーキング報酬から生じた。
QuickNode共同創業者がRobinhood Chainの影響に言及 ネットワーク活動は5カ月ぶり高水準
イーサリアムの中長期的な見通しを支えるネットワークの基礎的な指標も堅調だ。
ブロックチェーン分析プラットフォームのSantimentは8月10日、イーサリアムの日次アクティブアドレス数が98万9500件まで増加し、3月以来の高水準に達したと指摘した。

これは、先週金曜日のNFP発表後の上昇が続かず、価格が比較的横ばいで推移する中でも、ブロックチェーンの利用が底堅く続いていることを示している。
Santimentは、Robinhood Chainを通じたイーサリアム上の決済活動の拡大に加え、ステーブルコイン、トークン化された現実資産(RWA)、オンチェーン金融インフラの普及が、レイヤー1ネットワークの活動を支える主な要因だと指摘した。
Web3インフラ企業QuickNodeの共同創業者Dmitry Shklovsky氏によると、Robinhoodは販売・提供チャネル、証券仲介、ID・本人確認、コンプライアンス、カストディ、資産発行、流動性といった機能を組み合わせている。
Robinhoodのレイヤー2チェーンが長期的にイーサリアムへ与える影響について、同氏は「イーサリアムによって保護される活動の増加が、イーサリアム外へ移動する価値の増加を上回れば、Robinhood Chainはイーサリアムを強化する」と述べた。
さらに、評価すべき指標として「新規ユーザーと新規資産の純増、blob需要、レイヤー1への決済頻度、ETH需要とバーン量、シーケンサー収益のうちL2側に残る額とイーサリアムへ支払われる額、クロスチェーン流動性の分断状況」を挙げた。
ただし、イーサリアムでは、ステーキング比率の上昇に応じてバリデーター報酬の一部を段階的にバーンし、約50%でコンセンサス層の新規発行報酬をゼロにする案を巡り議論が続いている。こうした変更がステーキングの収益性や機関投資家による採用に与える影響を懸念する声も出ている。
Lidoのコントリビューターを含む複数の業界関係者は、ステーキング報酬を予測しにくくすれば、利回りを生む資産としてのイーサリアムの魅力が低下し、機関投資家による採用を妨げる可能性があると主張している。
ETH価格見通し:長期保有者の強い保有姿勢が強気傾向を支える──Polymarketでは2,250ドル到達確率55%
テクニカル指標では、足元で価格がもみ合っているものの、ETHの大きな上昇基調は維持されていることが示唆されている。
ETHの20日移動平均線は、7月1日の1,660ドルから、8月12日の記事執筆時点では1,890ドルまで上昇した。7月1日以降の上昇基調を反映している。
一方、ETHの「1年アクティブ供給比率」は、同じ期間に37.4%から35.9%へ低下した。

1年アクティブ供給比率は、過去1年間に移動したETHが供給量全体に占める割合を示す指標だ。
価格が上昇する一方でこの数値が低下している場合、含み益が拡大しているにもかかわらず、長期保有者がETHの売却を控えていることを一般的に示す。
CPIが市場予想通り鈍化すれば、ETHは再び上昇し、心理的節目となる2,000ドルを目指した後、2,250ドル付近の抵抗線を試す可能性がある。

CPI発表を前に、予測市場でも全体として強気の見方が優勢となっている。
Polymarketでは、8月12日午前0時(中央ヨーロッパ時間)時点で、ETHが年末までに2,000ドルへ到達する確率を82%、2,250ドルに到達する確率を55%と予想している。
これに対し、2026年中にETHが1,500ドル以下に達する確率は44%となっている。この1,500ドル以下の市場の累計取引高は200万ドルを超える一方、2,000ドルおよび2,250ドル到達市場の累計取引高は、それぞれ3万1309ドルと1万4250ドルとなっている。
さらに、ETHが1,250ドルまで下落する確率は21%、1,000ドルまで下落する確率は13%となっている。
市場参加者はCPI発表を前に慎重な姿勢を維持しているものの、Robinhood Chainのローンチ後にイーサリアムのネットワーク活動が活発化していることや、長期投資家が売却を控えていることから、市場では大幅な調整よりも、さらに高い価格水準を目指すとの見方が現時点では優勢となっている。
ただし、米国とイランの対立が依然として決着から程遠い中、予測市場では下落シナリオでも大きな取引高が確認されており、下方向のリスクへの関心も根強い。ただし、取引高だけから市場参加者が十分にヘッジしていると判断することはできない。


