「ステーブルコインの次は利回り資産」ブラックロック田中氏──トークン化MMFがオンチェーン金融の中核に【WebX 2026】

ステーブルコインが普及した先に求められるのは、利回りを生む安全資産──。

ブラックロック・ジャパンの田中勇毅氏(ブラックロック・グローバル・マーケッツ部長)は、「WebX 2026」の金融セミナーで、同社のデジタルアセット戦略を説明。トークン化MMF(マネー・マーケット・ファンド)がオンチェーン金融の重要な基盤になるとの見方を示した。

同氏は、ブラックロックのデジタルアセット戦略は「暗号資産」「ステーブルコイン」「トークン化」の3本柱で構成されると説明。それぞれを相互に補完しながら、オンチェーン金融のエコシステムを形成するとの考えを示した。

ETF、ステーブルコイン、トークン化の3本柱

田中氏はまず、暗号資産ETFについて、「暗号資産そのものを伝統的金融(TradFi)の投資家に届ける役割」を担うと説明。暗号資産取引所ではなく、通常の証券口座から投資できる環境を提供することで、機関投資家や一般投資家のアクセスを広げているとした。

ステーブルコインについては、ブラックロック自身が発行するのではなく、裏付け資産の運用を担う戦略を採る。

具体例として、Circle(サークル)の米ドル建てステーブルコイン「USDC」を挙げ、USDCの裏付け資産となる米ドル資産の運用をブラックロックが担っていることを紹介した。

ステーブルコインの次は「利回り資産」

田中氏は、ステーブルコインの普及が進むほど、利回りのある資産への需要が高まると指摘した。

ステーブルコインは決済手段として優れている一方、基本的には利回りが付かない。そのため、ステーブルコインの一部を利回りのあるトークン化MMFへ移すニーズが生まれるという。

トークン化MMFは、安全性の高い短期資産で運用しながら利回りを得られることに加え、ブロックチェーン上で保有・移転できることが特徴。田中氏は、ステーブルコインとトークン化MMFは競合するのではなく、決済と運用という異なる役割を担う補完関係にあるとの考えを示した。

担保利用も拡大

さらに、トークン化MMFの用途として田中氏が強調したのが、「担保資産」としての利用だ。

現状の金融市場では、証券レンディングなどで株式や債券を担保として受け渡す際、決済や移転に時間がかかる場合がある。一方、トークン化MMFはブロックチェーン上で24時間365日、即時決済(アトミック・セトルメント)が可能になるため、担保の受け渡しを効率化できる可能性があると説明した。

また、24時間365日の取引や即時決済といったブロックチェーンの特性が、運用商品との親和性を高めるとの認識も示した。

「すべての株式、債券、ファンドがトークン化される」

講演では、ブラックロックのラリー・フィンクCEOが掲げるビジョンにも言及した。

田中氏は、「すべての株式、すべての債券、すべてのファンドが将来的にはトークン化される」との考えを紹介。その一方で、既存の金融システムが置き換えられるのではなく、「伝統的金融(TradFi)とオンチェーン金融が融合していく世界」を想定していると説明した。

一方、日本市場については制度面の課題も指摘した。

田中氏は、国内籍投資信託のトークン化について、「現状では投資信託法制などの関係で、実現には課題がある」と説明。法改正による対応だけでなく、現行制度の中で技術的に実現する方法も含め、業界全体で検討が進んでいるとの認識を示した。

さらに、普及には規制だけでなく、ウォレット管理や業務プロセスの簡素化も重要になると指摘。「ブロックチェーンを使いましょうというだけでは普及しない。利用者に利便性やリターンという価値を示すことが重要だ」と述べ、トークン化資産の普及には、利用者がメリットを実感できるサービス設計が重要だとの認識を示した。

|文・撮影:増田隆幸

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