暗号資産ETF(上場投資信託)の普及は、証券会社だけにとどまらない可能性がある。
SBIグローバルアセットマネジメント代表取締役社長の朝倉智也氏は7月13日、「WebX 2026」に登壇し、暗号資産ETFを軸に、証券会社だけでなく銀行などにも販売チャネルを広げる日本独自の市場像を示した。
パネルセッションには、野村アセットマネジメント ETFソリューション部の水﨑優駿氏、ブラックロック・ジャパン取締役の城圭介氏、東京証券取引所 上場推進部長の菊地孝史氏も登壇。米国で急成長した暗号資産ETF市場を日本でどのように再現し、さらに超えていけるかを議論した。
モデレーターは、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 パートナーの長瀨威志氏が務めた。
銀行販売が広げる日本モデル

朝倉氏は、日本ではETFそのものに加え、ETFを組み入れた公募投資信託に大きな可能性があるとの見方を示した。
ETFは原則として証券口座を通じて売買される。一方、公募投資信託であれば、証券会社に加えて銀行やゆうちょ銀行などでも販売できる。
「日本では、ETFを組み入れた投資信託の方がポテンシャルがあると考えている」
朝倉氏はそう述べ、地方銀行や全国に存在する郵便局を通じた販売、さらには積立投資での活用を例に挙げた。
暗号資産を単独の投機商品として販売するのではなく、長期・積立・分散投資を前提とする資産形成商品の一部として提供することが、日本市場の強みになるとの考えだ。
家計金融資産の1%で米国市場を上回る
朝倉氏は、日本の暗号資産取引口座が約1400万口座に達していることにも触れ、厳しい税制環境のもとで形成された「需要の下限」と表現した。
暗号資産の現物取引は現在、所得に応じて最大55%の総合課税の対象となり、株式や投資信託との損益通算もできない。こうした環境でも1400万口座が存在する一方、NISA口座は約2800万口座に拡大している。
朝倉氏は、暗号資産ETFが証券口座やNISAなど既存の資産形成制度とつながれば、市場は大きく拡大する可能性があると指摘した。
日本の家計金融資産は約2400兆円に上る。朝倉氏は、その1%が暗号資産ETFに振り向けられるだけでも、現在の米国市場全体を上回る規模になり得るとの試算を示した。
米国では、暗号資産ETF市場が熱狂と調整の両方を経験してきた。一方、日本は後発であるからこそ、最初から「資産形成の一部」として商品設計や販売を進めることができるとした。
米国では個人投資家が市場を牽引

ブラックロック・ジャパンの城氏は、2024年にビットコイン現物ETFが承認された米国では、当初は個人投資家が市場を牽引したと説明した。
同社の推計では、市場の立ち上がりから約1年は、約8割を個人投資家が占めた。その後、機関投資家やウェルスマネジメント層の参入が進み、現在は個人投資家が約50%、IFAなどを通じた富裕層が約25%、機関投資家が約25%を占めるという。
城氏は、暗号資産ETFが伝統的金融とデジタルアセットの「架け橋」として機能したと指摘。ブラックロックの暗号資産ETFを購入した投資家のうち、約75%は、それまでETFを購入した経験がなかったと述べた。
さらに、その一部はその後、株式など伝統的資産を対象としたETFも購入したという。暗号資産ETFが、既存の金融商品への入り口にもなった格好だ。
まずはシンプルな商品から

野村アセットマネジメントの水﨑氏は、日本での商品展開について、まずは特定の暗号資産に100%連動するシンプルな商品から始めるのが現実的との見方を示した。
その後、暗号資産をバランスファンドに組み入れる商品や、デリバティブを利用した戦略商品などへ広げる余地があるという。
一方、暗号資産は価格変動が大きく、投資家への説明やプロダクトガバナンスには慎重な対応が必要になる。

東京証券取引所の菊地氏は、暗号資産ETFを上場する際には、内国籍と外国籍のどちらの商品を採用するか、金銭で設定するか現物で設定するかといった論点があると説明した。
現物設定を採用する場合は、証券会社やカストディアン、清算・決済インフラを含め、ETFのエコシステム全体で対応を検討する必要がある。
NISAやiDeCoへの組み入れを要望
朝倉氏はセッションの最後に、暗号資産を投機商品ではなく、資産運用における一つのアセットクラスとして定着させるには、政策面での対応も必要だと訴えた。
具体的には、NISA、子ども向けNISA、iDeCo、確定拠出年金などの制度で、暗号資産ETFやそれを組み入れた投資信託を活用できるようにすることを政府に求めた。
「そうでなければ、日本でも米国と同じように、投機的な商品のままで終わってしまう」
暗号資産ETFを証券口座で売買するだけでなく、銀行やゆうちょ、積立投資、年金制度まで広げられるか。
日本の暗号資産市場が米国とは異なる成長モデルを築けるかどうかは、商品設計だけでなく、販売チャネルと制度設計にも左右されそうだ。
|文・撮影:増田隆幸


