ビットコイン(BTC)は2026年上半期を33%安で終え、2022年以来最悪の上半期成績となった。9%上昇したS&P500だけでなく、7%下落した金も下回った。
BTCは年初に8万7650ドルで取引を開始したが、2四半期連続で下落し、6月30日には5万8550ドルで上半期を終えた。ビットコインの17年の歴史において、2四半期連続の下落が起きたのは2018年と2022年の2回しかなく、歴史的にもまれな展開だ。
FTSE100構成銘柄のIG Group Holdings傘下で、デリバティブ取引プラットフォームを運営するIG.comのアナリストは、ビットコインの上半期の低迷について、過去最大となる45億ドルのETF(上場投資信託)資金流出、米連邦準備制度理事会による政策金利の高止まり、AI関連株への資金移動、StrategyがBTCの売却を可能とする方針へ転換したこと、CLARITY法案の審議遅延という5つの要因を挙げた。
BTCは2026年に入って価値の3分の1を失い、2025年10月に記録した過去最高値12万5000ドルの半値以下で取引されている。それでも市場参加者の間では、まだ底を打っていない可能性への警戒が続いている。
アンカレッジ・デジタルは6月25日、Deribitのオプション市場、ブラックロックのIBITオプション、Strategy株のオプションに表れたビットコインのセンチメント指標を分析した調査報告書を公表した。
報告書によると、DeribitやIBITのオプション市場では、ビットコインの下方リスクに備える防御的なポジションが歴史的に高い水準にある。
直近の出来高や値動きなどを基に暗号資産市場の心理を測るCoinMarketCapの恐怖・強欲指数は、6月30日に16まで低下し、極度の恐怖の領域に入った。
また、予測市場Polymarketでは、BTCが年末までに5万ドルを割り込む確率が51%と見積もられている。これは、オプション市場の取引シグナルが弱気に傾いているとするアンカレッジ・デジタルの分析をさらに裏付けるものだ。

今回の追加インタビューでは、アンカレッジ・デジタルのリサーチ責任者であるデービッド・ラワント氏が、2026年下半期を前にビットコイントレーダーが弱気に傾いている背景にあるリスク要因について見解を述べた。
ラワント氏は、米連邦準備制度理事会による利上げ観測、ビットコインETFからの資金流出とレバレッジポジションの清算との関係、AI分野への資金移動が暗号資産市場から資金を吸収するクラウディングアウト効果について語った。
1.BTCが上半期に33%下落した後も、トレーダーはさらなる下落に備えるため、高いプレミアムを支払っている。投資家が主に織り込んでいるリスク要因は何か。また、それぞれにどの程度の比重を置くか。
デービッド・ラワント氏:私の見方では、現在広く見られるヘッジ需要は、ビットコイン固有の規制材料よりも、リスク資産全体に関わる要因によって主に動かされている。
比重を大まかに分けると、インフレの長期化、金利の高止まり、リスク回避への資金移動といったマクロ経済リスクが55%、ビットコインや暗号資産の保有者が次の目新しい投資先へ移っているという、AI分野への資金移動をめぐる見方が30%、規制上の不透明感が15%以下だと考えている。
米国で6月10日に公表された5月の消費者物価指数によると、前年同月比4.2%上昇した。ケビン・ウォーシュ米連邦準備制度理事会議長は、インフレ率を中央銀行の目標である2%へ戻す必要性を強調した。
市場では現在、FRBが年後半に利上げを行う可能性が織り込まれ始めている。

CMEグループのFedWatchツールによると、7月の米連邦公開市場委員会では、政策金利が再び据え置かれる確率が78%となっている。
一方、タカ派的な見方をする市場参加者の注目は9月会合に集まっている。各会合の終了時点までに、政策金利が現在より高い水準となっている確率は、9月が55%、10月が69%、12月が77%まで上昇している。
2.FRBによる利上げの可能性が高まるにつれ、BTCの下落に備えるヘッジ需要はどのように変化すると考えるか。
デービッド・ラワント氏:FRBがいつ利上げするかは、現在の市場が実際に注目していることに比べれば、やや二次的な問題だ。
市場が見ているのは、FRBのタカ派姿勢がピークに達したことを示すシグナルだ。これは似ているようで異なる論点であり、注目の対象を政策金利見通しを示すドットチャートから、今後発表される経済指標へと移すものだ。
特に重要なのは、原油価格の下落によるインフレ鈍化圧力が、今後数カ月の物価指標に表れ始めるかどうかだ。
原油価格は、イランとの紛争が始まる前の水準近くまで、ほぼ戻っている。これは重要な判断材料だ。
原油安が消費者物価指数の鈍化につながれば、FRBが追加利上げを見送る根拠となり、市場もより穏やかな金融政策の道筋を織り込み始められる。
BTCへの影響は二つある。
一つ目は、投資家のリスク選好を抑えてきたマクロ経済上の重しが直接的に軽減されることだ。二つ目は、ドル安と実質金利の低下であり、こうした環境は歴史的にBTCが他の資産を上回る局面と結び付いてきた。
下落に備えるヘッジ圧力が弱まるために、必ずしも利下げは必要ない。市場が追加的な金融引き締めリスクを織り込まなくなればよく、FRBのタカ派姿勢がピークに達したというシグナルが出れば、その条件は満たされる。
3.ETFからの大規模な資金流出と、デリバティブ市場での大規模な清算が同時に起きるケースが繰り返し確認されている。例えば6月24日には、ETFから約4億6900万ドルが流出する一方、暗号資産市場では約10億ドルのポジションが清算された。
ETFの解約に伴う資金流出は、無期限先物やオプション市場における清算をどの程度増幅させるのか。
デービッド・ラワント氏:ここでの因果関係の向きは一定ではない。
ETFの資金フローが価格を先導する場合もあれば、デリバティブ市場のポジションが価格を動かす場合もある。最近の値動きの中には、リアルタイムで原因を明確に特定することが難しい理由を示す好例もある。
単一の説明を無理に当てはめるのではなく、この曖昧さを受け入れて考えることが重要だ。
一方、現在の市場局面については、比較的明確に捉えられる。
暗号資産市場のレバレッジポジションは、過去のサイクルのピーク時と比べて抑えられている。そのため、2021年や2023年後半のように、デリバティブ市場が現物市場全体を振り回す構図にはなっていない。
現在の環境では、ETF市場が価格発見において、より支配的な役割を担うようになっている。
下落が増幅されるのは、レバレッジが特定の水準に積み上がっている場合だ。
ETF主導の価格変動が一律に清算を引き起こすわけではない。しかし、価格変動が、ファンディングレートに偏りがある局面や、建玉が集中している価格帯と重なると、清算を誘発することがある。
その場合、ETFからの資金流出が最初の値動きを引き起こし、その後の連鎖的な清算が下落を拡大させる。このため、最初に発生した資金流出の規模に比べて、最終的な下落幅が過大に見える。
今後の見通し:暗号資産固有のリスク要因が和らげば、下半期のBTCの弱気見通しが改善する可能性
米国とイランの戦争が終結し、原油価格が1バレル70ドル前後まで下落しても、BTCの下落は止まっていない。
2026年下半期を迎えるにあたり、ラワント氏は、BTCが直面する主要なリスクは外部要因であり、主にマクロ経済と地政学的な動向によってもたらされていると説明した。
一方、ここで取り上げた暗号資産固有のリスク要因については、下半期に大幅に和らぐ可能性がある。
マイケル・セイラー氏率いるStrategyの方針転換
BTCを最も多く保有する上場企業であるStrategyが財務基盤と流動性を強化したことで、既存株主の懸念が和らぐとともに、新たな投資家の信頼向上にもつながっている。
Strategyは5月26日から31日にかけて32BTCを売却し、6月1日に取引内容を公表した。その後、同社は6月29日、取締役会が承認した米ドル準備金方針を含む新たな資本政策を発表した。
Strategyは、変動金利シリーズA永久優先株STRCの年間配当率を、7月1日付で11.5%から12%へ引き上げた。
同社はまた、約25億5,000万ドルの米ドル準備金を保有していると発表した。これは、優先株の配当と利払いの約17.4カ月分を賄える規模だ。
一部大手がEU域内でサービスを縮小する一方、MiCA認可事業者は280社超
欧州では7月1日、MiCAに基づいて既存事業者に認められていた最長の経過措置が終了した。MiCA自体は2024年12月30日に全面適用されている。
欧州証券市場監督局の登録簿には、MiCAに基づく認可を受けた暗号資産サービス事業者が283社掲載されている。Binanceなど一部事業者がEU域内でサービスを縮小し、USDTなど一部ステーブルコインの取扱いが制限される中でも、幅広い事業者が新たな規制に対応していることが示された。

BitcoinTreasuries.netによると、ドイツのBitcoin Group SEやフランスのCapital Bなど、欧州を拠点とする上場企業41社は、合計1万6,987BTCを保有している。
欧州の上場企業による保有量は、約7万1,800BTCを保有するアジアと、約116万5,000BTCを保有する米国を下回っている。
欧州の上場企業による保有量は米国やアジアに比べて依然として少ない。一方、EU域内ではMiCAの規制枠組みの下で、企業や機関投資家による採用が拡大する余地がある。
CLARITY法案、審議遅延後も超党派の支持を維持し、年内成立確率は53%
CLARITY法案は引き続き超党派の支持を得ている。法案の審議が遅れているのは、規制そのものへの反対ではなく、上院の日程上の制約が原因とされている。

予測市場は慎重ながらも楽観的な見方を維持している。
Polymarketでは、CLARITY法案が2026年末までに成立する確率が53%と見積もられており、この市場の累計取引高は150万ドルを超えている。
法案が成立すれば、米国のデジタル資産市場にとって、これまでで最も明確な規制枠組みの一つが整備されることになる。これにより、暗号資産分野に対する機関投資家の信頼が高まる可能性がある。
デービッド・ラワント氏について
デービッド・ラワント氏は、ブラジルのサンパウロ大学ポリテクニカ校で電気・電子工学の学士号を取得した後、スタンフォード大学経営大学院で経営学の理学修士号を取得した。

アンカレッジ・デジタルのリサーチ責任者に就任する前は、世界最大級の暗号資産運用会社の一つであるBitwise Asset Managementで、リサーチディレクターを務めた。
また、CFA Institute Research Foundationが刊行した、投資専門家向けの暗号資産解説書「Cryptoassets: The Guide to Bitcoin, Blockchain, and Cryptocurrency for Investment Professionals」の共同著者でもある。
アンカレッジ・デジタルについて
アンカレッジ・デジタルは2017年に設立された、米国初の連邦認可を受けた暗号資産銀行だ。
機関投資家向けに安全性の高い金融インフラを提供しており、暗号資産のカストディ、取引、ステーキング、融資、トークン化預金ソリューションなどのサービスを展開している。


