CLARITY法案が変えるDeFiの未来とアメリカ金融市場の転換点【サンフランシスコ レポート】

エックスウィン アメリカマーケットリサーチアナリストのデリア・ロホです。

サンフランシスコから、現在アメリカの暗号資産業界で最も重要な政策テーマとなっているCLARITY Act(デジタル資産市場構造法案)についてお伝えします。

アメリカでは今、CLARITY法案がいよいよ最終局面へ入りつつあります。

下院での審議を経て、現在は上院での議論と法案調整が進められており、市場関係者の関心は「成立するのか」から、「どのような形で成立するのか」へ移り始めています。

私はワシントンで進む議論を追いながら、この法案は単なる暗号資産規制法案ではなく、アメリカがブロックチェーン、DeFi、ステーブルコイン、そしてオンチェーン金融をどのように制度へ組み込むのかを決める歴史的な制度設計だと感じています。

日本ではビットコインETFや価格動向に注目が集まりがちですが、アメリカの政策関係者が本当に議論しているのは価格ではありません。

それは、「何が本物のDeFiなのか」というテーマです。

CLARITY法案はDeFiを禁止する法律ではない

まず誤解されがちなのですが、CLARITY法案はDeFiを禁止するための法案ではありません。

むしろ逆です。

下院版ではすでにSec.309およびSec.409において、

・ノード運営者
・バリデーター
・オラクル提供者
・ユーザーインターフェース提供者
・プロトコル開発者
・流動性プール参加者
・ウォレット開発者

などについて、証券法および商品取引法上の金融仲介業者として扱わない方向性が示されていました。

さらにSec.110では、支配権を持たないブロックチェーン開発者(non-controlling blockchain developer)について、Money Transmitter(送金業者)として扱わないことも明記されています。

これは数年前のSECの姿勢から考えると非常に大きな変化です。

上院版は「本物のDeFi」と「偽物のDeFi」を分け始めた

しかし今回の上院版は、さらに一歩踏み込んでいます。

私が最も重要だと感じているのが、Sec.306で導入された「Non-Decentralized Finance Trading Protocol」という概念です。

簡単に言えば、「DeFiと名乗っていても、実質的な支配者が存在するなら規制対象になる」という考え方です。

例えば、

・運営会社が停止権限を持つ
・開発チームが資産を管理できる
・少数の関係者がガバナンスを支配する

のであれば、たとえDeFiと名乗っていてもSEC登録や銀行秘密法(BSA)の対象となる可能性があります。

つまりアメリカ政府は、「DeFiだから規制しない」のではなく、「本当に分散化されているなら規制主体が存在しない」という整理を始めているのです。

DeFiにもAML義務が近づいている

さらに上院版Sec.308では、デジタル資産仲介業者(Digital Asset Intermediary)がDeFiプロトコルを利用する場合、

・AML
・経済制裁対応
・市場操作監視

などのリスク管理を求めています。

ここは業界側から見ると非常に重要です。

今後は、「DeFiだからAML不要」という時代ではなくなります。

特に機関投資家や金融機関がDeFiを利用する場合には、一定のコンプライアンス体制が求められる可能性が高まっています。

開発者保護と自己保管権はさらに強化された

一方で、上院版は保護も強化しています。

Title VIでは、

・Sec.601 Protecting Software Developers
・Sec.604 Blockchain Regulatory Certainty Act
・Sec.605 Keep Your Coins Act

が新たに追加されました。

私はここが非常に重要だと思っています。

なぜなら、アメリカは現在、「開発者を守る」「自己保管を守る」という方向へ大きく舵を切っているからです。

特にKeep Your Coins Actは、利用者が自らウォレットを管理し、自ら資産を保有する権利を保護する考え方です。

これはビットコインの思想そのものと言えるでしょう。

ステーブルコインは金融業界との正面衝突へ

そしてもう一つの大きな論点がステーブルコインです。

上院版Sec.404では、Payment Stablecoinに対する第三者利回り規制が追加されました。

この背景には銀行業界の強い警戒感があります。

もし将来的にステーブルコイン保有者が利回りを受け取れるようになれば、預金が銀行から流出する可能性があります。

JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOが懸念を示しているのも、まさにこの部分です。

私はこれは単なる暗号資産規制ではなく、「未来のお金を誰が管理するのか」という金融業界全体の戦いだと思っています。

アメリカはDeFiを金融システムへ組み込もうとしている

私が今回のCLARITY法案を見ていて最も感じるのは、アメリカはもはや「暗号資産をどう取り締まるか」を議論しているのではないということです。

現在の議論は、「暗号資産をどう制度へ組み込むか」へ移っています。

そしてDeFiについても、「禁止するか」ではなく、「本当に分散化されたものをどう保護するか」へ議論の焦点が移っています。

もしCLARITY法案が成立すれば、アメリカは世界で初めて本格的にDeFiとオンチェーン金融を法制度の中へ組み込んだ主要国になる可能性があります。

だからこそ私は、今後数か月はビットコイン価格以上に、ワシントンD.C.で進む制度設計の議論に注目する価値があると考えています。

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