冷めゆくビットコイン市場、その本質とは──日経新聞掲載のCryptoQuant・エックスウィンデータから読み解く新たな市場構造【エックスウィン】

● 世界主要取引所の現物(スポット)取引高は2024年12月の月間2.6兆ドルから2026年5月には6770億ドルまで減少し、約70%縮小した。
● 取引量減少の背景には弱気相場だけでなく、ETF普及による投資家行動の変化や機関投資家の増加がある。
● ビットコイン市場は「個人投資家中心の投機市場」から「機関投資家中心の資産市場」へ移行しつつある。

2026年6月11日の日経新聞において、「冷めゆく暗号資産、現物取引7割減 市場成熟で『プロ』主導に」という記事が掲載された。

記事内ではCryptoQuantのデータを基に、世界主要取引所のスポット取引高の推移が紹介されている。エックスウィンもデータ分析協力を行った。

グラフを見ると、多くの投資家は驚くかもしれない。

2024年12月、ビットコインが史上最高値圏へ向かう過程で、主要取引所の月間スポット取引高は約2.6兆ドルに達した。

しかし2026年5月には約6770億ドルまで減少している。

約70%の減少である。この数字だけを見ると、「ビットコイン人気は終わった」「投資家がいなくなった」と考えたくなる。

しかしCryptoQuantのデータを詳しく分析すると、見えてくる景色は少し異なる。

今回のデータは、単純な弱気相場ではなく、市場構造そのものが変化していることを示している可能性が高い。

まず理解すべきなのは、スポット取引高は市場参加者の「売買頻度」を示す指標であって、「市場規模」そのものではないという点である。

例えば、不動産市場を考えてみよう。

人気エリアのマンション価格が上昇していても、売買件数が減少することはある。保有者が売らなくなるからだ。ビットコイン市場でも同様の現象が起きている。

価格が低迷している局面では短期トレーダーが市場から離れやすい。一方で長期投資家は売買回数を減らしながら保有を続ける。

その結果として取引量は縮小する。

CryptoQuantが指摘しているように、弱気相場では市場参加者の一部が活動を停止し、生き残った投資家も売買頻度を下げる傾向がある。

現在の取引量低下には、この典型的な弱気相場の特徴が含まれている。

しかし今回の減少は、それだけでは説明できない。2024年以降の市場で最も大きな変化は、米国現物ビットコインETFの誕生である。

以前の投資家は、ビットコインへ投資するために暗号資産取引所の口座を開設する必要があった。コインベースやバイナンスで口座を作り、資金を入金し、自ら売買を行う。これが当たり前だった。

ところが現在は違う。証券会社の口座からETFを購入するだけでビットコインへ投資できる。特にブラックロックのIBITをはじめとするETFには大量の資金が流入している。つまり、以前は取引所で発生していた売買の一部が、ETF市場へ移動しているのである。

取引所の出来高だけを見れば市場が縮小しているように見える。

しかし実際には投資家が消えたわけではない。

投資の入り口が変わったのである。

今回のデータで最も重要なポイントはここだ。

市場参加者が変わっている。2021年までのビットコイン市場は、個人投資家や短期トレーダーが中心だった。価格が上がれば買い、下がれば売る。一日に何度も取引を繰り返す参加者が市場を支えていた。

しかし現在ETFを購入している主体は、

・年金基金
・大学基金
・ファミリーオフィス
・RIA(登録投資顧問)
・上場企業

などである。

彼らは短期売買を目的としていない。むしろ数年単位、場合によっては10年以上保有することを前提としている。

結果として市場全体の回転率は低下する。スポット取引高が減るのは当然とも言える。これは市場の衰退ではなく、市場参加者の質が変化した結果なのである。

CryptoQuantのデータを見ると、2026年累計スポット取引高ではBinanceが圧倒的なシェアを維持している。累計取引高は約1.3兆ドル。続くBybitが約2850億ドル、Gateが約2530億ドル、Crypto.comが約2470億ドルとなっている。

市場全体の取引量は減少しているが、流動性はより大手取引所へ集中している。これは金融市場が成熟する過程でよく見られる現象である。参加者が減る局面では、小規模取引所から流動性が抜け、最も流動性の高い市場へ資金が集まる。

暗号資産市場も同じ段階に入りつつある。

今回の日経新聞で紹介されたCryptoQuantのグラフは、「市場の衰退」を示すデータではない。もちろん短期的には弱気相場であり、投資家心理も冷え込んでいる。しかしその一方で、市場の制度化は過去最高ペースで進んでいる。

ETFは拡大を続け、企業のビットコイン保有は増え、各国では準備資産としての議論も進んでいる。かつてのビットコイン市場は、個人投資家が短期売買を繰り返す投機市場だった。現在は少しずつ、年金基金や大学基金、企業が長期保有する資産市場へと変化している。

スポット取引高の70%減少は確かに弱気相場のサインである。しかし同時にそれは、ビットコイン市場が成熟し、新たな段階へ移行しているサインでもある。

CryptoQuantのデータが本当に示しているのは、「市場の終わり」ではない。むしろ、ビットコインが投機対象から金融インフラへ変わろうとしている、その過渡期の姿なのである。

■ショート動画

https://youtube.com/shorts/waGke6aqoKk

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