● Crypto Weekly Reportによると、ビットコインは実現価格(Realized Price)53,600ドルまで残り約9%の水準に接近しており、過去サイクルでは底値形成が起きやすい価格帯に入っている。
● 一方で需要環境は大きく悪化しており、総需要はマイナス65.2万BTCまで縮小、ETF需要も過去最大の減速を記録している。
● 過去の本格的な大底局面で見られた「投げ売り(キャピチュレーション)」はまだ確認されておらず、市場は底値圏に近づいているものの、底打ちが確認された状態ではないと分析されている。
Crypto Weekly Reportによると、現在のビットコイン市場は「価格面では底値圏に近づいているが、需給面ではまだ底打ちを確認できない状態」にあるという。
今回のレポートで最も注目されたのは実現価格(Realized Price)である。
実現価格とは、市場参加者全体の平均取得価格を示すオンチェーン指標であり、過去の弱気相場ではビットコイン価格がこの水準付近まで下落したところで大底を形成するケースが多かった。
現在の実現価格は約53,600ドルであり、ビットコイン価格は約59,000ドルと、その差はわずか9%程度まで縮小している。CryptoQuantは、この水準が歴史的に見ても「価値ゾーン(Value Zone)」に入りつつあると指摘している。
しかし問題は価格ではなく需要である。
レポートによれば、先物市場と現物市場を合わせた総需要は直近でマイナス65.2万BTCまで落ち込み、2022年1月以来で最大の需要収縮を記録した。さらに1年間ベースの現物需要成長率もマイナス圏に転落しており、市場全体として新たな買い手が減少していることを示している。
特に注目すべきはETF需要の変化である。
2024年に米国現物ビットコインETFが承認されて以降、ETFは今回のサイクルにおける最大の買い手として機能してきた。しかし現在は30日ベースのETF需要成長率がマイナス7.4万BTCとなり、制度資金による需要が過去最大のペースで縮小している。CryptoQuantは、これまで市場を支えていた米国機関投資家の需要が一時停止しただけでなく、一部では売り手に転じている可能性も示唆している。
また、市場サイクル分析で知られる著名アナリストのBenjamin Cowen氏も、現在の状況について興味深い見方を示している。
同氏は6月8日のYouTubeで、Bitcoin Supply in Profit/Loss(利益・損失状態にある供給量比率)のチャートについて、「大きな市場サイクルの底は、指標がクロスする前ではなく、クロスした後に探し始めるものだ。ただし、時間はかかる」と述べた。
この指標は、市場参加者全体の損益状況を表すものであり、過去の大底局面では、多くの投資家が損失状態へ移行した後に長期的な底値形成が進んできた。
今回のCryptoQuantレポートが示す「実現価格付近への接近」と、Cowen氏が指摘する「サイクル指標の正常化」は、いずれも市場が徐々に底値圏へ近づいている可能性を示唆している。
一方で、両者に共通しているのは「底値圏」と「底打ち確認」は別物だという認識である。
さらに、過去の大底局面で見られた投資家の総悲観もまだ確認されていない。
直近30日間の実現損失は18.7万BTCとなっているが、2026年2月の40万BTCや、FTX破綻時の120万BTCと比較すると依然として小さい。これは市場参加者の多くがまだ完全な投げ売り状態には至っていないことを意味している。歴史的には、こうしたキャピチュレーションが発生した後に本格的な底打ちが確認されるケースが多かった。
筆者としては、現在の市場は2022年11月のFTXショック後と比較すると、価格面ではかなり魅力的な水準へ近づきつつあるように見える。
実現価格との乖離は大きく縮小し、オンチェーン指標も過去の弱気相場終盤に近い動きを見せ始めている。しかし、CryptoQuantが指摘する需要回復の欠如や、Cowen氏が強調するサイクル底打ち確認プロセスを考えると、まだ市場は最終調整局面の途中にある可能性も否定できない。
今は「もう安全だ」と断定する局面ではなく、「徐々に価値が見え始めている局面」と捉えるのが適切だろう。
今後の焦点は価格そのものではなく、ETFフローの改善、新規需要の回復、そしてオンチェーン指標の反転である。そうしたシグナルが揃った時、今回の下落が振り返れば絶好の仕込み場だったと評価される可能性がある。
■ショート動画
【CryptoQuant最新分析】ビットコインは底値圏か?でも、まだ安心できない理由
https://youtube.com/shorts/FbAA346WFy0
■オンチェーン指標の見方
① ビットコイン:実現価格バンド(ドル建て)

実現価格(Realized Price)は、市場参加者全体の平均取得価格を表すオンチェーン指標です。ビットコイン価格が実現価格に近づくほど、市場全体の含み益は縮小します。過去の弱気相場では、ビットコイン価格が実現価格付近まで下落したタイミングで底値を形成するケースが多く見られました。現在のビットコイン価格は実現価格を約9%上回る水準にあり、歴史的に見ると「割安圏(Value Zone)」へ接近しています。ただし、実現価格への接近だけで底打ちが確定するわけではなく、需要回復や資金流入など他の指標との組み合わせで判断する必要があります。
② ビットコイン保有者の実現損益推移

実現損益は、投資家が実際に利益確定または損切りした規模を示すオンチェーン指標です。赤色が大きいほど損失確定売りが増えていることを意味します。過去の大底局面では、多くの投資家が損失を受け入れて売却する「キャピチュレーション(投げ売り)」が発生していました。2026年2月には約40万BTCの実現損失が発生しましたが、現在は約18万BTCに留まっており、過去の大底局面ほどの悲観は確認されていません。市場の底打ちを判断する際は、価格だけでなく「投資家の投げ売りが十分に進んだか」を確認することも重要なポイントとなります。



