米ニューヨーク・マンハッタンの連邦地裁で9月28日、分散型取引所(DEX)から約5470万ドル(約86億円、1ドル=157円換算)の暗号資産(仮想通貨)を盗んだ罪などに問われた男の公判が始まった。検察側は、盗んだ資金の一部が希少なポケモンカードなどの購入に使われたと主張している。
被告はコンピューター詐欺とマネーロンダリングの罪に問われている。コンピューター詐欺は最長10年、マネーロンダリングは最長20年の禁錮刑が科される可能性がある。
事件は2021年4月にさかのぼる。Uranium Finance(ウラニウム・ファイナンス)は、利用者が流動性プールを通じて暗号資産を預け入れたり、異なる暗号資産を交換したりできる分散型取引所(DEX)だった。
米司法省によると、被告は4月8日、ウラニウム・ファイナンスのスマートコントラクトを利用して一連の不正な取引を繰り返した。
本来受け取る権限のある額を大幅に上回る暗号資産の「報酬」を引き出し、最終的に流動性プールにあった報酬トークンのほぼ全てを流出させたとされる。被害額は約140万ドル(約2億2000万円)に上った。
検察側はその後、被告が不正に取得した資金のうち約38万6000ドルを「バグ報奨金」として保持することをウラニウム・ファイナンス側に認めさせたと主張している。残りの資金を返還する見返りに、この約38万6000ドルを正当なバグ報奨金だったように装い、刑事訴追を免れようとしたとされる。
さらに4月28日、被告は流動性プールから引き出せる暗号資産の量を管理するスマートコントラクトの不具合を悪用したとされる。この不具合を26の流動性プールで利用し、約5330万ドル(約84億円)相当の暗号資産を不正に取得したという。ウラニウム・ファイナンスは資金不足に陥り、その後閉鎖した。
検察側は、被告が暗号資産の流れを見えにくくするミキシングサービス「Tornado Cash(トルネード・キャッシュ)」などを通じて資金洗浄したとみている。その後、現物の収集品へ資金を移したという。
購入品には、約25万7500ドルの初版ポケモンカード未開封ボックスと、約75万ドルの初版カード一式が含まれる。ポケモンカードだけで合計約100万7500ドル(約1億5800万円)に達する。
このほか、トレーディングカードゲーム「Magic: The Gathering(マジック:ザ・ギャザリング)」の希少カードや未開封パックも購入したとされる。古代ローマ硬貨や、ライト兄弟の飛行機に使われ、後に月面へ運ばれた布片も押収された。


当局は2025年2月24日、裁判所の令状に基づき、被告がウラニウム・ファイナンスから取得したとされる約3100万ドル相当の暗号資産を押収した。
一方、弁護側は、被告が公開されたスマートコントラクトの機能を利用しただけで、認証情報の偽装や悪意あるコードは使っていないと反論した。収集品の購入に使われた暗号資産が、ウラニウム・ファイナンスから取得されたものだと示す証拠もないと主張している。
起訴内容は検察側の主張であり、有罪判決が確定するまで被告は無罪と推定される。今回の裁判では、被告が一連の取引を実行したと認定できるかや、その行為がコンピューター詐欺罪の要件を満たすか、さらに取得した暗号資産の資金洗浄を行ったかなどが争われる。
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|文:平木 昌宏
|画像:米司法省より(キャプチャ)