ビットコイントレジャリー戦略を進めるMetaplanet(メタプラネット)は、米Strategy(ストラテジー)と同様、資本市場を活用しながらビットコインの保有を拡大してきた。
Strategyは普通株に加えて複数の優先株を上場し、外部の証券会社を通じて投資家に商品を届けている。自社グループに証券会社は抱えていない。
これに対し、メタプラネットは2026年6月、私募社債を扱う旧Siiibo(シーボ)証券を21億円で買収すると発表し、証券会社そのものを傘下に収めた。同じビットコイントレジャリー企業でありながら、なぜメタプラネットはStrategyと異なる選択をしたのか。
前編では、Siiibo証券がメタプラネット傘下入りを決めた経緯を紹介した。後編では、メタプラネットが証券会社を傘下に持つ理由と、その役割を取り上げる。
なぜメタプラネットには証券会社が必要だったのか
小村氏は、メタプラネットとStrategyの違いを考えるうえで、米国の資本市場の環境を挙げる。
「米国の場合、種類株が上場しやすい土壌がある」と小村氏は話す。Strategyも複数の種類株を上場させ、外部の証券会社などと組みながら商品を投資家へ届けているという。
一方、日本では事情が異なる。小村氏によると、種類株の上場は「日本では珍しく、ほとんどない」。日本の上場市場の状況を踏まえると、証券会社を通じて金融商品を投資家に届ける方法が「適している」との見方を示した。なお、この点については自身の個人的な見解だとしている。
こうした市場環境の違いは、資金調達手段にも表れる。メタプラネットはこれまで、公募増資や新株予約権などを使って資金を調達してきた。小村氏によると、Strategyが展開している利回り商品に近い性格の商品を日本で提供する場合、種類株などを上場させるより、弁済順位の高いシニアデットとして社債を発行する方が取り組みやすいという。

そこで重要になるのが、証券会社の存在だ。メタプラネットはSiiibo証券を傘下に入れたことで、日本の市場環境に合った金融商品を組成し、投資家に届ける機能をグループ内に持つことになった。
BitBonds、これまでに無い規模での起債を目指す
メタプラネット証券が2026年8月に始めたのが、社債発行プログラム「BitBonds(ビットボンズ)」だ。メタプラネットが発行する社債を、メタプラネット証券が投資家に販売する。
BitBondsは、メタプラネットが保有するビットコインを直接担保として差し入れる仕組みではない。小村氏は、ビットコインを多く保有する企業について「もっと信用力が評価されてもいいはずだ」と話す。ビットコインを含む資産や財務状況を、企業の信用力を評価する材料として捉えているという。
初回の発行額は約2億円だった。今後について小村氏は「今後枠を増やして、これまでに無い規模での起債を目指していきたい」と語る。
また、発行規模を広げながら、公募債を取り扱う体制整理も検討する方針だ。公募化によって販売対象を広げ、メタプラネット以外の企業にも公募債の発行を提案していく考えを示した。
BitBondsの販売後には、Siiibo証券時代からの顧客からも反応があったという。これまで同社が扱ってきた社債は未上場企業によるものが多かった。メタプラネットは上場企業で開示情報も多いため、投資判断に必要な情報を確認しやすい点を評価する声があったという。
親会社の商品を売る利益相反「忖度しない」
メタプラネットが証券会社を傘下に持つうえで、重要な論点となるのが利益相反への対応だ。
BitBondsでは、親会社のメタプラネットが社債を発行し、子会社のメタプラネット証券が投資家に販売する。親会社の商品を扱う以上、発行条件や販売額の妥当性をどう担保するかが問われる。
小村氏も「親会社の商品を扱う場合、利益相反の手当ては非常に重要」と話す。メタプラネット証券では、発行条件や販売額を社内で審査するほか、親会社の商品を扱う際には外部の専門家にも意見を求めたという。
小村氏は「親会社に忖度せず、第三者から見てもフェアな条件や販売量であることを担保する」と説明する。

また、メタプラネット以外の企業が発行する社債についても、取扱いを縮小する考えはない。小村氏は「むしろより強化していきたい」とした上で、「メタプラネットの社債だけを扱っていても、日本の社債市場を本当に開拓していくことにならない」と語る。
Siiibo証券はメタプラネット傘下に入るまでに40社以上の社債発行を支援してきた。今後は取り扱う企業を100社、200社と増やしていきたいという。
さらに、社債のセカンダリー市場(二次流通)の拡大も進める。現在の月間取引額は数千万円規模だが、社債の発行規模が数百億円単位まで広がれば、満期前に売却して資金化したい投資家も増えるとみている。小村氏は、月間取引額を「まずは数億円規模にしたい」と話した。
米Superplanetとの連携は「協議はこれから」
メタプラネットが米国で進める「Superplanet(スーパープラネット)」構想と、メタプラネット証券の関係も注目点だ。
メタプラネットは2026年8月、米国でビットコイントレジャリー事業を展開するSuperplanet構想を発表した。日本で金融商品を扱うメタプラネット証券が、今後どのような役割を担うのか。
ただ、小村氏によると、現時点では両者の連携は前提にはなっていないという。

小村氏自身、Superplanetについては公表前には知らされていなかった。「インサイダー情報にあたるため、私自身も公表で知りました」と振り返り、公表後もメタプラネット証券との連携について深く話し合っているわけではないと説明する。
また、メタプラネット証券が持つ金融商品取引業のライセンスは、日本の投資家にサービスを提供するためのものだ。米国の投資家を巻き込むような展開について、小村氏は「もう少し先」と話す。
そのうえで、Superplanetについては「今のメタプラネット証券とのシナジーを前提とした協議はこれから」との認識を示した。
一方で、メタプラネットとの商品開発そのものは活発になっているという。グループ入り後は、メタプラネット側から「こんな商品を作れないか」と相談を受ける機会も多く、社債以外の商品が生まれる可能性についても、小村氏は「将来的には検討もあり得る」と話した。
|取材・文:平木 昌宏
|撮影:橋本祐樹
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