●今週は米国の求人、物価、景気、雇用の指標が相次ぐ。ウォーシュ議長率いるFRBの10月の判断を占う一週間だ。
●低金利を求めるトランプ氏と根強いインフレ。その間で変わる金利・ドルと、ビットコインの現物需要に注目したい。
米国時間9月28日から10月2日にかけて、市場は重要な経済指標の発表をほぼ毎日迎える。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日に政策金利を0.25%ポイント引き上げ、3.75~4.00%とした。次の連邦公開市場委員会(FOMC)は10月27~28日。今回の指標は、その会合で追加利上げが必要かを考える材料になる。
物価と雇用を一週間で確かめられる
週明けの28日月曜日、米株式市場の通常取引は米東部時間午前9時30分、日本時間午後10時30分に始まる。ダラス連銀の製造業調査は米東部時間午前10時30分、日本時間午後11時30分に発表。イラン情勢や原油価格の変動には決まった発表時刻がなく、週を通じて目を離せない。
29日火曜日の米東部時間午前10時、日本時間午後11時には、8月のJOLTS求人件数が発表される。求人が増えれば企業の労働需要の強さを、減れば採用の勢いの鈍化を示唆する。同時刻には9月の消費者信頼感指数も公表される。
30日水曜日は、米東部時間午前8時15分、日本時間午後9時15分に9月のADP民間雇用統計、米東部時間午前8時30分、日本時間午後9時30分に8月の個人消費支出(PCE)物価指数と4~6月期国内総生産(GDP)の確定値が続く。PCEでは、原油などの影響を受ける総合指数に加え、食品とエネルギーを除いたコア指数、個人消費の動きを見たい。GDPは過去の四半期の確定値であり、足元の変化をつかむうえでは物価と雇用のほうが重要になる。
10月1日木曜日は米東部時間午前8時30分、日本時間午後9時30分に週間の新規失業保険申請件数、米東部時間午前10時、日本時間午後11時に9月のISM製造業景況指数。8月のISM総合指数は54.6だったが、今回は製造業の雇用や仕入れ価格にも注目したい。そして2日金曜日、米東部時間午前8時30分、日本時間午後9時30分に9月の米雇用統計が発表される。非農業部門雇用者数、失業率、平均時給が週の締めくくりとなる。
景気の強さがFRBの選択を難しくする
9月に公表されたFRB参加者の見通しでは、2026年末の実質GDP成長率の中央値は2.3%、失業率は4.1%、PCE物価上昇率は3.7%。景気と雇用が大きく崩れない一方、インフレは目標の2%を上回る姿を描く。年末の政策金利見通しの中央値は現行水準より0.25%ポイント高いが、これは参加者の見通しであり、ウォーシュ議長個人の予測でも、10月の利上げの約束でもない。
景気を支えるのは、AI関連の設備投資や底堅い個人消費だ。ただし、投資が盛んな分野と、金利負担に弱い住宅などでは景色が異なる。今週のGDP確定値が好調でも、それは4~6月の姿。8月の求人と9月の雇用も合わせて、景気の強さが今も続くかを確かめる必要がある。
ウォーシュ議長は何を重視するのか
ウォーシュ議長は8月の講演で、PCEで測る2%の物価目標を明確に掲げ、政策判断では古い数字や単発の変動より持続する傾向を重視すると述べた。好調な月次の物価指標だけでインフレ鈍化と判断せず、値上がりが広い品目に及んでいるかも見ている。労働供給の伸びが鈍い現在は、雇用者数の増加が小さくても、直ちに労働市場の悪化を意味しないという見方だ。
同氏は将来の金利の道筋を早くから約束する姿勢にも慎重だ。市場参加者にとって重要なのは、PCEが予想を上回ったかだけではない。コア指数や消費の中身、失業率、賃金、原油価格まで見たとき、インフレが目標へ向かうという確信が強まるかである。
トランプ氏が求める低金利との距離
ウォーシュ氏を議長に指名したのはトランプ大統領だ。そのトランプ氏は9月16日の利上げ発表後、米国の金利は「1%以下」であるべきだと投稿し、速やかな引き下げを求めた。だが、ウォーシュ議長の下で行われた同日の0.25%ポイントの利上げは全会一致だった。ウォーシュ氏自身も議会証言で、金融政策を決めるFRBの独立性に言及している。指名した大統領の希望と、FRBの実際の判断は分けて読む必要がある。
政権の政策と国際情勢も、物価と景気を同時に揺さぶる。FRBの報告書は、関税引き上げが一部の輸入品の国内価格を押し上げ、中東情勢に伴う原油供給の制約がエネルギー高につながったと分析している。原油高で物価が上がり、家計の購買力は下がるなら、利上げも景気への配慮も必要になる。今週発表される8月PCEには、直近の原油価格の動きがすべて反映されるわけではない。
なぜビットコインに影響するのか
物価が予想以上に高く、雇用も堅調なら、追加利上げ観測が強まりやすい。米国債の利回り、とりわけ物価変動を差し引いた実質金利が上がると、利息を生まないビットコインを保有する機会費用は増える。ドル高や借り入れコストの上昇も、リスク資産への資金を細らせ得る。これは想定される市場の反応であり、指標からBTC価格が機械的に決まるわけではない。
逆に、物価が落ち着いて雇用が緩やかに減速すれば、利上げ観測が後退し、ビットコインには追い風となり得る。ただし雇用が急速に悪化すれば、金利低下を歓迎するより先に景気後退を警戒して売る動きも起きる。原油高と景気減速が重なる場合も、FRBには難しい局面だ。「弱い数字ならビットコインは上がる」とは言い切れない。
今週は「予想との差」と資金の動きを見る
市場を動かすのは数字の良し悪しだけではない。事前予想からのずれと、それを受けた米国債利回り、ドル、10月の利上げ観測の変化だ。ビットコインでは米現物ETFの資金流出入や取引所へのBTC流入も見たい。金利の逆風が強まっても現物の買いが続くのか、利上げ観測が和らいでも買いが増えないのかで、相場の意味は変わる。
先物の建玉が急増して価格だけが跳ねる場合は、借り入れを使った短期売買の影響も考えたい。値動きを読む順序は、指標の予想差 → 金利・ドルの反応 → BTCの現物需要と先物の動き。それぞれを切り分ければ、政策への期待だけで上がっているのか、買いが伴っているのかを見極めやすい。
10月の利上げを今週だけで決めつけるのは早い。10月14日には9月の消費者物価指数(CPI)も控える。まずは水曜日のPCEと金曜日の雇用統計を軸に、物価・雇用・金利・実際の買い需要を一つずつ確かめたい。上昇にも下落にも対応できる余力を残しておくことが、今週の相場と向き合ううえで大切だ。
ショート動画
今週、ビットコインは動く?米重要指標とFRBの判断
https://youtube.com/shorts/EIfSCZw5FkM
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