Bitcoin市場に、大きな変化が起きている。
CryptoQuant創業者兼CEOのKi Young Ju氏は8月21日、Bitcoinについて「弱気相場でこのような上昇が起きる場合、通常は底が入ったことを示す。調整はあり得るが、弱気局面はほぼ終了したと思う」との見方を示した。
結論から言えば、この見方を支持するデータは、この数日で急速に増えている。ただし、「約6万ドルが最終底値だった」と断定するにはまだ早い。現在は、弱気相場終了の可能性が一気に高まったものの、本格的なトレンド転換を確認する重要局面と考えるのが適切だろう。
6週間のレンジを突破、BTCは一時7万9400ドルへ
Bitcoinは7月上旬以降、おおむね6万2000~6万6900ドルのレンジで推移してきた。しかし8月19日から20日にかけてこのレンジを上方突破すると、一気に7万ドルを超え、21日には一時7万9400ドルまで上昇した。
週初からの上昇率は約24%に達した。重要なのは、単純に「価格が大きく上昇した」ことではない。
今回の上昇では、
・現物需要の改善
・パーペチュアル市場の需要改善
・米国Bitcoin ETFへの資金流入
・重要なオンチェーン上のコストベース回復
・長期金利とドルの低下
・巨額のショートポジション解消
がほぼ同時に発生している。
Ki氏自身も8月20日、「2025年10月のATH以来初めて、Bitcoin需要が現物とパーペチュアルの双方でプラスになった」と指摘しており、その翌日に弱気相場終了へ見方を転換している。
つまり今回の発言は、単にチャートを見て「強そうだ」と判断したものではなく、CryptoQuantが観測する需要構造の変化が背景にあると考えられる。
オンチェーンで起きた重要な「コストベース奪回」
今回の上昇で特に注目したいのが、Bitcoinが重要なオンチェーン上の水準を回復したことだ。

8月19日に示したデータでは、Short-Term Holder Cost Basisは約6万8500ドル、True Market Meanは約7万5800ドルだった。当時のBTC価格はこれらを下回っており、市場を投げ売り圧力が残る「capitulation」の状態だった。
ところが、そのわずか2日後にBitcoinは7万9400ドルまで上昇した。これは、短期保有者の平均的な取得価格だけでなく、市場全体の重要なコストベースまで一気に奪回したことを意味する。
弱気構造から抜け出すための重要な条件の一つが満たされたと考えられる。

ただし、True Market Meanなどのオンチェーン指標は固定された価格ではなく、日々変化する。今後、この水準の上で価格が定着できるかが重要になる。
ただのショートスクイーズではない

今回の急騰では、ショートスクイーズも大きな役割を果たした。Bitcoinがレンジを突破した際、暗号資産市場では24時間で約30億ドル規模のショートポジションが清算された。
BTCだけでも約16億7000万ドルに達しており、6万5000ドル台から7万ドル台への急加速には、空売り勢の強制的な買い戻しが大きく影響したと考えられる。
そのため、
「20%以上上昇したから底打ちした」
という判断だけでは不十分だ。
しかし今回重要なのは、デリバティブだけではなく現物側にも資金が入っていることだ。
米国Spot Bitcoin ETFには8月17~21日の5営業日で、
8月17日 +2億9750万ドル
8月18日 +1億8930万ドル
8月19日 +5億1720万ドル
8月20日 +6億630万ドル
8月21日 +3億750万ドル
と、合計約19億1800万ドルが純流入した。
ショート清算による買い戻しは一時的な需給要因だが、ETFへの資金流入は現物Bitcoinにつながる実需を示す。
したがって今回の上昇は、
マクロ環境の変化 → レンジ突破 → ショートスクイーズ → ETF・現物需要の追随
という複数の要因が重なった可能性が高い。
「QE再開でBitcoin上昇」は正確ではない
今回の上昇では、米国のマクロ環境にも変化があった。米財務省は長期国債を対象とするLiquidity Support Buybackについて、1回あたりの上限を20億ドルから少なくとも40億ドルへ引き上げる方針を発表した。
これを受けて長期金利とドルが低下し、Bitcoinを含むリスク資産が上昇した。ただし、一部SNSで言われている「米国がQEを再開した」という理解は正確ではない。今回の措置はFRBによる量的緩和ではなく、米財務省による国債市場の流動性支援・債務管理オペレーションだ。
したがって、
長期金利低下 → ドル低下 → 金融環境の緩和 → リスク資産への追い風
という短期的な効果は考えられるものの、本格的な金融緩和への政策転換が確認されたわけではない。今回のマクロ変化はBitcoin上昇の「触媒」ではあっても、強気相場を保証するものではない。
Ki Young Juの発言を絶対視してはいけない
Ki氏はオンチェーン分析において大きな影響力を持つ人物だが、過去の市場予測をそのまま売買シグナルとして扱うべきではない。
2025年3月にはBitcoinの強気サイクル終了を宣言し、「今後6~12カ月は弱気または横ばい」と予測したが、その約2カ月後に本人が判断の誤りを認め、見方を修正している。
さらに2026年5月にも、弱気相場が2027年初頭まで続く可能性を指摘していた。今回の発言は、「以前から6万ドルが底だと予測していた」という話ではない。むしろ、市場データが急速に変化したため、自らの弱気シナリオを修正したと見るべきだ。
これはKi氏の予測能力そのものよりも、CryptoQuantが観測する需要データがそれだけ大きく変化したことを示している。
2026年5月にも「強い反発」は失敗している
それでも「底打ち確定」と判断できない理由がある。実は2026年春にも、Bitcoinは約6万ドルから8万2000ドル付近まで大きく反発した。
しかしその後、この上昇を構造的なトレンド転換ではなく「bear-market bounce」だったと評価している。つまり、弱気相場の中で20~30%上昇すること自体は、底打ちの証明にはならない。
今回が5月と本当に違うのか。その答えを決めるのは上昇率ではなく、現物需要、ETF資金、オンチェーン利益構造、そして重要コストベースを維持できるか
である。
今後の重要ポイントは「7万5000~7万6000ドル」
今後、特に注目したいのが7万5000~7万6000ドル付近だ。これは8月19日時点のTrue Market Mean約7万5800ドルに近い。今回奪回したこの水準を維持できれば、弱気構造からの転換を示す重要な材料になる。
さらに7万9400~8万ドルの直近高値を突破し、5月の上昇が失速した8万2000~8万3000ドル付近まで現物需要を伴って突破できるかが次の焦点となる。一方、再び6万8500ドル前後のShort-Term Holder Cost Basisを明確に下回れば、弱気構造への回帰を警戒する必要がある。
つまり、7万5000~7万6000ドルを維持 → 8万ドル突破 → 8万2000~8万3000ドル突破という動きになれば、今回の上昇が2026年5月のbear-market rallyとは異なる可能性がさらに高まる。
結論──「底打ち確定」ではなく「底打ち仮説が有力になった」
Ki Young Ju氏の「弱気相場はほぼ終了した」という発言には、以前よりはるかに強いデータ上の裏付けがある。
特に重要なのは、オンチェーン需要の反転、約19億ドルのETF純流入、重要コストベースの奪回、マクロ環境の改善、そして極端な弱気ポジションの解消が同時に起きたことだ。
一方で、今回の上昇には史上最大級のショートスクイーズが含まれており、筆者が重視する売り手の完全な疲弊についても、まだ最新データで確認する必要がある。
したがって現時点では、「約6万ドルが最終底値だった可能性は大きく上昇した。しかし、弱気相場終了が完全に確認されたわけではない」という評価が最も妥当だろう。
Ki氏が強気になったから重要なのではない。これまで弱気だったKi氏が見方を変えるほど、Bitcoinの需要構造そのものが変化したことが重要なのである。
今後は価格だけではなく、ETF純流入、Coinbase Premium、Spot Apparent Demand、Realized Profit/Loss Ratioを追う必要がある。
これらが改善を続けながらBitcoinが7万5000~7万6000ドル以上に定着するなら、今回の上昇は単なるbear-market rallyではなく、2026年のBitcoin市場における本格的なレジーム転換だった可能性が一段と高まるだろう。
ショート動画
「BTC弱気相場はほぼ終了」──Ki Young Ju発言をデータで検証
https://www.youtube.com/shorts/J6YCJooQ7sc


