今週の市場は、「様子見が続いていた市場に買い需要が戻り、投資家心理が急速に強気方向へ傾いた一週間」だった。
ビットコインは週前半、62,000ドル前後(約1,000万〜1,050万円)で方向感の乏しい展開が続いていたが、19日以降に上昇が加速。20日に70,000ドルを突破すると、その後も買いが続き、22日には一時79,000ドルに到達した。円建てでも1,200万円台へ大きく上昇し、一時約1,260万円をつける場面があった。6〜7週間続いたレンジ相場を上抜け、明確に一段上の価格帯へ移行した一週間となった。
重要なのは、単に価格が上がったことではない。これまで不足していた「現物需要」が戻り始め、ETF、現物、先物の買いが同じ方向を向き始めたことにある。
今週最大の変化は、「売り手が減った市場」から「買い手が増えた市場」へ構造が一段進んだことである。
週初にはETF流出や米国現物需要の弱さが残り、価格が上昇するには材料不足だった。しかしその後、現物需要を示すApparent Demandがプラス方向へ改善し、現物と無期限先物の需要も同時に強まった。さらに米国現物BTC ETFにも大規模な資金が戻り、価格上昇を実際の資金フローが支える形になった。
これは4〜5月に見られた先物中心の上昇とは異なる。
行動ファイナンスの観点では、長期間レンジが続くと投資家は「どうせまた上値で売られる」と学習する。しかし、その前提だった65,000〜68,000ドルの抵抗帯を突破すると、今度は「乗り遅れたくない」という心理へ急速に変化する。
今回の上昇ではショート清算も大きく発生しており、すべてが新規買いだったわけではない。ただ、強制的な買い戻しだけではなく、ETFと現物需要が同時に改善している点はこれまでとの重要な違いである。
市場心理は「弱気・様子見」から、明確に強気方向へ移動した。
数日前まで投資家が警戒していたのは「買い手が戻らないこと」だった。しかしBTCが重要な価格帯を突破したことで、今度は「上昇に乗り遅れること」が意識され始めている。
ここで注意したいのがFOMOである。
人は価格が安いときより、上昇を確認してから買いたくなる傾向がある。今回も急騰後に短期参加者の楽観が強まりやすい。
ただし、楽観の高まりそのものを市場の強さと混同してはいけない。短期間の急騰では利益確定売りも増える。実際、短期保有者が利益圏へ戻ったことで、市場へ移動するBTCも増加している。
「上がったから強い」のではなく、その利益確定を新しい需要が吸収できるかが次の焦点になる。
興味深いのは、今回のBTC上昇が完全なリスクオン環境で起きたわけではないことである。
米国では長期金利が依然高く、原油価格も高値圏にある。米国株が下落する場面でもBTCは上昇し、株式市場に対する相対的な強さが改善した。
一方、米財務省による長期国債市場への流動性支援を受け、長期金利とドルが一時低下したことはBTCの追い風となった。
ただし、これをもってBTCが安全資産になったと判断するのは早い。FRBは依然インフレを警戒しており、原油高が続けば金利上昇が再びリスク資産を圧迫する可能性がある。
現在は、「マクロが全面的に良いからBTCが上がった」のではなく、BTC固有の需給改善がマクロの逆風を上回り始めた局面と考える方が自然だろう。
来週、確認したい条件は三つある。
第一に、70,000ドルを超えた後もETFへの資金流入が継続するか。
第二に、ショート清算が一巡した後も、Coinbaseを含む現物市場の買い需要が残るか。
第三に、Open InterestやFunding Rateだけが急増せず、現物主導の上昇を維持できるかである。
今、期待しすぎるべきではないのは、「レンジを突破したから、このまま一直線に上昇する」という見方だ。
急騰によって利益確定売りは増え、取引所には売却可能なBTCも残っている。また、ステーブルコイン流動性は価格上昇ほど強く回復していない。
今週、市場は確かに変わった。
しかし、次に問われるのは上昇率ではない。
「上がった価格でも、新しい買い手が買い続けるのか」。
来週は、反発を確認する段階から、その上昇の持続性を検証する段階へ移ることになる。
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