・Lido(リド)のコントリビューターらは、ステーキング収益の大幅な低下によって小規模バリデーターがネットワークから撤退する可能性があると警告し、イーサリアム開発者にEIP-8363の再検討を求めた。
・イーサリアム(ETH)のステーキング量は4200万ETHを突破し、総供給量の34%以上に達した。
・リドはイーサリアムのステーキング市場全体の20.9%を占めており、Sharplink(シャープリンク)は新たに2億ドル相当のETHをリド経由でステーキングする計画だ。
リド、EIP-8363がイーサリアムのステーキングエコシステムを不安定化させる可能性を警告
リドのコントリビューターらはEIP-8363への批判を強めており、バリデーター運営の経済性や分散性、分散型金融(DeFi)への影響をコミュニティが十分に理解する前に、イーサリアムの発行政策を変更すべきではないと主張している。
EIP-8363は、イーサリアムのステーキング参加率が過度に上昇することを抑えるため、新たな発行曲線を導入することを提案している。この案では、ステーキング量が増えるほどバリデーター報酬に対する控除・バーン率が高まり、固定された飽和水準に達すると、発行によるバリデーター報酬が実質的に相殺される。
リドのコントリビューターらは8月14日に公開したコメントで、イーサリアムのステーキング政策や発行政策の変更そのものに反対しているわけではないと説明した。一方、コントリビューターらは、エコシステム全体で十分な検証が行われないまま、今回の提案が性急に進められていると指摘した。
コントリビューターらは、まず何を解決すべき問題とするのか、改革の目的は何か、そしてバリデーター、ソロステーカー、DeFi参加者、ステーキングプロバイダーがどのようなトレードオフまで受け入れられるのかについて、合意を形成すべきだと主張した。
一方、EIP-8363ではHegota(ヘゴタ)アップグレードのPFI期限を目前にして具体的な発行曲線が提示されたため、その影響を評価する時間が限られていると指摘している。
リド、小規模事業者が撤退する一方で大手カストディ事業者は採算を維持する可能性を指摘
リドのコントリビューターらは、発行によるステーキング報酬をゼロに近づければ、インフラ費用や税金、そのほかの経費を考慮した場合、独立系事業者にとってバリデーター運営が採算に合わなくなる可能性があると主張した。
その結果、大手カストディ事業者や機関、専門のステーキングプロバイダーはステーキングを継続する一方で、小規模事業者が撤退する可能性がある。
「懸念すべきなのは、イーサリアムのステーキング比率が実際に50%(あるいは設定された別の基準値)に達するかどうかだけではない。コストや税金を差し引いた事業者の実質的な収益がゼロ近辺、あるいはマイナスに落ち込む転換点が生じることも問題だ」──リド、2026年8月14日
コントリビューターらは、ステーキング参加率が低下すれば自動的にネットワークの強靭性が高まるとの見方にも疑問を呈した。
大手機関は、ステーキングが規制上の要件への対応や顧客維持戦略などを支えているため、報酬水準が低下してもステーキングを継続する可能性がある。
「大手カストディ事業者、機関、専門のステーキングプラットフォームは、報酬水準が大幅に低下してもステーキングを継続する可能性がある。ステーキングが、より広範なカストディ、商品、規制対応、顧客維持戦略の一部となっているためだ。そうなれば、フォーク選択やアテステーション操作などによる深刻な攻撃が容易になり、その発生可能性も高まる恐れがある。その結果、ソーシャルスラッシングが必要となる可能性も、低下するどころか高まることになる」
リドは、小規模バリデーターが撤退する一方で機関系事業者が残れば、ステーキング比率全体が低下したとしても、イーサリアムのステーキングが一部の事業者にさらに集中する可能性があると警告した。
リドは代替案として、イーサリアムの通貨政策に恒久的な変更を加える前に、バリデーターの参入キューを制限する仕組みや、ステーキング量に上限を設ける仕組みなどを検討すべきだと提案した。
イーサリアムのステーキング比率が34%突破、2027年6月ごろに6025万ETHの飽和水準へ
こうした議論が続く一方で、イーサリアムのステーキング参加率は上昇を続けている。ValidatorQueueによると、ステーキングされているETHは8月16日に4200万ETHを突破し、イーサリアムの総供給量の34%以上に達した。
イーサリアムのステーキング比率は、2026年初めの約29%から上昇している。現在は月に約1.5ポイント、ETH換算で約175万ETHのペースでステーキング比率が上昇しており、このペースが続けば、約10カ月後の2027年6月ごろにはEIP-8363が設定する6025万ETHの飽和水準に達する計算だ。
リドは依然としてイーサリアム最大のステーキングプロバイダーで、ステーキング量は883万ETH、バリデーター数は約27万6000に上る。市場シェアは20.9%に達しており、ETHの発行政策を巡る議論において最も重要な参加者の一つとなっている。

Dragonfly(ドラゴンフライ)のデータサイエンス責任者で、著名なブロックチェーンデータサイエンティストでもあるムリエ氏がデューン・アナリティクスで公開したステーキングデータによると、リド経由でこれまでに発生したステーキング報酬は約100万ETHに上る。
リドに続く上位4事業者のBinance(バイナンス)、Ether.Fi(イーサファイ)、Kraken(クラーケン)、Coinbase(コインベース)の市場シェアは合計18.9%で、上位5事業者だけでイーサリアムのステーキング市場の40%を占めている。
イーサリアムを財務資産として保有するSharplink(シャープリンク)は8月13日、2億ドル相当のETHをLido(リド)を通じてステーキングする計画を発表した。シャープリンクはwstETHを受け取り、Anchorage Digital(アンカレッジ・デジタル)がカストディを担う。


