ローソンとネットスターズは8月17日、東京・大崎のローソンゲートシティ大崎アトリウム店で、ネットスターズの店舗向けステーブルコイン決済サービス「Stablecoin Pay(ステーブルコイン・ペイ)」と既存のPOSレジを連携させる実証実験を行った。
MetaMask(メタマスク)に保有するUSDC、USDT、JPYCを使い、決済速度や店舗オペレーション、利用者の操作性などを検証した。NADA NEWSは現地で決済の流れを確認し、両社に実用化に向けた課題を聞いた。

実証に対応したのは、計7通りの組み合わせ。ドル建てのUSDCとUSDTはそれぞれSolana、Morph、Polygonの3チェーンで、円建てのJPYCはPolygonチェーンで利用できた。ローソンでは6日にもHashPort Walletに保有するJPYCを使ったPOSレジ連動決済の実証が行われているが、今回はドル建てステーブルコインの採用やMetaMaskへの対応、複数のブロックチェーンに拡張された点が異なる。
普段のバーコード決済と同じ流れでMetaMask決済完了

決済の流れは、普段のバーコード決済とほとんど変わらない。
利用者はPOSレジで商品のバーコードを読み取り、決済方法として既存の「バーコード決済」ボタンを押す。

その後、利用者はMetaMask内のブラウザからネットスターズの決済ページを開き、支払い用バーコードを表示する。POSレジのスキャン端末でバーコードを読み取り、利用者がスマートフォン上で内容を確認して承認すると、決済が完了する。

レジに提示するのは、MetaMaskの通常の送金・受取画面ではない。MetaMask内のブラウザで開いたネットスターズの決済ページに、POSレジで読み取るためのバーコードが表示される仕組みだ。
NADA NEWSが確認した決済では、支払い用バーコードを読み取ってから5秒程度で処理が完了した。

ネットスターズ取締役COO兼事業統括本部長の長福久弘氏は「決済では、やっぱりスピードが非常に重要だと思っています。その部分をクリアできたのは、相当良かったと思います」と手応えを語った。
店舗側では、今回の実証のために新たな決済ボタンを追加していない。既存の「バーコード決済」ボタンを押して利用者のバーコードを読み取ると、POSレジが決済手段を判別し、ネットスターズのシステムへ処理を送る。

ローソン 金融カンパニー兼マーケティング戦略本部部長の田村太郎氏は、今回の実証では新たな決済ボタンを増やさず、従来のバーコード決済と同じ仕組みを利用したと説明。今後、決済手段が増えた場合も、POSを活用して対応する考えを示した。
ステーブルコインをブロックチェーン上で送るには、通常、ガス代と呼ばれる取引手数料が必要になる。例えばSolanaを利用する場合は、ガス代の支払いに使うSOLを別途用意しなければならない。
今回の仕組みでは、ブロックチェーン上で発生するガス代をネットスターズが一時的に立て替える。このため、利用者はSOLなど各チェーンのネイティブトークンを用意する必要がない。
ただし、ネットスターズがガス代を最終的に負担するわけではない。立て替えたガス代は、利用者が決済時に支払う「ハンドリング手数料」に組み込まれるという。
利用者の支払い画面には、商品価格に相当するステーブルコインとハンドリング手数料を合わせた総額が表示される。利用者はその金額を確認し、承認して支払う。ガス代がSOLなどで別途請求されるのではなく、ネットスターズへの手数料としてまとめて支払う形だ。

USDCやUSDTなどドル建てステーブルコインの場合は、日本円との為替に伴う費用もハンドリング手数料に含まれる。必要な処理は利用するウォレットやブロックチェーンによって異なるため、手数料も変わる可能性がある。具体的な利用者向け手数料は、今回の取材では明らかにされなかった。
なお、ネットスターズが「Stablecoin Pay」の加盟店向けサービスで公表している決済手数料は0.98%。これは店舗側が負担する手数料で、利用者に課されるハンドリング手数料とは異なる。
円建てのJPYCでは為替に伴う費用は発生しないが、ブロックチェーン上のガス代は発生する。このガス代についても、ネットスターズが一時的に立て替えたうえで、利用者のハンドリング手数料に含める設計となる。
MetaMaskで決済ページを開く「ひと手間」
レジでバーコードを読み取ってからの処理はスムーズだったが、利用者が支払い用バーコードを表示するまでにはひと手間かかる。
今回の実証では、MetaMaskを起動するだけでは支払えない。初回利用時には、MetaMask内のブラウザからネットスターズの決済ページへアクセスする必要がある。


一度ページを開けば、2回目以降はブラウザの履歴やタブからアクセスできるため、毎回URLを入力する必要はない。ただ、決済アプリを開けばすぐにバーコードを表示できる普段のQRコード決済と比べると、操作は複雑だ。

長福氏は、MetaMaskは開発しやすかったため最初に対応した一方、利用者の使い勝手には改善の余地があるとの認識を示した。
ネットスターズによると、ウォレット内にネットスターズのステーブルコイン決済機能を組み込み、URLを入力せずに決済画面を開ける形を検討しているウォレット事業者もあるという。
複数のブロックチェーンへの対応も、決済の裏側を複雑にする要因となる。同じUSDCやUSDTでも、SolanaやPolygonなど、発行されるブロックチェーンごとに別々に処理する必要があるためだ。
田村氏は、複数のコインやチェーンを何らかの形で一本化できれば扱いやすいと指摘。ブロックチェーンの仕組みは流通事業者にとって専門的であるため、ウォレット事業者などとの連携が必要になるとの認識を示した。

長福氏は、支払いに必要なチェーンへの変換や、それに伴うコストをネットスターズ側で取り扱い、決済を簡素化する考えを説明した。
また、長福氏は世界で流通するステーブルコインの大半がドル建てであると説明。ネットスターズとして、USDTやUSDCを日本で利用できる環境の整備に注力しており、特にインバウンド決済で需要が高いとみているという。
円建てステーブルコインについては、利用者や加盟店のニーズを見極めながらサービスを設計していく考えを示した。
「Stablecoin Pay」は7月に提供を開始しているが、今回の実証は、同サービスをローソンの既存POSレジと連携して利用できるかを検証する取り組みだ。ローソンへの本格導入が決まったわけではない。
田村氏は、ローソンが実証に取り組む背景について「新しい決済に対する備え」と説明。決済サービスの選定では、利用者の多さが重要になるとした。
本格導入の時期については、利用者や店舗のニーズを見ながら判断するとし、「今、いつというのは特に頭の中にはない」と述べた。
今回の実証では、支払い用バーコードを表示した後の決済は、普段のバーコード決済に近い速度と操作で完了した。店舗側も新たな端末や専用ボタンを必要とせず、既存のPOSレジを利用できた。
一方、利用者側には、決済ページへのアクセスや複数チェーンの違い、支払額に加わる手数料といった課題が残る。ローソンでの本格導入には、こうした仕組みを利用者に意識させず、普段のQRコード決済に近い感覚で利用できるかが焦点となりそうだ。
|取材・文:平木 昌宏
|撮影:NADA NEWS編集部


