「ローソンでステーブルコイン決済」と聞くと、新しい決済端末や大掛かりなシステム改修を思い浮かべるかもしれない。
しかし、ローソンが8月6日に実施した国内初のPOSレジでのステーブルコイン決済実証で、実際に体験した印象は違った。利用者から見ても、店舗側から見ても、従来のキャッシュレス決済との違いに気づかないほど自然だった。
NADA NEWSは実証実験を体験するとともに、ローソン、そして実験に協力したHashPortとキャナルペイメントサービスに話を聞いた。
QRコード決済とほとんど変わらない
実証参加者は、HashPort Walletに表示したバーコードをPOSレジで読み取ってもらい、スマートフォン上で決済を承認するだけで支払いを終えた。
実際に体験した印象では、使い勝手は従来のQRコード決済とほとんど変わらない。認証ボタンを押す操作が一つ増える程度で、決済そのものはスムーズに完了した。

「将来の普及を見据え、早めに取り組みたい」ローソン春田氏

ローソンが今回の実証に参加した理由について、同社理事執行役員 金融カンパニープレジデントの春田英彦氏は、キャッシュレス決済の拡充を進める中で、将来のステーブルコイン普及を見据えた取り組みだと説明する。
「ステーブルコインはまだ日本ではそこまで認知されていないが、今後広がりが期待できる。早めに目を付け、一緒に取り組みたいという思いで、今回、実証実験に手を挙げた」
一方で、本格導入については慎重な姿勢も示した。
返金時のオペレーションや加盟店である店舗オーナーによる運営、お客様の利便性などを十分に確認したうえで判断するとし、「具体的な時期はまだ言及できない」と述べた。
「普通に使えることが重要」HashPort吉田氏

今回の実証で、ブロックチェーンとの接続などの技術面を担ったHashPort代表取締役CEOの吉田世博氏は、「完全なPOS埋め込み」と「ガスレス」を実証実験の特徴として挙げる。
吉田氏は、店員さんが特別な操作をすることなく、「普段通りに使えるところが大きなポイント」と説明。「日本初の取り組みであり、誰もやったことがないガスレスかつ完全なPOSレジ埋め込みを実現できた」とその成果を述べた。
ガスレス決済については、HashPort Walletがガス代(取引手数料)を負担するガススポンサーとなる仕組みを採用し、利用者がガス代を意識することなく利用できるようにした。決済速度への影響もほとんどないという。
「○○Payが一つ増える感覚」キャナルペイメントサービス清水氏
今回の実証で印象的だったのは、店舗側にも大きな変化がなかったことだ。

決済ネットワークを担当したキャナルペイメントサービス代表取締役社長の清水亮佑氏は、今回の対応について「○○Payを追加することとあまり変わらなかった」と話す。ブロックチェーンとの接続はHashPortが担い、キャナルペイメントサービスはPOSレジとHashPortをつなぐネットワークとして機能した。
さらに、POSレジ自体についても「改修はほとんど行っていない」という。
「POSの改修はほとんど行わず、POSレジとHashPortの間に入るキャナルペイメントサービスが、システムの違いを吸収した。店舗からすると、○○Payが一つ増えるという感覚で導入していただけたと思う」
「POSレジを変えない」という発想

今回の実証実験が目指したのは、新しい決済端末を導入することではない。
利用者は、普段のQRコード決済とほとんど変わらない操作で支払いを行う。店舗側も、新しいレジや大規模なシステム改修を行うことなく、既存のPOSレジに新たな決済手段を追加するという発想だった。
ステーブルコインは、新しい金融インフラとして語られることが多い。しかし、社会に普及するためには、利用者や店舗に「新しさ」を意識させないことも重要になる。
今回のローソンでの実証実験は、まさにその可能性を示した。変わったのは決済の裏側であり、利用者と店舗が目にする体験は、ほとんど変わらなかった。
もし、既存のPOSレジをそのまま活用しながらステーブルコイン決済を追加できるのであれば、全国の店舗へ広げる際のハードルは大きく下がる。今回の実証は、ステーブルコインも既存のPOSレジを活用しながら、その道を歩める可能性を示したと言える。
フォトレポート:JPYC決済はこう進んだ
当日、ローソンのPOSレジで、JPYC決済を体験した様子を紹介する。
1. POSレジで商品のバーコードを読み取る

2. HashPort Walletで支払い用バーコードを表示

3. 支払い用バーコードをPOSレジで読み取る

4. 決済内容を確認

5. 「決済する」をタップ

6. 決済処理

7. 決済完了

8. レシート

参考:ローソン公表資料「POSレジにおけるステーブルコイン決済実証実験の流れと仕組み」
今回の実証実験では、図の中の「ウォレット事業者(W)」がHashPort、GW事業者(G)がキャナルペイメントサービスとなる。

② 利用者は自身のスマートフォンに表示させたデジタルウォレットアプリを起動。
③ ウォレット事業者は利用者の保有するステーブルコインの残高を表示する。
④ 利用者はお支払い用のバーコードをスマートフォンアプリに表示。
⑤ スキャン端末でスマートフォンに表示させたバーコードを読み取る。
⑥ POSレジから商品金額等の決済情報をゲートウェイ事業者に送信する。
⑦ ゲートウェイ事業者はPOSレジから受信した決済情報をウォレット事業者へ送信する。
⑧ ウォレット事業者はステーブルコインの残高を確認し、取引可能の応答をゲートウェイ事業者へ返信する。
⑨ ゲートウェイ事業者は取引可能である旨の電文をPOSレジに送信する。
⑩ ウォレット事業者はお支払い後のステーブルコイン残高をスマートフォンアプリに表示する。
⑪ 利用者はスマートフォンアプリで決済の完了とステーブルコイン残高を確認する。
|取材・文:増田隆幸
|撮影:NADA NEWS編集部


