欧州中央銀行(ECB)理事のPiero Cipollone(ピエロ・チポローネ)氏は7月17日、ステーブルコインの普及が進めば、ヨーロッパの銀行はすでにモバイル決済に奪われている手数料や取引データに加え、個人預金までも失う恐れがあると警告した。
ローマで開かれた協同組合系銀行の会合で述べたもので、同氏はデジタルユーロを構造的な解決策に位置づけた。
チポローネ氏は「従来のデビットカード決済でさえ人気が薄れつつある。モバイル決済は増加し、アイルランド、オランダ、フィンランドではすでにPOSの10件に1件超を占めている」と指摘する。
さらに「今後ステーブルコインの利用が増えれば、銀行は個人預金も失うことになる」と続け、預金の流出は銀行の中核業務である経済への融資に影響を及ぼすと懸念する。
DefiLlamaのデータによると、世界のステーブルコイン市場は約3000億ドル(約48兆円、1ドル=160円換算)規模で、そのほとんどが米ドル建てだ。
皮肉にも、ECBの解決策もデジタル通貨だ。デジタルユーロは銀行を介して発行され、利息を付けず、保有上限も設けることで預金流出を防ぐ設計になっており、ECBは財務健全性への重大なリスクはないと結論づけている。
デジタルユーロは、法制化が年内に完了すれば2029年に発行される見通しだ。7月上旬に欧州議会が交渉入りを可決し、パイロット事業は2027年9月に始まる。
アメリカでは2025年に成立したGENIUS法によるドル建てステーブルコインの整備を進めており、これがヨーロッパの危機感の背景にある。
日本でも改正資金決済法に基づいて円建てステーブルコインの発行枠組みが整いつつあり、銀行預金との関係が今後の論点となる。
|文・編集:井上 俊彦
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