CLARITY法案はいまどこまで進んでいるのか。最新調査から見えた本当の課題【サンフランシスコ レポート】

エックスウィン アメリカマーケットリサーチアナリストのデリア・ロホです。

私の住むサンフランシスコ近郊のナパバレーは、世界有数のワインの産地です。今はブドウの木が静かに実りの季節を待っています。この時期の畑を見ると、「良いワインは、一朝一夕には生まれない」ということを改めて感じます。

ビットコインも同じです。

価格だけを見れば日々の上下はありますが、本当の価値は時間をかけて育まれていくもの。焦らず、積み重ねた先に大きな実りの季節がやってきます。

今年は、ナパのブドウも、ビットコインも、大きく実る秋になることを楽しみにしています。

今日は、現在アメリカの暗号資産業界で最も注目されているCLARITY Actの最新状況をお伝えします。

ここ数週間、「CLARITY法案はもうすぐ成立する」「来週には可決される」といった情報を数多く目にします。しかし、一次情報を丁寧に確認すると、実際の状況はそれほど単純ではありません。

私自身、今回あらためて議会資料や委員会資料、ホワイトハウス、SEC、CFTCなどの公開情報を確認しましたが、現時点で最も正確な表現は、「法案は大きく前進しているものの、まだ成立への最終局面には至っていない」ということです。

現在のCLARITY Actは、すでに下院を通過しています。また上院銀行委員会でも可決され、上院本会議で審議されるための準備段階に入っています。一方で、上院農業委員会では別系統の市場構造法案(Digital Commodity Intermediaries Act)が進められており、最終的には両者を一本化する作業が必要になります。

つまり、「上院で一つの法案を採決する」という単純な話ではなく、複数の法案や委員会の調整を経て、最終的な法案を作り上げるプロセスが残されているのです。

直近数日間の動きを見ても、その状況はよく表れています。

7月16日には、エリザベス・ウォーレン上院議員がトランプ大統領に対し、暗号資産関連資産の最新開示を求める書簡を提出しました。さらに翌17日には、下院金融サービス委員会がニューヨークで「CLARITY Actが金融イノベーションをどう促進するのか」をテーマに現地公聴会を開催しています。

一方で、7月18日時点の上院銀行委員会の公式スケジュールには、CLARITY法案に関する公聴会や採決の日程は掲載されていません。

私は、この「何も決まっていない」という事実そのものが重要だと考えています。

本当に採決が目前であれば、通常は議会指導部や委員会から何らかの正式なシグナルが出てきます。しかし現時点では、そうした動きはまだ確認されていません。つまり現在は、水面下で政治的な調整が続いている段階だと考えるのが自然でしょう。

Vineyard rows extending toward a distant mountain range under a colorful sunset sky with pink, orange, and purple hues.
ナパバレー

では、何が最大の障害になっているのでしょうか。

以前はSECとCFTCの権限分担や、DeFiをどこまで規制対象とするのかが最大の論点でした。しかし現在は、それ以上に政治的な問題が前面に出ています。

最大の争点は、「利益相反」と「倫理規定」です。

民主党は、大統領やその家族、議員本人が暗号資産ビジネスから利益を得る可能性について、より厳しい規制を求めています。特にウォーレン議員らは、「市場構造法を整備するのであれば、政治家自身の利益相反も同時に整理すべきだ」という姿勢を崩していません。

一方、共和党は暗号資産市場の制度整備を急ぎたい立場です。

つまり現在は、「暗号資産をどう規制するか」という技術的な議論よりも、「その制度によって誰が利益を得るのか」という政治的な議論へ軸足が移っているのです。

もちろん制度面の課題も残っています。

SECとCFTCの役割分担、デジタル資産の分類方法、DeFiプロトコルの位置付け、セルフカストディ(自己保管)の権利、AML(マネーロンダリング対策)、ステーブルコインへの報酬規制など、多くの論点について最終調整が続いています。

ただ、制度設計そのものについては、以前よりかなり方向性が見えてきました。

SECは現在、暗号資産専門のCrypto Task Forceを設置し、包括的なルール整備を進めています。CFTCも市場構造法の必要性を公に支持しています。さらに財務省のベッセント長官も、議会に対して法案成立を促す発言を行っています。

つまり行政機関全体としては、「市場構造法は必要である」という認識でほぼ一致していると言えるでしょう。

一方で、市場関係者が最も気にしているのは、上院本会議へ進むために必要な60票を確保できるかどうかです。

現在、共和党は53議席を保有しています。そのため、通常手続きで採決へ進むには、少なくとも7人程度の民主党議員の協力が必要になります。

委員会レベルでは超党派の支持を得ていますが、本会議では倫理規定や利益相反問題が票読みを左右する可能性が高く、現時点では確実な見通しは立っていません。

私自身の見立てとしては、夏季休会前に上院を通過する可能性は約20%程度です。

一方で、秋以降に修正を加えた上で成立する可能性は約50%、政治的対立が長引き成立が見送られる可能性は約30%と考えています。

短期的には政治の影響を大きく受けるでしょう。しかし、中長期で見れば、市場構造法そのものが完全に消える可能性は低いと考えています。

なぜなら、アメリカ政府は「暗号資産をどう禁止するか」ではなく、「どう制度の中へ組み込むか」という議論に、すでに大きく舵を切っているからです。

私は、この点が最も重要だと思います。

市場では価格ばかりが注目されますが、本当に大きな変化は制度の中で静かに進んでいます。

CLARITY Actは単なる暗号資産規制法ではありません。

これは、ビットコイン、ステーブルコイン、DeFi、RWA(現実資産のトークン化)、そしてオンチェーン金融を、アメリカの正式な金融インフラとして位置付けるための土台となる法律です。

だからこそ、今後数週間でどのような政治的妥協が行われるのか。そして上院本会議の日程がいつ正式に設定されるのか。この二つが、現在のアメリカ暗号資産市場を読み解く最大のポイントになると私は考えています。

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