円ステーブルコイン「JPYC」を手がけるJPYC社にも出資するアステリアが、保有する米SpaceX株の一部を売却し、約4億500万円の投資有価証券売却益を計上する見込みとなった。
SpaceXをめぐっては、IPO(新規株式公開)観測の高まりを背景に市場の関心が集まっていた。そうしたなか、アステリアはIPO直前の6月9日に株式の一部を売却。一方で、当初保有高の半数以上は引き続き保有しているという。
なぜアステリアはSpaceXに投資したのか。そして、なぜIPO前に一部を売却したのか。
そこには、同社が掲げる独自の投資戦略「4D(Data、Device、Decentralized、Design)」がある。
IPO前に一部売却、「上場後のボラティリティを勘案」
アステリアは6月9日、投資先であるSpaceX株の一部を売却。2027年3月期第1四半期において、約4億500万円の投資有価証券売却益を計上する見込みだと発表した。
NADA NEWSの取材に対し、同社は売却割合については非開示としながらも、「当初保有高の半数以上は引き続き保有している」と説明した。
IPO前に一部売却した理由については、平野洋一郎社長はNADA NEWSの取材に「上場後のボラティリティを勘案した上で、株主価値の最大化を検討した結果、上場前に売却した」とコメント。今後についても「株主価値の最大化を見据えながら、最適な売却時期を探っていく方針」と述べた。
その後、SpaceXは米国時間6月12日にナスダック市場へ上場。これを受けてアステリアは日本時間15日、IPOに伴う業績への影響については現在精査中であり、開示すべき事項が生じた場合は速やかに公表すると発表した。
注目したのはロケットではなくStarlink
アステリアがSpaceXへ出資したのは2022年1月末。投資額は約2.3億円だった。
イーロン・マスク氏率いるSpaceXといえば、ロケット打ち上げ事業のイメージが強い。しかし、アステリアが着目したのは別の事業だった。同社は2022年の個人投資家向け説明会で、SpaceXへの投資理由について「Starlink」を挙げている。
Starlinkは、地球低軌道上に多数の衛星を配置し、地球上のほぼあらゆる場所でインターネット接続を可能にする衛星通信サービスだ。従来の通信インフラが届きにくい山間部や海上、離島などでも利用できることが特徴だ。最近では複数の携帯キャリアがStarlinkを活用した通信サービスを展開している。
アステリアは今回の適時開示でも、SpaceXへの出資を決めた背景について、「4D」のうち特に「Device」領域を牽引する企業と判断したためだと説明している。同社によれば、Starlinkは人口密度にかかわらず通信環境を提供できることから、「IoTやフィジカルAIの利用範囲を大きく広げるもの」だという。
JPYCとSpaceXに共通するもの
アステリアはソフトウェア企業である一方、投資事業では独自の「4D」戦略を掲げている。
Data(データ)、Device(デバイス)、Decentralized(分散化)、Design(デザイン)の4領域を中長期的な成長テーマと位置付け、それに沿った投資を行ってきた。JPYCへの出資もその一環だ。
同社によると、SpaceXは「Data」「Device」、JPYCは「Decentralized」の領域に位置付けられるという。
一見すると、衛星通信とステーブルコインは無関係に見える。しかし同社は、両社に共通する点として「未来の社会インフラとなり得るプラットフォーム」であることを挙げる。
「SpaceX社は『Data』『Device』、JPYC社は『Decentralized』の分野において、単なる一過性のトレンドではなく、未来の社会インフラとなり得る革新性とテクノロジーを備えている。次の時代のプラットフォームになり得る企業として期待を寄せて投資を行っている」
アステリアは今回、一部売却によって利益を確定した。一方で、なお半数以上の株式を保有している。通信、AI、そしてオンチェーン金融──アステリアが見据える次世代インフラの姿も、あらためて注目されそうだ。
|文:増田隆幸



