暗号資産は非課税なのに消費税が増える? 「5%算入」で控除が減る事業者とは【泉税理士の「分離課税」解剖連載⑦】
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暗号資産の税制改正をめぐっては、税率が一律20%(復興特別所得税等を含め20.315%)になる「申告分離課税」に関心が集まりやすい。

しかし令和8年度税制改正では、消費税の取扱いも見直されている。暗号資産の売却は改正後も消費税が「非課税」のままだが、事業者によっては納める消費税が増える可能性がある。

カギは、暗号資産を売った金額の5%が「課税売上割合」の計算に加わるようになる点だ。個人として売買するだけの投資家には影響しないが、暗号資産を扱う事業者には見過ごせない変更となる。

連載「泉税理士が読み解く!暗号資産『分離課税』のリアル」の第7回は、租税法に詳しい泉絢也税理士の解説をもとに、「5%算入」の仕組みと影響を受ける事業者、取りうる対策について整理する。

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本記事は、泉税理士のブログ記事「暗号資産は非課税なのに、なぜ消費税の納税額が増えるのか—課税売上割合への5%算入」を元に、編集部で要約・再構成したものです。

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「非課税」は変わらないのに、なぜ控除が減るのか

消費税は国内の消費に広く負担を求める税だが、お金のような支払手段の譲渡は、性質上なじまないとして非課税とされている。

暗号資産は平成29年度税制改正で「支払手段に類するもの」とされ、その譲渡は非課税、課税売上割合の計算からも除外されてきた。今回の改正では「有価証券に類するもの」として非課税とされる。

財務省の解説によると、投資対象としての利用が広がった実態や、取引規制が金融商品取引法(金商法)へ移ったことを踏まえた見直しだ。

ここで仕組みを確認しておきたい。事業者が納める消費税は、売上げで預かった消費税から、仕入れや経費で支払った消費税を差し引いて計算する(仕入税額控除)。

課税売上割合とは、総売上高のうち、消費税がかかる売上高(課税売上高)が占める割合をいう。課税売上高が5億円以下で、この割合が95%以上であれば、仕入れで支払った消費税を全額差し引ける。どちらかの条件を外れると、按分した額しか差し引けない。

改正前、暗号資産の譲渡は分母にも分子にも入らなかった。改正後は、株式などの有価証券と同じく、譲渡対価の5%相当額が分母にだけ加わる。暗号資産を多く売る事業者ほど、課税売上割合が下がることになる。

なお、全額控除の2つの条件のうち、5億円以下かどうかの判定に用いる課税売上高には、暗号資産の譲渡は含まれない。5%算入が効いてくるのは、課税売上割合のほうだけだ。

「5%」という数字は誤解を招きやすい。泉税理士は次のように解説している。

【泉税理士の解説:「5%」は負担が5%増えるという意味ではない】

はじめに、よくある誤解を解いておきます。「5%」は、消費税の負担が5%増えるという意味ではありません。暗号資産の譲渡は改正後も非課税ですから、売上げに係る消費税額は動きません。動くのは仕入控除税額だけです。そして実際の影響は、5%よりはるかに小さいことも、はるかに大きいこともあります。

影響の大きさを決めるのは、暗号資産の譲渡対価が、他の課税売上げに比べてどれだけ大きいかです。

泉税理士が示す具体例で、影響の大きさを確かめてみよう。

いずれも、暗号資産のほかに非課税売上げはないものとする。本業の課税売上高が5000万円、暗号資産の年間の譲渡対価が4億円の事業者Aでは、分母に2000万円が加わる。課税売上割合は100%から約71.4%に下がる。

仕入れで支払った消費税が500万円で、一括比例配分方式(控除額を課税売上割合で一律に按分する方法)による場合、差し引ける額は約357万円に減る。負担はおよそ143万円増える計算だ。

一方、本業の課税売上高が1億円、譲渡対価が1億円の事業者Bは、割合が約95.2%にとどまり、課税売上高も5億円以下であるため、全額控除の条件を満たし、影響は生じない。

効くのは「利益」ではなく「売った金額」

取引の仕方によっては、事業者Aのような規模の譲渡対価に届くのは難しくない。泉税理士は、次の点に注意を促している。

【泉税理士の解説:回転売買や暗号資産同士の交換にも注意】

ここで注意すべきなのは、分母に入るのが利益ではなく譲渡対価だという点です。同じ資金を何度も回転させて売買を繰り返すと、元手が小さくても譲渡対価の合計は際限なく膨らみます。事業者Aの4億円は、1000万円を40回転させただけでも到達する金額です。

円に換金した場合だけの話ではありません。暗号資産どうしの交換も譲渡にあたり、その対価の額は受け取った暗号資産の時価になります。円に戻していないから関係ない、とはいきません。

利益が出たかどうかも関係ありません。損をしていても、売った金額が大きければ課税売上割合は同じように下がります。

暗号資産同士の交換が「譲渡」にあたる点は、連載第2回で取り上げた所得税の扱いとも共通する。円に戻していなくても、消費税の計算に影響が及ぶわけだ。

取引回数が多い事業者ほど、取引所に支払う売買手数料の総額も大きくなる。

泉税理士によると、一括比例配分方式による場合は、この手数料に係る消費税額にも、下がった課税売上割合が乗じられる。

一方、個別対応方式では、売買手数料は非課税売上げにのみ要する課税仕入れに区分されるため、改正の前後を通じて控除の対象にならない。

影響を受ける事業者、受けない事業者

では、どのような事業者が影響を受けるのか。泉税理士によると、対象は本則課税(実額で仕入税額控除を計算する方式)で申告し、暗号資産の譲渡に加えて他の課税売上げがある事業者だ。なかでも影響が大きいとして、次の3つを挙げている。

【泉税理士の解説:影響が大きい事業者】

・暗号資産取引業者:顧客との間で大量の売買を行うため、5%算入によって課税売上割合が大幅に下がり、仕入控除税額に重大な影響が生じえます。
・暗号資産を決済に使っているweb3事業者:暗号資産で支払を受けて円に換金したり、暗号資産で支払ったりするたびに、譲渡対価が積み上がります。
・マーケットメイクやアービトラージを行う事業者:利益率が低くても取引量が大きいため、5%算入の影響が累積的に効いてきます。

反対に、控除の計算をしない免税事業者や、課税売上割合を使わない簡易課税制度の適用事業者は影響を受けない。

5%を加えても課税売上高5億円以下・課税売上割合95%以上という全額控除の条件を保てる事業者Bのようなケースも同様である。

暗号資産の売買しか行っていない事業者も、影響は生じない。泉税理士によると、他に課税売上げがなければ、課税売上割合は改正の前後を通じて0%のままだからだ。

もっとも、課税売上割合が0%となる事業者は、売買に直接要した手数料等について仕入税額控除ができない点に注意が必要だ。

レンディング非課税化は「立場で向きが逆」

今回の改正では、暗号資産の貸付け(レンディング)も非課税取引に加わった。有価証券の貸付けが非課税であることを踏まえたもので、ステーブルコインの一部が該当する電子決済手段の貸付けも同時に非課税とされた。

この変更は、立場によって損得の向きが逆になる。まず、利用料を受け取る貸し手側への影響について、泉税理士は次のように説明する。

【泉税理士の解説:貸し手の課税売上割合は二重に下がる】

損をする側から見ます。レンディングサービスを提供する事業者にとって、利用料はこれまで課税売上げでした。改正後は非課税売上げになりますので、分子からは外れるのに、分母には全額が残ります。

5%で済む譲渡と違い、貸付けの対価は5%算入の対象ではないため、全額が分母に入るのです。売買とレンディングの両方を行う事業者は、課税売上割合を二重に押し下げられることになります。

これに対し、利用料を支払う側で消費税を控除できない人は、利用料が下がれば負担が軽くなる。ただし泉税理士は、利用料が据え置かれれば、恩恵を受けるのは消費税を納めなくてよくなる貸し手側だとしている。

対策は「準ずる割合」と「簡易課税」

課税売上割合が大きく下がる場合について、泉税理士は2つの対策を挙げる。

1つ目は、個別対応方式(仕入れを用途別に区分して計算する方法)で「課税売上割合に準ずる割合」を使う方法だ。従業員数や事業部門、床面積などの割合を用いるもので、税務署長の承認が必要になる。

ただし、使える場面や手続には制約がある。泉税理士は次のように注意を促している。

【泉税理士の解説:準ずる割合の注意点】

・一括比例配分方式には使えません。準ずる割合は個別対応方式のためのものです。
・95%以上かどうかの判定には使えません。全額控除ができるかどうかの判定は、準ずる割合の承認を受けているかどうかにかかわらず、本来の課税売上割合によって行います(消費税法基本通達11-5-9)。
・申請すれば必ず認められるものではありません。自社の事業の実態に照らして合理的であることを説明できる必要があります。

また、承認申請には期限がある。泉税理士によると、原則として、適用しようとする課税期間の末日までに承認を受けておく必要がある。

末日までに申請書を提出し、その翌日から1か月以内に承認を受ければ、その課税期間から適用できる。ただし、一定期間が過ぎれば承認されたものとみなす仕組みはないため、審査期間を見込んで早めに提出する必要があるという。

2つ目は、簡易課税制度の選択だ。簡易課税は課税売上割合を使わないため、改正後は本則課税より相対的に有利になる場合が生じうると泉税理士は指摘する。

ただし簡易課税には、基準期間の課税売上高が5000万円以下であることや、事前の届出、原則2年間の継続といった制約がある。泉税理士は、適用開始の直前に気づいても間に合わないとして、早めの試算を促している。

適用は2028年1月見込み。「株式と同じ5%」には疑問も

消費税の改正は、金商法等改正法の施行日が属する年の翌年1月1日以後の取引から適用される。所得税の分離課税と同じ起点である。

同法は2026年7月23日に公布された。泉税理士は、施行期日を定める政令は記事公開時点で確認できていないとしたうえで、令和10年(2028年)1月1日からの適用を見込んでいる。それまでは現行法で申告し、5%を先取りして分母に入れることはできない。

財務省の解説によると、有価証券の5%算入は、繰り返し売買される一方でコストが小さいという取引の性質を踏まえた措置だ。暗号資産も投資対象としての実態から、同じ扱いとされた。

これに対し泉税理士は、暗号資産に株式と同じ5%を当てはめること自体に疑問を投げかけている。

【泉税理士の解説:5%という数値の妥当性】

そのうえで申し上げると、有価証券の5%という数値は、もともとは、株式を売ったときの所得をその売却代金の5%とみなしていた古い制度を参照したものであるといわれています。

つまり、株式市場における売買の利益の水準をおおまかに置き換えた数値です。暗号資産について、その売買の利益率を独自に検証した結果が公にされた形跡はありません。(中略)

少なくとも一定の暗号資産との関係では、5%が実態に合っているとはいえません。ここでの問題は、負担が重いか軽いかではなく、5%という数値が売買差益の近似として妥当かという点です。「一定の暗号資産」には、方向の異なる2つのものが含まれます。

・投機性が高く、価格変動の大きい暗号資産:売買差益が譲渡対価の5%を大きく超える銘柄や局面は珍しくありません。5%では小さすぎます。
・現に決済手段として使われている暗号資産:こちらは、投資対象としての売買差益を前提とする5%という発想そのものが当てはまりません。

電子決済手段との扱いの差も論点となる。電子決済手段の譲渡は改正後も課税売上割合の計算から外れるため、同じ決済でも暗号資産を使った場合だけ割合が下がる。

泉税理士は、事業者が税制上の有利不利で決済手段を選ぶようになれば、取引に対する中立性の観点から望ましくないとしている。

まとめ:事業者は「売った金額」で試算を

暗号資産の消費税をめぐる改正のポイントを整理すると、次のようになる。

  • 暗号資産の譲渡が消費税の非課税であることは変わらない。変わるのは課税売上割合の計算
  • 譲渡対価の5%が分母に入り、95%を下回ると仕入税額の全額控除ができなくなる
  • 分母に入るのは利益ではなく売った金額。回転売買や暗号資産同士の交換、損失が出た取引でも積み上がる
  • 免税事業者、簡易課税の事業者、暗号資産の売買しか行っていない事業者には影響が生じない
  • レンディングの利用料は非課税となり、貸し手の課税売上割合は下がる。売買とレンディングの両方を行う事業者では二重に下がる
  • 対策として「準ずる割合」や簡易課税があるが、いずれも期限や制約がある

適用開始は2028年1月が見込まれる。暗号資産を扱う事業者は、所得税の分離課税とあわせて、自社の課税売上割合がどう動くかを今のうちに確認しておきたい。

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■ 監修者プロフィール・元記事のご案内

さらに詳しい「改正前後の政令の条文構造」や「5%算入を政令で定めることの是非」などについては、泉先生のブログ記事本編にて詳細に解説されています。ぜひ併せてご覧ください。

▼ 元記事を詳しく読む

「暗号資産は非課税なのに、なぜ消費税の納税額が増えるのか—課税売上割合への5%算入(泉絢也税理士事務所)」 https://izujun-tax.com/crypto-consumption-tax-5-percent/

▼ 監修者プロフィール

泉 絢也(いずみ じゅんや)

Pixel art superhero with a blue mask inside a purple circle, next to the Chinese/Japanese character 税 (tax).

税理士・東洋大学法学部教授、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)税制部会顧問。元国税職員(国税調査官)。博士(会計学・中央大学)。専門は租税法。暗号資産・NFTの税務、AIと税務、税務調査を主な研究テーマとする。著書に『事例でわかる!NFT・暗号資産の税務〔第2版〕』(中央経済社・共著)、『暗号資産の税金はこう変わる 分離課税の仕組みと実務』(清文社・単著)など。

|編集:栃山直樹
|画像:NADA NEWS制作

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