今週の市場は、「下値では買い手が現れる一方、その買いが市場全体へ広がらず、投資家心理が再び慎重化した一週間」だった。
ビットコインは週前半、8万〜8万2,000ドル前後、円建てでは1,290万〜1,320万円台で推移した。その後、米国株の反発や現物買いの改善を背景に一時8万4,000ドル台、円建てでは約1,349万円まで上昇した。しかし22日以降は再び売りが強まり、足元では8万ドル前後、円建てでも約1,280万円まで下落している。
価格だけを見れば「上昇に失敗した」と捉えたくなる。しかし今週の本質は、価格が下がってもETFやクジラの買いが残る一方、幅広い現物需要が追いついていないことにある。
今週、最も評価できるのは、下落局面でも一部の大口資金が市場から退出していないことだ。米国の現物BTC ETFには直近で4.7〜5.3億ドル規模の資金流入が報告され、過去7日でも約9.4億ドルの純流入となった。また、価格下落局面ではクジラによる買いも確認されている。
一方、Coinbase Premiumは依然マイナス圏で、取引所ベースの現物需要も弱い。現物出来高もピークから大きく減少している。つまり現在は、「誰も買っていない市場」ではない。しかし「みんなが買い始めた市場」でもない。
行動ファイナンスの観点では、これは典型的な確認待ちの局面である。大口は価格下落を機会として利用する一方、多くの投資家は「本当に8万ドルを守れるのか」を確認してから動こうとしている。
市場心理は複雑だ。BTCが8万4,000ドル台まで戻したことで一時的に強気心理が回復したが、その後8万ドル近辺まで下落したことで、再び警戒が強まった。
興味深いのは、価格が下落しているにもかかわらず、心理指標にはまだ一定の楽観が残っていることである。つまり、投資家の期待ほど価格は強くないというズレが生じている。
ここで注意したいのは、「8万ドルで何度も反発している=底」という思い込みだ。
同じ支持線を何度も試せば、その価格帯にある買い注文が徐々に消化される可能性もある。恐怖が強まったから底、買い板があるから底、と短絡するのではなく、実際の現物需要が増えているかを見る必要がある。
今週後半の下落には、暗号資産固有の需給だけでなく、明確なマクロ要因があった。
NASDAQ100が約2.9%下落し、AI関連株への警戒が再燃。さらに原油価格も高止まりし、インフレ再加速への懸念が続いている。一方、米10年債利回りは低下したが、今回は景気への安心ではなく、株安による安全資産需要の影響も考えられる。
これは重要な点だ。
金利が下がれば必ずBTCにプラス、とは限らない。
景気不安によるRisk-offで金利が低下している場合、BTCも株式と一緒に売られることがある。BTCは依然として完全な安全資産ではなく、株式・原油・金利・ドルというマクロ環境の影響を強く受けている。
来週、確認したいのは三点である。
第一に、8万〜8万1,200ドル付近で現物買いが継続するか。
第二に、ETFへの大規模流入が続き、Coinbase Premiumまで改善するか。
第三に、クジラの蓄積とステーブルコイン流入が、実際のBTC購入へつながるかである。
今、期待しすぎるべきではないのは、「ETFが買っているから下がらない」という考え方だ。
一方で、今回の下落だけで中期構造が崩れたと判断するのも早い。現在の市場は、ETFとクジラが下値を支える一方、幅広い現物投資家がまだ戻り切っていない局面にある。
次に見るべきなのは、8万ドルを守ったかどうかだけではない。
8万ドルで買った人たちの後に、次の買い手が続くのか。そこが、次の市場フェーズを判断するうえで最も重要になる。
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