●暗号資産の税負担をどう見直すか。DeFiやステーブルコインを、企業や個人が安心して使うには何が必要か。
●ブロックチェーン推進協会(BCCC)のXスペースでは、分離課税から日常の決済・送金まで、税制改革の論点を取り上げた。
10月6日18時から、ブロックチェーン推進協会(BCCC)は、Xスペースで第4回「BCCC Blockchain Lounge」を開催した。テーマは「BCCC税制部会 始動─暗号資産税制を徹底討論」。税制部会長の八木橋泰仁氏、副部会長の村上裕一氏、そしてDeFi部会長を務める筆者が参加し、暗号資産税制の現在地と、税制部会が今後取り組む課題について議論した。
今回取り上げたのは、個人投資家への申告分離課税や損失の繰越、法人が暗号資産を保有する際の課題、DeFiの取引、ステーブルコイン決済に伴う税務処理だ。共通する問題意識は、制度の見直しを、実際に利用できる仕組みへどうつなげるかという点にある。
分離課税で、何が変わるのか
議論の出発点となったのは、個人投資家の税負担と申告分離課税だ。
個人の暗号資産取引による利益は、原則として雑所得に区分され、給与などと合わせて税額を計算する総合課税の対象となる。一方、令和8年度税制改正の大綱では、一定の暗号資産取引について、所得税15%・住民税5%を基本とする申告分離課税と、一定の要件の下での3年間の損失繰越控除が示されている。
損失を翌年以降の利益から差し引ける仕組みは、価格変動の大きい暗号資産を保有する投資家にとって重要だ。ただし、対象となる銘柄や取引経路、適用時期を確認する必要がある。大綱では、分離課税の適用開始を金商法改正法の施行年の翌年1月1日以降としており、すべての暗号資産取引が直ちに同じ税率になる仕組みではない。
今回のスペースでも、税率の数字とともに、どの取引が対象となり、どの所得が別の扱いになるのかという制度の範囲を論点として取り上げた。
DeFiや法人の利用には、別の課題がある
続いて取り上げたのが、取引所での売買を超えた利用に伴う税務の課題だ。
DeFiでは、暗号資産同士の交換、貸し出し、流動性の提供などが行われる。国税庁は、暗号資産同士の交換についても、手放した暗号資産の損益を計算する必要があると説明している。また、ステーキングやレンディングなどで得た暗号資産は、取得時点の時価を収入に算入する扱いだ。
つまり、日本円に換金していなくても、所得の把握が必要になる。複数のウォレットやサービスに分散した履歴を集め、取得価額や報酬を計算することは、利用者にとって大きな負担になり得る。
法人については、保有する暗号資産の期末時価評価や、その対象から除外されるための要件、会計・監査への対応も論点となった。個人の分離課税と、企業が暗号資産を事業で利用するための制度整備は、それぞれ検討する必要がある。
ステーブルコインを送るだけでも、計算が必要になる
ステーブルコイン決済では、送金手数料である「ガス代」の扱いを取り上げた。
ステーブルコインを送る際、ETHなどの暗号資産でガス代を支払う場合がある。その際には、手数料の記録に加え、使用した暗号資産の取得価額と使用時の価額に基づく損益の把握が論点になる。1回の手数料が少額でも、取引が積み重なれば集計の負担は大きい。
また、資金決済法上の「電子決済手段」に該当するステーブルコインの譲渡は、消費税では非課税とされている。ただし、所得税や法人税の処理、外貨建ての場合の為替差損益などは別途整理しなければならない。
決済や送金を便利にする技術が、複雑な税務処理によって使いづらくならないか。これは、ステーブルコインの普及を考える上で重要な論点である。
税制部会は、現場の課題を制度への提言につなげる
税制部会の今後の活動として取り上げたのが、ステーブルコインを実際に活用するための三つの提言だ。
第一に、法定通貨を裏付けとするステーブルコインの税務上の扱いを明確にすること。円建てと外貨建ての違いも整理し、企業や個人が判断しやすい環境をつくる。
第二に、ステーブルコイン送金に伴うガス代の損益計算を簡素化すること。少額の手数料に対する事務負担を、実態に見合ったものにする。
第三に、一定の要件を満たす円建てステーブルコインへの交換について、課税の繰延べや所得控除を検討すること。これは制度改善を求める提案であり、公平性や取得価額の引き継ぎなどを含めた具体化が必要になる。
部会では、勉強会や意見交換を通じて、事業者や利用者が直面している課題を集める。その上で、関係省庁への提言やガイドライン整備につなげていく方針だ。
筆者の結論──税率と「使いやすさ」を一緒に見直す
筆者は、分離課税に向けた制度の見直しを大きな前進と評価している。その効果を社会実装につなげるには、税率の見直しと、計算・申告のしやすさを一緒に進める必要がある。
個人投資家には、自分の取引の課税関係を理解し、正しく申告できる仕組みが必要だ。企業には、経理や監査に説明でき、継続して運用できるルールが求められる。少額の決済や送金についても、利用の実態に応じた処理を整えたい。
課税の公平性を保ちながら、利用者が迷わず納税義務を果たせる環境をつくる。そのために、現場の具体的な取引や困りごとを、制度をつくる側へ伝えていくことが重要だと考える。
今回のXスペースで取り上げた論点を、今後の税制部会の活動へつなげていきたい。DeFi部会長として、筆者も利用現場の声を届け、暗号資産やステーブルコインを安心して活用できる制度づくりに取り組んでいく。
スペースはこちらです
https://x.com/bccc_global/status/2107396413374321070?s=20
ショート動画
暗号資産税制|分離課税の、その先へ
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