米上院国土安全保障・政府活動委員会の常設調査小委員会(PSI)の民主党側スタッフは9月28日、イラン関連の資金網を調べた報告書を公表した。
ブロックチェーンの取引分析によると、差し押さえ対象として公表されたウォレットから、3460万ドル超(約55億円、1ドル=160円換算)の暗号資産(仮想通貨)が流出したという。
対象は、イランが支援するレバノンの武装組織ヒズボラへの資金移動に関係するとされたウォレットだ。報告書は、米ドル連動型ステーブルコイン「テザー(USDT)」の凍結が遅れ、資金移動が続いたと指摘している。
背景には、イランが国際的な制裁を回避するために利用する「影の銀行システム」がある。銀行を通じた国際送金が制限される中、仲介業者や暗号資産取引所を経由して資金を移す仕組みが広がってきたという。
今回の事例では、イスラエル国家テロ資金対策局(NBCTF)が2023年6月、ヒズボラの資金洗浄に関わる人物に関連するとして39のウォレットを差し押さえ対象に指定した。報告書によると、USDTの発行元であるTether(テザー)は、このうち34件を2024年3月まで凍結しなかったという。
その間、差し押さえ対象の公表後も、対象ウォレットから3460万ドル超のUSDTが流出したとされる。報告書は、暗号資産取引所への入出金も確認されたとしている。
USDTには、発行元が特定のアドレスにある資産の移動を止める機能が組み込まれている。報告書は、当局がウォレットを特定しても、発行元による凍結が遅れれば資金が移される点を問題視した。
調査では、米当局やイスラエル当局がイラン政府や同国の支援勢力との関連を理由に特定した846のウォレットを分析した。その84%が、USDTのみ、またはほぼUSDTのみで取引していたという。報告書は、USDTが広く流通し、法定通貨と交換しやすいことなどを利用拡大の背景に挙げている。

イラン関連の暗号資産への取り締まりは、司法手続きにも広がっている。米司法省は9月14日、イラン産原油などの闇取引収益にあたるとして、約6100万ドルの暗号資産の没収を求める民事訴訟を提起した。
一方、テザーは9月28日、2026年にイラン関連の約5億5000万ドル相当のUSDTの凍結を支援したと発表している。米当局がイラン中央銀行や制裁回避網との関連を特定したウォレットが対象だという。同社は、法執行機関から信頼できる情報が提供されれば、資金を特定し、凍結できると説明した。
報告書は、対象指定後の凍結だけに頼る対応では、資金流出を十分に防げないと指摘している。ステーブルコイン発行体に対し、取引先やその顧客による高リスクの取引を継続的に監視するよう求めた。
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|文:平木 昌宏
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|画像:米上院PSI民主党側スタッフ報告書


