米ドル連動型ステーブルコインを発行するTether(テザー)は9月28日、米当局がイラン中央銀行や制裁回避網との関連を特定したウォレットについて、2026年に約5億5000万ドル(約864億円、1ドル=157円換算)相当のUSDT凍結を支援したと発表した。
今回の発表は、トランプ政権がイランへの経済制裁を強化する中で行われた。テザーは、米国や各国の法執行機関から信頼できる情報が提供された場合、制裁対象者や犯罪組織に関連するUSDTを特定し、移動を止める措置を取っている。
背景には、米財務省が8月24日に開始した「Operation Economic Outcast(経済的追放作戦)」がある。米財務省の発表によると、同作戦はトランプ大統領の指示に基づき、イラン政府やイスラム革命防衛隊(IRGC)を支える国際的な資金網を遮断する取り組みだ。
米財務省は、デジタル資産、テクノロジー、金、航空、海運の5分野を新たな制裁対象として重点的に監視する方針を示した。
テザーは4月、米財務省外国資産管理局(OFAC)や米法執行機関から提供された情報に基づき、2つのアドレスにある3億4400万ドル超(約540億円)のUSDT凍結を支援した。翌日、OFACは同じアドレスをイラン中央銀行のデジタル通貨識別子として制裁リストに追加した。
7月には、米財務省がイラン中央銀行に対する指定を拡大したことを受け、4つのウォレットにある1億3000万ドル超(約204億円)のUSDTが凍結された。対象はいずれもTRON(トロン)上のアドレスだった。
制裁執行は発行体による凍結だけでなく、司法手続きにも広がっている。米司法省は9月14日、イラン産原油の取引収益にあたるとして、約6100万ドル(約96億円)の暗号資産(仮想通貨)の没収を求める民事訴訟を起こした。対象資産はUSDTで、複数のアドレスを経由して資金の出所が隠されていたとされる。
公開型ブロックチェーンでは取引履歴を追跡できるため、現金よりも資金の流れを把握しやすい。USDTのように発行体が管理するステーブルコインでは、法執行機関からの情報に基づき、特定のアドレスを凍結して資金移動を防ぐことも可能だ。
テザーは現在、67カ国の340以上の法執行機関と協力している。同社がこれまでに凍結を支援した資産は49億ドル超(約7693億円)に達し、このうち24億ドル超(約3768億円)が米当局に関連するという。同社は、USDTを制裁対象者やテロ組織、犯罪ネットワークの逃避先にしない方針を改めて強調した。
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|文:平木 昌宏
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