昨日、Xスペースで配信される「週刊NADA NEWS」にゲスト出演し、NADA NEWS記者の橋本さんと、ビットコインの足元の相場や米国の金融政策、規制の動向、年末に向けた見通しについて対談した。
参照:週間NADA NEWS 9月24日(Xスペース)
https://x.com/nadanews_com/status/2102963605021036758?s=20
「週刊NADA NEWS」は毎週火曜日の12時30分から配信されており、私は月に一度、ゲストとして市場分析をお話ししている。今回は「今の価格帯は、データ的に買いなのか、売りなのか」という問いを軸に議論した。本稿では、その内容を整理してお伝えしたい。
365日線とBull Scoreが示す、長期の構造改善
私の現在の見方は、長期の市場構造が強気方向へ変わり始めていることを評価しながら、短期の過熱には注意するというものだ。価格の上昇だけで判断せず、市場の内部状態と実際の買い需要が改善しているかを重ねて見ている。
まず注目しているのが、365日移動平均線だ。CryptoQuantの9月22日付レポートでは、ビットコインが約8万500ドルの365日線を上回り、約8万6,000ドルで取引されていた。365日線は、過去1年間の価格を平均したもので、日々の値動きをならし、長い期間の相場の方向を捉える目安になる。同社は、2019年や2023年にも、この線の上抜けが強気相場への転換を示したと分析している。
ただし、一度上抜けただけで、その後の上昇が保証されるわけではない。上回った状態が続くか、下落したときにその付近で買いが入るかまで確認する必要がある。
市場の内部状態を見る指標にも改善が表れている。同社の「Bull Score」は、オンチェーンや市場動向、価格評価に関する10の指標を統合し、0〜100で市場環境を測るものだ。いわばビットコイン市場の健康診断であり、今回のレポートでは、強気の目安とされる60を上回る80となった。8月中旬から強気領域に入り、その後に価格が365日線を突破したという順番にも注目している。
「80」は、80%の確率で値上がりするという意味ではない。複数の指標が強気の環境を示しているということであり、私は、市場の内部改善に価格が追い付いてきた可能性を評価している。
ETFへの資金回帰と、短期の過熱リスク
もう一つ重要なのは、長期保有者の売りと新たな買い需要の関係だ。CryptoQuantによれば、長期保有者は今年、7万7,100〜8万200ドル付近で累計約53.9万BTCを売却した。ビットコインは、その売りが集中した価格帯を越えて回復している。
長く保有していた投資家が利益を確定するなどして売りに出せば、上値を抑える力になる。それでも価格が上昇したことは、売りを受け止め、より高い価格でも購入する需要があったことを示唆する。
米国のビットコイン現物ETFにも資金が戻ってきた。Farside Investorsの集計では、9月17日から22日までの4営業日で、合計約23億ドルの純流入があった。 もちろん、今年の長期保有者の売りを、この4日間のETF資金だけですべて吸収したという意味ではない。それぞれ期間と対象の異なるデータだが、需要回復を考える材料になる。
こうした資金回帰の背景として、私は、保管・管理や規制の整備、ETFを通じた投資のしやすさ、通貨の購買力低下への意識、そして逆風の中でも持ち直した相場の強さが考えられると見ている。
機関投資家は、値上がりへの期待だけでは投資できない。資産の保管や監査、社内のリスク管理に対応できる仕組みが必要だ。ETFは、自ら秘密鍵を管理せずに投資できる経路を提供する。一方、財政や通貨供給の先行きを踏まえ、発行上限のあるBTCを分散先として再評価する投資家もいると考えられる。ただし、ETFには個人の資金も含まれ、その資金フローだけで買い手の属性や動機までは分からない。
対談では、こうした改善と同時に、短期の急落リスクも説明した。先物でレバレッジをかけた買いが積み上がると、小さな下落をきっかけに強制決済が発生し、その売りが次の下落を呼ぶことがある。長期の強気転換と、短期の急落リスクは同時に存在する。 この二つを分けて考えておきたい。
米利上げの逆風を、買い需要は吸収できるか
金融政策については、約3年ぶりとなった米国の利上げが大きな論点だった。FRBは米国時間9月16日、日本時間17日、政策金利の誘導目標を0.25ポイント引き上げ、3.75〜4.00%とした。採決は12対0だった。 私も早朝からウォーシュ議長の会見を聞き、政治との距離を保ちながら、物価安定という責務に集中する姿勢を感じた。
利上げは、基本的にビットコインへの逆風になる。短期国債などで得られる利回りが上がれば、利息を生まないBTCを保有する際の機会費用が増える。借り入れて運用する投資家には資金調達コストも重くなり、企業や家計の投資・消費にもブレーキがかかりやすい。
だからこそ重要なのは、今回の利上げ幅だけでなく、金利がどこまで上がり、その水準がどれほど続くかだ。9月の参加者見通しでは、政策金利の中央値は2026年末、2027年末ともに4.1%だった。これはレンジの中心値を丸めた表示で、4.00〜4.25%に相当する。追加利上げと高金利の長期化を意識させる内容だが、将来の政策決定を約束するものではない。
今後は、CPIや、FRBが物価目標の基準とするPCEの物価指数を通じて、インフレが落ち着くかを見ていく。 原油価格が物価に与える影響や米長期金利、とりわけ予想インフレを考慮した実質金利も重要だ。そのうえで、ETFへの流入や現物の買いが続くかを確認する。金利の逆風があっても、それを受け止める需要が続けば相場は支えられるが、買いまで細れば下落に弱くなる。
CLARITY法案の停滞後も進む制度整備
規制をめぐっては、CLARITY法案の停滞をどう捉えるかについて話した。9月15日に否決されたのは、法案成立を決める最終採決ではなく、審議入りに向けた討論終結動議だ。賛成49、反対50で可決されず、その後、再考を求める動議が提出された。この採決だけで廃案が確定したわけではない。
包括的なルールづくりが遅れれば、金融機関や事業者の判断が難しくなる。その点では逆風だ。しかし、議会での法整備が停滞する間も、行政当局は既存の法律に基づく権限の範囲で制度整備を進められる。
具体例が、SECが9月17日に発表したトークン化株式に関する措置だ。一定の条件を満たす取引基盤について、証券取引所の定義から5年間の暫定的な適用除外を認めた。対象銘柄数や取引量、株主の権利などに条件を設けながら、株式をブロックチェーン上で取引する仕組みに道を開いた。
私は、こうした動きが、足元のBTC上昇を理解するうえでも重要な背景になっていると考える。制度整備の継続は、「暗号資産やブロックチェーンを金融に取り入れる動きまで止まる」という不安を和らげる可能性がある。そして、暗号資産への投資を再検討する資金にとって、BTCには既存の現物ETFという投資経路がある。
制度面への不安が和らぎ、実際に投資できる商品へ資金が向かう。その受け皿の一つがBTCになるというのが私の見方だ。ただし、SECの措置はトークン化株式が対象であり、BTCの購入を直接促すものではない。ETFへの流入がすべてこの発表によるものとも断定できない。制度整備が資金回帰を後押しした可能性として捉えている。
年末相場の分岐点は、9万ドル前後と365日線
年末に向けては、こうした構造改善を前向きに評価しつつ、途中の調整を想定している。上方向で注目するのは8万8,000〜9万1,000ドルだ。CryptoQuantの分析では、長期保有者の次の供給帯があり、9万ドル付近にはトレーダーの取得価格に基づくオンチェーンモデルの上限帯も重なる。 ここを現物の買いを伴って突破し、押し戻されても定着できれば、10万ドル回復への見方を強めやすくなると考えている。
下落時には、レポート時点で約8万500ドルだった365日線が目安になる。 8万6,000ドルからなら約6.4%の調整だ。この水準まで下がること自体で、強気転換が直ちに否定されるとは考えない。買いが入り、回復・維持できるかが重要だ。ただし、継続的に下回り、ETF流出や現物需要の悪化も重なるなら、強気の見方を修正する必要がある。なお、移動平均線の水準は日々変化する。
年末まで追いたい資金フローと政策イベント
年末まで確認したいのは、ETFの買いの継続性、オンチェーンで見る資金流入や保有者の動き、そして先物の過熱だ。建玉や資金調達率が上昇していても、現物の買いが伴わなければ、相場は崩れやすくなる。ステーブルコインの供給も合わせて見ながら、ETF経由のBTC需要にとどまらず、市場全体に資金が広がっているかを確かめたい。
米国の物価・金利に加え、日本の金利と為替も欠かせない。日本の投資家にとって、円建てBTCの値動きはドル建て価格とドル円相場の両方に左右される。今後のFOMCは10月27〜28日、12月8〜9日(いずれも米国時間)に予定されている。 また、11月3日には米中間選挙が行われる。 政治や規制をめぐるニュースが、ETFフローや先物のポジションにどう表れるかを見ていきたい。
上昇にも下落にも備える資金配分と心構え
今回の対談で伝えたかったのは、強気の材料が増えた今こそ、上昇に参加するための保有と、調整時に判断するための待機資金を両立させるという考え方だ。価格が上がるにつれて焦りが強くなる局面ほど、自分がどの期間の相場を見ているのか、どの条件が崩れたら判断を変えるのかを整理しておきたい。
私は長期の構造改善を評価している。それでも、年末まで一直線に上昇するとは考えていない。データの変化に応じて見方を更新し、上昇にも下落にも対応できる資金配分と心構えを持つことが、今の相場で大切だと考えている。
※価格・オンチェーン指標は主に2026年9月22日付の資料、ETFフローは9月22日までの集計をもとに記載。
ショート動画
(NADA NEWS対談)ビットコインは今、買い?売り? 強気転換でも油断できない理由
https://youtube.com/shorts/6ifLlQrIgHM
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