ビットコインは「新たな強気相場」に入ったのか――オンチェーンは強気、短期は過熱、そして中間選挙【エックスウィン】

●ビットコインは約8万6,000ドルまで回復し、365日移動平均の突破やBull Scoreの上昇、ETFへの資金回帰など、「新たな強気局面」を示すシグナルが増えています。
●今回の機関投資家流入の背景には、規制・カストディ環境の整備、ETFによるアクセス改善、通貨価値の希薄化を意識したBTC再評価、そして悪材料の中でも崩れなかった相対的な強さがあると考えられます。
●一方、先物市場ではレバレッジとセンチメントが過熱し、米国の高金利に加えて11月の中間選挙も接近。強気相場入りの可能性が高まったからこそ、一直線の上昇を前提にしないことが重要です。

ビットコイン市場の空気が大きく変わってきました。2025年10月につけた史上最高値約12万6,000ドルから大きく調整したビットコインは、現在約8万6,000ドルまで回復しています。価格だけを見れば、依然として史上最高値から約3割下です。

しかし、今回筆者が注目しているのは価格そのものではありません。ビットコイン市場の内部構造が変わり始めていることです。

365日移動平均線を上抜け──過去の強気相場入りと重なるシグナル

BTC価格チャート:365日移動平均線の上抜けと強気相場入りを示すTradingViewのグラフ。

今回特に注目したいのが、ビットコインが約8万500ドルに位置する365日移動平均線を明確に上回ったことです。CryptoQuantの資料では、365日移動平均線は長期的な市場サイクルを判断する重要なラインとして位置づけられており、2019年や2023年には、このラインを上抜けた後に強気相場が進行しました。

一方、2021年末や2025年11月には365日移動平均線を下回ることで弱気相場への転換が確認されています。現在のビットコインは約8万6,000ドルと365日移動平均線の上に位置し、さらに200日移動平均線も約7万600ドルにあるため、長期トレンドの構造としては、弱気局面から強気局面へ転換した可能性を示す重要なシグナルと見ることができます。

Bull Scoreは80――価格上昇より先に強気転換

Chart showing Bull Score Index over time with price on Y-axes and Bull Score overlay; highlights a Bull Score rise above 80 in mid-2026.

もう一つ注目したいのが、CryptoQuantのBitcoin Bull Score Indexです。Bull Scoreは複数のオンチェーン・市場指標を統合して市場環境を評価するもので、60以上が強気、40以下が弱気の目安とされています。今回のデータでは、Bull Scoreは8月中旬に60を上回って強気領域へ入り、足元では80まで上昇しています。

重要なのは、ビットコイン価格が365日移動平均線を明確に突破する前から、この指標が強気方向へ転換していたことです。つまり、単に価格が上昇した結果として強気判定になったのではなく、オンチェーン内部の改善が先行し、その後に価格が追随した可能性があります。

長期保有者53.9万BTCの売りを吸収──次の壁は8.8万〜9.1万ドル

Informational chart of Bitcoin long-term holder activity vs price, with three callouts: green notes accumulation around k–k, red notes selling around k–k, and orange notes a supply cluster at k–k.

さらに重要なのが、長期保有者の売却動向です。CryptoQuantのデータでは、7万7,100〜8万200ドル付近で長期保有者が約53.9万BTCを売却しました。通常であれば大きな上値抵抗になり得る規模ですが、市場はこの売りを吸収し、価格はその上へ進みました。これは今回の上昇が単なる「売り手不在」ではなく、実際に大量の売りが出たにもかかわらず、新たな買い手がそれを受け止めたことを示しています。

一方、次に大きな供給が集中しているのは8万8,000〜9万1,000ドル付近です。逆に下値では、長期保有者が約47.6万BTCを取得した6万2,000〜6万5,000ドルが重要なサポート帯として意識されます。

オンチェーンだけを見るなら、単なる弱気相場からの反発ではなく、新しい強気局面へ移行した可能性を考えるべき状況になっています。

「売り手がいない」のではなく、売りを吸収した

今回の上昇で重要なのは、単純に売り手が減ったから価格が上がったわけではない点です。7万6,000〜8万1,000ドル付近では、長期保有者から大量のBTCが市場へ供給されました。

それでも価格は崩れませんでした。新しい買い手がその売りを吸収し、価格はさらに上へ進んでいます。これは市場構造を見るうえで非常に重要です。「売りがなかったから上がった」のではなく、「大量の売りが出たにもかかわらず、それを市場が吸収した」。

ここに今回の上昇の強さがあります。幅広いウォレット規模で蓄積傾向が確認され、取引所からのBTC流出も続いています。Realized Capにも再び資金流入が見られ、より高い価格で新しい資本が入ってきていることが示されています。

ETFにも機関投資家マネーが戻る

もう一つ大きな変化が、米国のビットコイン現物ETFです。9月15日には約4億5,000万ドル、16日には約2億9,600万ドルの資金流出がありました。ところが、その後は流れが急反転しています。

17日は約1億5,950万ドル、18日は約4億3,300万ドル、21日には約9億9,900万ドルの純流入となりました。17日から21日の3営業日だけで、約15億9,000万ドルの資金が流入した計算です。

9月中旬には一時、「ETF需要が止まったのではないか」という懸念もありました。しかし現在までの動きを見る限り、機関投資家がビットコイン市場から撤退したというより、一時的なリスク削減だった可能性が高まっています。

今回の機関投資家流入の背景には、規制・カストディ環境の整備、ETFによるアクセス改善、通貨価値の希薄化を意識したBTC再評価、そして悪材料の中でも崩れなかった相対的な強さがあると考えられます。

ただし、短期的にはかなり熱い

ここまでは強気材料です。しかし、ここからが非常に重要です。先物市場ではOpen Interestが高水準となり、Funding Rateも上昇しています。8月の上昇局面では、大規模なショート清算が価格を押し上げる一方で、Fundingは比較的中立でした。

つまり8月は、「多くの投資家が上昇を信じていない中で、価格だけが先に上がった相場」だったと言えます。しかし現在は違います。市場参加者が上昇を信じ始め、ロングポジションが増えています。Fear & Greed Indexも78の「Extreme Greed」まで上昇しています。

つまり今の市場を、「誰も上昇を信じていない強気相場」と表現するのは難しくなっています。むしろ、「Retail Maniaには達していないが、短期トレーダーはすでにかなり強気」という状態です。

これは決して強気相場の終了を意味しません。ただし、レバレッジが積み上がれば、わずかな悪材料でもポジション解消が連鎖し、5〜15%程度の急激な調整につながる可能性があります。強気相場だからこそ、短期的な急落には注意が必要な局面です。

まだ足りないもの──ステーブルコイン流動性

Line chart titled 'All Stablecoins(ERC20): Total Supply' showing ERC20 stablecoin supply from 2018 to 2025, rising from near zero to about 143.6B with a peak around 2024–2025 and a slight later decline, purple line.

もう一つ確認しておきたいのが、暗号資産市場全体の流動性です。ステーブルコイン時価総額は約3,010億ドル。夏場の減少からは回復していますが、資金供給が過去の本格的な強気相場と同じペースで拡大しているわけではありません。

これは重要です。現在はETFやビットコインそのものには資金が戻り始めています。しかし、「暗号資産市場全体へ大量の新しいドル資金が流れ込む局面」には、まだ完全に移行していない可能性があります。

つまり、Bull Market開始のシグナルは揃いつつある。しかし、全面的な流動性相場が始まったと判断するにはまだ早い。

筆者はそう考えています。

最大の外部リスクは「高金利」

そして現在のビットコインにとって、最大の外部リスクはマクロ環境です。FRBは9月16日に政策金利を25bp引き上げ、3.75〜4.00%としました。米10年国債利回りは約4.99%、10年実質金利も約2.64%と高い水準にあります。

実質金利が高い環境は、本来、利息を生まないビットコインにとって大きな逆風です。その一方で興味深いのは、今回のビットコイン上昇が米国株だけでは説明できないことです。ビットコインが上昇する一方でS&P500が弱かった局面もあり、BTCと株式の短期的な相関も低下しました。

今回の上昇には、ETF、現物需要、オンチェーン資金流入という「ビットコイン固有の資金フロー」が影響している可能性があります。これはポジティブな変化です。しかし、高い実質金利やドル高が続く環境でもビットコインが独立して上昇し続けられるのか。そこはまだ証明されていません。

そして11月、中間選挙が「新たな不安定要因」に

さらに筆者がこれから警戒しているのが、11月に予定されている米中間選挙です。中間選挙では米下院の全議席と上院のおよそ3分の1が改選されます。その結果は米議会の多数派にも影響するため、選挙が近づくにつれて政策の先行きが市場で意識されやすくなります。

ここで重要なのは、「中間選挙だからビットコインが上がる」と考えないことです。過去を振り返ると、2014年、2018年、2022年はいずれも米中間選挙の年であり、偶然にもビットコインの大きな弱気局面、あるいはその終盤と重なっています。

Glassnodeのサイクル分析でも、2014〜15年、2018〜19年、2022〜23年、そして2026年には底値形成局面として一定の共通点があります。しかし、「中間選挙がビットコインの底を作る」と考えるのは行き過ぎでしょう。

ビットコインのおおむね4年の市場サイクルと、米国の選挙サイクルが近い周期で動いているという側面もあります。

筆者がより警戒しているのは、中間選挙が近づくこと自体が短期的な不確実性を一つ増やすことです。現在の市場にはすでに、高い米長期金利、高い実質金利、FRBの金融政策、インフレ、ドルの動向、という複数のマクロ要因があります。

そこに10月から11月にかけて政治的な不確実性が加わります。中間選挙そのものを弱気材料と見る必要はありません。しかし、政策や規制を巡る見通しが揺れれば、投資家が一時的にリスクポジションを減らす可能性があります。

そして現在のように先物のOpen InterestやFundingが高い市場では、小さな不安材料でもレバレッジ解消を通じて値動きが増幅される可能性があります。

つまり、11月に向けて、「政治」という新しい変数が相場に加わる。この点は頭に入れておく必要があります。

今回の2026年は過去と少し違う

一方で、2026年と過去の中間選挙年には大きな違いがあります。2014年、2018年、2022年は、中間選挙の時期までビットコインが大きな弱気相場の中にありました。

しかし今回は、2026年夏にオンチェーン上の底値形成シグナルが集中し、8月から資金流入が改善。そして9月には365日移動平均を回復し、複数のオンチェーン指標がBullへ転換しています。

したがって、今回の中間選挙を、「ビットコインの底を作るイベント」と考えるより、「すでに始まっている可能性のある強気トレンドに、どの程度の揺さぶりを与えるのか」という視点で見る方が適切でしょう。

選挙を無事通過し、ETFやオンチェーンへの資金流入が継続するのか。それとも選挙前の不確実性をきっかけに、一度大きなポジション整理が起きるのか。10月から11月にかけては、そこが大きな注目点になります。

最大の攻防は8万8,000〜9万ドル

価格面で筆者が現在最も注目しているのは、8万8,000〜9万ドルです。この価格帯には長期保有者などの供給クラスターが存在し、複数のオンチェーンモデルでも抵抗帯として意識されています。

単なる心理的な9万ドルではありません。実際の投資家の取得価格や供給が重なる、意味のある価格帯です。ここを出来高と現物ETFへの資金流入を伴って明確に突破し、その後8万6,000〜9万ドルをサポートへ転換できるなら、市場構造はさらに一段強くなります。

その場合、次に意識されるのが10万ドル、そして2025年の史上最高値約12万6,000ドルです。

下落した場合は8万500ドルを見る

一方、価格が下落した場合、筆者が最初に注目するのは8万500ドル前後です。ここには365日移動平均があります。現在の約8万6,000ドルから見れば、6〜7%程度の調整です。

強気相場が継続しているのであれば、この程度の下落は決して異常ではありません。その下には約7万6,700ドルのTrue Market Mean。さらに7万〜7万1,000ドル付近には200日移動平均や短期保有者のコストベースがあります。より重要な最終防衛ラインとしては、6万2,000〜6万5,000ドル付近が意識されます。

つまり、9万ドルを突破できるのか。そして下落した場合、8万500ドル付近を維持できるのか。この二つが、これからの相場を見る重要なポイントになります。

「長期は強気、短期は過熱、マクロは逆風、政治は不確実」

現在のビットコインを筆者は、「長期は強気、短期は過熱、マクロは逆風、そして中間選挙という政治的不確実性が近づいている」局面だと見ています。オンチェーンでは、新しい強気相場が始まった可能性を示すデータが増えています。

ETFにも資金が戻っています。取引所からBTCが流出し、Realized Capも再び増加しています。これは明らかにポジティブです。しかし同時に、FundingとOpen Interestは高く、短期センチメントはすでにかなり強気です。米国では高金利環境が続き、さらに11月の中間選挙も近づいてきます。この状況で最も避けたいのは、「Bull Marketが始まったのだから、もう下がらない」と考えることです。

強気相場でも10%前後の調整は十分に起こります。むしろレバレッジが積み上がった現在の市場では、中間選挙やマクロニュースがきっかけとなって、短期間の大きなポジション整理が起きても不思議ではありません。

だからこそ筆者は、今の局面で一方向に賭ける必要はないと考えています。上昇した場合にも、下落した場合にも対応できる配置にしておく。9万ドルを突破し、さらに上昇する可能性もある。

一方で、8万ドル前後まで一度調整する可能性もある。重要なのはどちらか一方を当てることではありません。ETFフロー、Realized Cap、FundingとOpen Interest、ステーブルコイン供給、365日移動平均、米実質金利。

そして10月から11月にかけては、中間選挙を巡る不確実性がこれらの資金フローにどう表れるか。そこを冷静に確認していくことです。現在のビットコインは、長期的には非常に興味深い強気シグナルが揃い始めています。

しかし、だからこそ今は、「強気だからこそ、短期的には慎重になるべき局面」なのではないでしょうか。

ショート動画

ビットコインは新たな強気相場へ? でも今こそ慎重な理由
https://youtube.com/shorts/a4NJ4Em3Shk