今週の市場は、「インフレと金利への警戒が続く中、重要指標をきっかけに売り買いが交錯し、方向感を定められなかった一週間」だった。11日に発表された米CPIは、総合指数がおおむね市場予想と一致した一方、コア指数の前月比は予想を上回り、FRBの利上げ観測が強まった。ビットコインは発表直後に約76,700ドル(約1,190万円)まで下落した後、一時80,000ドル近辺(約1,220万円)へ急反発したが、その後は再び77,000ドル台(約1,190万円)へ押し戻された。
背景には、事前に織り込まれていた悪材料への警戒がいったん和らぎ、ショートの買い戻しが反発を増幅した可能性がある。ただし、現物需要の持続的な回復は確認できず、原油高や高金利への懸念も残った。重要指標の通過後も上昇への確信は広がらず、市場参加者は次週のFOMCと資金フローの変化を見極める姿勢を強めている。
今週の本質は、単純な価格下落ではなく、「中長期の買い手は残っている一方、短期の売り圧力がそれを上回った」ことにある。
米国の現物BTC ETFは3週連続で資金流入を維持しており、企業や長期投資家による買いも続いている。つまり、機関投資家がビットコイン市場から一斉に退出したわけではない。
一方、足元では現物需要が弱まり、取引所に移動するBTCが増えている。特にBinanceのBTC準備高は約2年ぶりの高水準まで増加しており、売却可能な供給が積み上がっている。また、デリバティブ市場では売りが強まる一方、建玉の整理は十分に進んでいない。これは、価格がさらに下落した場合に清算が連鎖しやすい構造でもある。
行動ファイナンスの観点では、投資家が「利益を取りに行く」よりも「損失を避ける」ことを優先し始めた局面と考えられる。先行きが読めないとき、人は期待収益よりも不確実性そのものを嫌う。今週はまさに、CPIや金利を前にポジションを軽くする行動が選ばれやすい環境だった。
市場心理は、8月後半の「乗り遅れたくない」というFOMOから、再び「まず様子を見たい」という警戒へ傾いた。
ただし、ここで注意したいのは、悲観が強まったからといって、それだけで底が近いとは言えないことだ。
現在はステーブルコインという待機資金も存在し、Coinbaseで買いが増えている兆候もある。その一方で、ETFの単日流出、現物需要の低下、取引所準備高の増加も同時に確認されている。つまり、「誰も買っていない市場」ではなく、買い手と売り手の確信度が大きく分かれている市場である。
こうした局面では「直近バイアス」にも注意したい。CPI発表直後に大きく上がれば強気になり、逆に急落すれば弱気になりやすい。しかし、一つの経済指標への初期反応だけで中期トレンドまで判断するのは早い。
重要なのは、その動きが数日後にも資金フローによって裏付けられているかである。
今週は、暗号資産固有の材料以上にマクロ環境が市場を支配した。
米PPIは前年比5.4%へ加速し、ECBも利上げを実施。原油価格は100ドルを超え、米10年国債利回りも5%近辺まで上昇した。株式市場にもリスク回避が広がっており、「原油高→インフレ→金利上昇」という経路が再び強く意識されている。
ここで確認しておきたいのは、BTCがまだ完全な安全資産ではないということだ。
ETFや長期保有者の買いがあっても、世界的に流動性が縮小すれば短期的には売られる。現在の投資家が最も恐れているのは、BTCそのものへの信頼低下というよりも、高金利が長期化し、新しい資金が市場へ入りにくくなることである。
今回のCPIが市場予想を上回ったか、下回ったかにかかわらず、その後の米金利とドル、そしてFRBの政策期待がどう変化するかまで確認する必要がある。
来週に向けて確認したい点は三つある。
第一に、CPI後の値動きが一時的な反応で終わらず、現物需要の改善を伴うか。
第二に、ETFへの資金流入が再び安定し、取引所へ移動しているBTCの供給を吸収できるか。
第三に、Open Interestが整理され、先物ではなく現物主導の市場へ戻れるかである。現状では、現物需要の弱さと高い売却可能供給が依然として最大の確認ポイントになっている。
今、期待しすぎるべきではないのは、「CPIが良かったから上昇相場」「CPIが悪かったから弱気相場」という単純な判断である。
一つの数字で投資家心理は大きく動く。しかし、相場の局面を決めるのは、その後に誰が買い、誰が売り、どの市場へ資金が流れるかである。
現在のビットコイン市場は、方向を決めた段階ではなく、マクロ環境の変化に対して買い手がどこまで耐えられるかを試している局面にある。
来週は価格そのもの以上に、CPI後に「買い手が戻るのか」、あるいは「警戒が続くのか」を見極める一週間となる。
※情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。 また、これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。
※本レポートに表示されている事項は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。
【次に読む】
» メタプラネット株、急落──CEOの希薄化説明も届かず
» メタプラネットCEOが自社株を大量取得、5年の売却禁止で
» メタプラネット社長、株主に綴った1万187字の「手紙」
