ビットコインは8月後半、約24%の急反発を見せ、一時8万1,400ドルまで上昇した。しかし、その勢いは8万ドル台で一服している。
CryptoQuantが9月3日に公表したWeekly Reportは、現在の市場を「Bullish Cooldown(強気相場の冷却局面)」と表現する。大きなトレンドが再び弱気へ転換したわけではない一方、短期的な需要や投資家のポジショニングには、上昇の持続性を慎重に見なければならないシグナルが増えている。
特に注目したいのは、今回の上昇を支えた「買いの中身」である。
8万2,000ドル付近が「本格的な強気相場」の分岐点
CryptoQuantによると、BTCは8月28日に8万1,400ドルまで上昇したものの、現在8万2,300ドル付近に位置する365日移動平均線を突破できず、その後7万6,000~8万1,000ドルのレンジへ移行した。
過去のサイクルでは、BTCが365日移動平均線を明確に上回ることが、本格的な強気相場入りを判断する一つの重要なシグナルとなってきた。
したがって、現在の市場では8万2,000~8万3,000ドル付近を明確に超えられるかが大きなポイントになる。一方、上値を拒否された場合には、200日移動平均線が位置する約6万9,000ドルが重要なサポートとして意識される。
ただし、価格だけを見れば強い相場に見えるものの、その内側では少し異なる動きが始まっている。
現物需要は急拡大から一転、再び縮小

まず確認したいのが、Bitcoinの「Apparent Demand(見かけの需要)」である。見かけの需要は8月21日に+4.3万BTCまで拡大し、2026年に入って最も速い需要増加を記録した。しかし、その後は急速に減速し、足元では再び需要が縮小する局面へ入っている。
つまり、価格は7万ドル台後半を維持しているものの、価格上昇を支えてきた現物の買い需要はピークアウトしつつある。
強気相場が継続するためには、「価格が上がったから買う」という追随的な需要だけではなく、価格上昇局面でも継続してBTCを吸収する現物買いが必要になる。今回のデータは、その力が一時的に弱まっている可能性を示している。
Coinbaseプレミアムも再びマイナスへ

もう一つ気になるのが、米国投資家の需要を測る代表的な指標であるCoinbase Premium Indexだ。Coinbaseプレミアムは一時プラス圏へ回復したものの、足元では再び-0.05まで低下した。
CryptoQuantは、2026年のBTC市場ではCoinbaseプレミアムがプラス圏からマイナス圏へ戻った後、価格上昇が失速するケースが複数回確認されていると指摘している。これは、「米国の現物投資家が積極的に価格を追いかけている状況ではない」ことを示唆する。
私は行動ファイナンスの観点から、この部分を特に重要視している。相場が本当に強いときには、価格上昇そのものが新たな買いを呼び、投資家の期待が自己強化的に拡大していく。しかし現在は、価格が急回復したにもかかわらず、米国市場の需要がそれに追随していない。
つまり、価格の上昇と投資家の確信度に少し乖離が生まれている可能性がある。
今回の急騰を作ったのは「新規ロング」ではなかった

今回の上昇を考えるうえで、最も興味深いのがデリバティブ市場だ。8月20~22日にBTCが急騰した局面では、新しいロングポジションが大量に積み上がったわけではない。
CryptoQuantのデータを見ると、上昇の中心となったのはショートポジションの清算とショートカバーだった。
つまり、
「BTCはもっと上がる」と考えた投資家が新たに買ったことで上昇した
というより、
「下落を予想していた投資家が耐えられなくなり、ポジションを買い戻したことで価格が押し上げられた」
という側面が大きかったことになる。
ショートスクイーズは非常に強い上昇を生み出す。しかし、ショートポジションには限りがある。
売り方の買い戻しが一巡した後、さらに価格を押し上げるためには、今度は新規の現物買いや新規ロングが必要になる。
足元では再びショートポジションが増え始める一方、新規ロングの増加は限定的だ。ここから上昇トレンドを再開できるかどうかは、買い手が戻ってくるかにかかっている。
利益確定は2026年最大規模
さらに、上昇局面では既存保有者による利益確定も急増した。CryptoQuantによれば、8月21日の実現純利益は2.3万BTCと2026年最大を記録。8月19日以降では累計約11万BTCの利益が実現された。
これは必ずしも弱気材料ではない。
上昇相場では長期保有者が利益を確定し、そのBTCを新しい投資家が吸収することで保有者の入れ替わりが起こる。問題は、その売りを吸収するだけの新しい需要が存在するかどうかである。
現在は、利益確定が増える一方、見かけの需要とCoinbaseプレミアムが同時に弱くなっている。この組み合わせには、短期的な注意が必要だ。
荒澤の視点──「価格」ではなく「誰が買っているか」を見る
一方で、中期的な市場構造まで弱気へ転換したわけではない。CryptoQuantのBull Score Indexは70を維持しており、強気圏にある。レポートでは現在を、新しい強気相場の初期段階にある可能性が高いと評価している。
だからこそ、現在の局面を「上昇相場の終了」と見るのは早い。
私自身は、
中期=強気を維持
短期=一度冷却する可能性
という見方が最もデータに整合的だと考えている。
重要なのはBTCが8万ドルなのか7万7,000ドルなのかではない。
これから確認すべきなのは、
「誰が次のBTCを買うのか」
である。
現物需要が再び拡大し、Coinbaseプレミアムがプラス圏へ回復し、デリバティブ市場でもショートカバーではなく新規ロングが増え始めれば、今回の上昇は次の段階へ進む可能性が高まる。
反対に、需要が弱いまま8万2,000~8万3,000ドルの壁を突破できなければ、いったん上昇を消化する調整局面が訪れても不思議ではない。現在のビットコインは、弱気相場へ戻ったのではない。強気相場へ進む途中で、一度市場が呼吸を整えている。その「冷却」が次の上昇への準備になるのか。それとも、より深い調整へつながるのか。次に見るべきものは価格そのものではなく、現物需要の回復である。
ショート動画
ビットコイン8万ドル回復の裏側──実は「買い」が弱い?
https://youtube.com/shorts/mrs4ALv1IgQ


